6-181 説得
「……揃ったな、では始めるぞ」
そうしてステイビルが声をかけて説明を始めようとした……だが、いまだに状況を理解しきれていないガレムが言葉を挟む。
「ちょ……ちょっと待ってくれ!?あんたたちは……な、何者なんだ!?」
「何者って……それどういう意味よ?」
ガレムの言葉に少し苛立ちながら、エレーナがこの場を代表してガレムに応じる。
「アンタたち……は、ここに来る前に聞いた。王選に参加した騎士団員と精霊使いだよな?その後から来た、こ……こいつらは一体何者なんだ!?」
ガレムはステイビル、サヤ、ハルナのことを順に指をさしていった。
「アンタ……人に指さすなんて失礼な奴だね?また暗闇の中に閉じ込められたいの!?」
「――っ!?」
サヤから告げられると、ガレムはサッと指を下ろしその手を後ろに隠した。
「ちょっと……サヤちゃんたらっ!ごめんなさい……私たちは旅の者で、訳あってステイビルさんのお手伝いをしているの」
「手伝い?手伝いの者が”竜”を従えているというのか!?」
ガレムはサヤとハルナの肩を借りて、水の大竜神モイスと土の大竜神のクランプがそれぞれの肩の上で休んでいた。
それだけではない……ガレムが味わったあの世に似た感覚も音もない真っ暗な空間の中に閉じ込められた能力は、この世に存在している人間が持つ力を超えていた。
「なんだい?アタシたちがステイビルに手を貸しちゃいけない事情でもあるの!?」
「い……いや、あ、ありません」
「ガレムよ……私たちに力を貸してはくれないだろうか?」
「力を貸す?……俺が?……何のために!?」
「我々は、いま”王国”という巨大な組織と戦っている。そのためには、戦う力が必要なのだ」
「ん?王国って言ったのか?戦うって言ったって……まさか王家を滅ぼそうとか考えてるんじゃないだろうな?」
「いや、そこまでは考えていない。ただ、我々の生存権を認めて欲しいだけなのだ」
そういってステイビルはガレムに亜人たちと人間が共存する町を創っているところだと説明した。
その話を聞いてガレムは驚いた、あの中の悪いドワーフとエルフが協力し合い共存をしているという事実に。
「で……でもよ、おかしいんじゃねーか。王国に属しながら、自分たちの存在を認めて欲しい。アンタがやろうとしていることは、そういうことなんだろ?だったら、そんなこと許されるはずがないだろ?この国の決まりがあるんだ……それを一人一人が勝手なことを言って自由にするのは、国自体の在り方がおかしなことにならないか!?」
「あ、アンタ……その口でよく言えたわね!?アンタも騎士団の中で勝手に行動してたじゃないの!?」
ステイビルに対しての無礼さと、自分の行動を顧みない内容の発言に対して、今まで黙っていたミカベリーはガレムに対して反論をする。
「よせ、ミカベリー……そうだ、確かにガレムの言う通りだ。しかし、こればかりは譲れない……あの者たちの約束もあるのでな」
そう語るステイビルのことを、ガレムは怪しむような目つきで睨みつける。
「どうした?私の言葉がそんなに気に食わなかったのか?」
「いや……そうじゃねぇ」
「だとしたら……なんだ?」
そう聞かれたガレムは、自分の中にある疑問を直球でぶつけていった。
「……アンタは一体何者なんだ?」




