6-180 見覚えのある者26
「はぁ……ハァ……くそっ!?……何者なんだ、アンタたちは!?」
自分の疲れとは対称的に、息切れ一つしていないステイビルの姿を見てガレムは悪態をつく。
攻撃を交わすより、仕掛ける方が体力を使うことは承知しているが、体力には自信があったガレムもこのやり取りにはほぼすべての体力を消耗しきっていた。
「どうした?もう終わりか?俺から木刀を奪えぬようでは、アルベルトから認められることなど到底無理な話しだ。」
「……くそがっ!?」
アルベルトとも違い、剣を合わせていない状況でも、自分との実力差があることを知らされる。
これは、きっと自分の力量不足を知らすために行っているのだとガレムは気付いた。
しかし、ここで諦めるわけには行かない。
今まで見たことのない剣技を持つ者たちが、目の前に二人もいる。
常に強さを求めてきたガレムは、この二つの高い山を乗り越えなければ自分の存在意義が無いとまで思っている。
その思いが、限界にきている脚に力を与える。
膝に手を付き、何とか立ち上がる……が、それだけだった。
――ドサっ
ガレムは力尽き、自分の身体を支えることもなく前のめりに床に倒れ込んだ。
ガレムは気が付くと、周囲を見渡す。
ここはアルベルトと剣を交え、変な女と男に敵うことができなかったあの場所だった。
違うこと言えば、うつ伏せに倒れたはずが仰向けで寝ており、身体の上にブランケットが掛けられていたことだった。
この部屋には既に人影はなく、窓から入る光も消え空はうっすらと赤く染まり陽が落ちるところだった。
――カチャ
扉が開くと、薄暗い部屋に廊下に灯された明かりが部屋の中に差し込んでその部分だけが明るくなる。
「起きました?平気ですか?」
「あぁ……何とか……な」
「なら、行きましょ?」
「行く?……どこへ行くというのだ?」
「みんな待ってるわよ、”これからのこと”を話し合うんですってよ」
ガレムはゆっくりと立ち上がり、ミカベリーの後を付いて歩いていく。
この建物とは別の場所に案内され、ここはエレーナが大臣としての執務を果たすための建物へと入っていく。
「……無事か?」
ミカベリーによって連れてこられたガレムは、何が起きているのか理解できなかった。
ステイビルから声を掛けられても、それに応えるわけではなく、ただ今の状況を整理することに必死だった。
元々ガレムはそういうことが苦手で、目の前の強者を倒すことだけにしか興味がなかった。
戦場においては、環境や相手の癖などを見抜く能力には長けていたが、集団の中での自分の役割やそれ以外の社会性を求められても、ずっと煩わしいと思い続けてここまできていた。
しかし、周囲はガレムが理解するまでは待つ時間などない。
「早く座んなよ、ほら!」
「お、おぅ……」
ミカベリーに背中を叩かれ、大きな丸いテーブルに用意された一つの椅子に座るよう勧められ、そのまま腰を下ろす。
すると目の前にメイヤが入れたお茶が用意された。
そこでガレムは、ひとつ違和感を感じた。
こんなに広い部屋の中に、給仕役はメイヤ一人しかいなかったことに。
「……揃ったな、では始めるぞ」
そうしてステイビルが声をかけて説明を始めた。




