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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第六章 【二つの世界】

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6-170 見覚えのある者16







――ギン!!



男が打ち付けた剣は、その見た目の威力とはかけ離れた軽い音でアルベルトの剣捌きによって流されていく。


誰も力の入り過ぎで失敗したのだと思っている中、男は叫び声とは裏腹に冷静に打ち込んだ必殺の一撃を流され驚いた。

その後も状況は変わらず、アルベルトは反撃することなく、ただ男の攻撃を避けている。

周囲の者たちはその男の攻撃の勢いがすさまじく強烈のため、アルベルトの防御がそんなに長く続くはずがないと予測していた。

だが、その考えも一部の者たちからは、疑問が浮かび始める。


それは、二人の攻防に現れ始めていた。

男はアルベルトに対して、何とかその剣を揺らがせて防御を崩して攻撃するという、いつものパターンで攻めていた。

それは男にとって出し惜しみではなく、剣を交える相手にとっての最低限の礼儀であると信じていた。

今までも力の差が歴然としていた相手にも、同じような方式をとっている。

手を抜いたりすれば、相手が鍛えたこれまでの時間を穢してしまうという思いがあったからだった。

そのうえで自分に敗れてしまったのであれば、その者に様々な問題があったのだろう。

一目見て自分に敵わないのであれば、逃げるなり降参すればよかった。

戦いに応じるのであれば、後は自分の力を全て出し切って相手を攻略するほかない。



ただ、男は今までに誰にも負けたことがなかっただけだった。

戦闘が好きであるということは自分でも認めているが、この地位に到達するまでにはかなりの努力を重ねてきた。

ある者は、自分の能力を”生まれながらのセンス”であると片付けていた。

それでも、自分にとってはそれだけでは収まらない。思考と訓練の時間を、費やしてきた結果であると思っていた。

だからこそ、どのような戦いにも手を抜かずにどんな相手にも挑んできた……命を懸けながら。




だが、目の前の男は今まで出会ってきた者とは違うモノを交える剣から感じている。

それは、自分の努力以上の何かを持っているという感覚だった。



(――くそっ!?)



男はそう思いながらもさらにアルベルトに剣を打ちつけるが、状況は全く変化しない。

体力はまだ残ってはいるが、アルベルトには自分以上に体力が残っていることは、その顔色と呼吸から伺えた。


そして、自分が不利だと思っているのだろうか?

周囲にいる味方の一部から、自分を応援をする声が上がり始めた。

この状況からすれば、その応援の声も男にとっては不快に感じる。

応援をされなければいけない程、この状況が男にとっては不利だということを感じている。

そのことが男の感情をより一層、不快にさせていった。





「なんだ……防戦だけか?それだけでこの俺に勝てると思っているのか?」




もちろん、攻め切れていない男がこの言葉をアルベルトに告げることは、恥ずかしいことであるとは認識している。

しかし、自分の攻撃の全てが通用しない今、この状況を変えるには攻防の立場を逆にするしかないと男は考えた上の行動だった。

それに対して、アルベルトが乗ってくれるかどうかは掛けの要素が強い。



だが……



「……いいだろう。その剣を構えろ」




アルベルトは男の声に応じ、自分から攻撃に転じる意思を示した。











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