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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第二章 【西の王国】

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2-63 コボルド討伐11



コボルトの長は、その場所に向かって走り出す。

その後を隣にいた一匹と、ここまで案内してくれたコボルトが後を追い掛けていった。


「私たちも向かいましょう!」


ルーシーがそう告げて、走り出そうとする。


「少し険しい道ですが、最短で向かいます。私についてきてください」


ソフィーネはそう言うと、ハルナたちを迎えに来た方向へ走り出した。

ハルナたちは、ソフィーネの後を追って走り出す。


「ソルベティさんたちは?」

「あの場所で待機していたメンバーは全員、上に向かっています。カルディ様が水の精霊なので消火できるとのことでした」


急な勾配をほぼ全速力で登っている。

息があがっているが、足は止まらない。

徐々に、黒煙のふもとに近付いていくのがわかる。

そこからは、木々が燃える音の中に混じって金属音がぶつかり合う音が聞こえる。


「アルベルト!」


エレーナがその姿を見つけ叫んだ。

アルベルトは、西の王国の兵と剣を打ち合っている。

アルベルトは、目の前の兵士の剣を弾く。

そのままヘルメットの側頭部に回し蹴りで、兵士の意識を奪った。


「エレーナ!無事だったか?」

「えぇ、大丈夫よ……それよりこれは一体どういうことなの?」


アルベルトから説明を受けるよりも、アーリスが一人の兵と剣を交えているのが視界に入ってきた。

その男の装備は、普通の兵よりも立派であることから隊長クラスの人物であることが伺える。


「アーリスさん!」


ルーシーも声を掛ける。

アーリスは一旦打ち合っている男から距離を置き、ハルナたちの姿を確認した。


「すみません、お伝えした日よりも早く西側の兵が行動を起こしてしまいました」

「いいのです!それより被害状況は?」


ルーシーはソルベティに対して、確認する。

が、ソルベティも兵士との打ち合いで、手が離せない……というより、押され気味だった。


――ガギッ!


ソルベティの剣が上に弾かれ、無防備となった腹部に蹴りが入る。

横に倒れたソルベティを、剣で突き刺そうとしたその時。

止めを刺すことに油断していた兵士の身体を、大きな岩の塊が吹き飛ばした。


「ソルベティさん!」

「ありがとうございます、クリエさん。助かりました」


クリエは、ソルベティの無事を確認して火の状況を確認しようとした。


「カルディさん!カルディさんはどこ!?」

「クリエ様、ここに」


カルディは消火活動をやめて、クリエの元に寄っていく。


「どうですか?火事は消せないの?」

「勢いが強すぎて……私の水の力だと火の進行を止めるのがやっとで」

「では、私といきましょう!案内してください!」


エレーナがカルディにお願いする。


「わかりました、こちらです!」

「私も援護に行きます」


アルベルトが、二人の護衛のためについて行く。



ハルナは辺りを見渡すと、兵士ではない人物が森の中で火を点けて回っているのが見えた。

その人物は手当たり次第に、火を放っていく。


(まずは、あの人たちを止めないと……!)


進み始めようとしたとき、ハルナは肩を掴まれた。


「あの者は私が止めてきますので、ハルナ様は燃えている木の枝を切って他に燃え移らない様にしてもらえますか?」

「わかりました!」


そう言うと、二人は森に向かって駆け出す。


ハルナは危険が少ない距離から、火の付いた枝を切り落としていく。

遠くでは、エレーナたちが水で消火しているのが見える。

エレーナはハルナが切り落としていくのを見て、ハルナに近寄ってきた。

どうやら水を上空から掛けているが、火の勢いが早く、追いついていないとのことだった。

そこで、大量の水で放水する役目はエレーナが行い、カルディはハルナが落としていった枝の消火で分担した。

その役割が功を奏し、火が広がる速度に追いついてきた。

そして、次第に火が広がる範囲が縮小ていき、カルディとエレーナで充分消火できるようになった。

ハルナは、アーリスのところへ戻ろうとしたが、ソフィーネが見事に放火していた雑兵三人をロープで縛りあげていた。


「はー……ソフィーネさんも、強いですね」

「あら、ハルナ様。問題ありませんね……この程度なら。それよりも、急いでらしたのでは?」

「あ!そうでした。アーリスさんの様子を見てきます!」


ハルナは、アーリスたちの元へ走っていった。


戻ってみると、状況は変化していた。

地面のあちらこちらに、真黒な焦げ跡がいくつも見えていた。

そして、今まで兵の隊長らしき人物を相手にしていたアーリスが端の方でソフィーネとルーシーと一緒に座り込んでいた。


「どうしたんですか!?大丈夫――」


そう言い終える前に、ルーシーはハルナの背後を指さす。

振り向くと、そこには二匹のコボルトが戦っていた。


「くそっ、なんだこいつら!?」


男は、コボルトの攻撃に戸惑う。

コボルトの動きは素早く、ハルナはなかなか追いついていけない。

そこに、長の火の攻撃が入ってくるため、余裕とはいかない様子だった。

しかし、先ほど出会ったコボルトたちと違い傷だらけの姿に、ハルナは援護しようとした。


「ハルナさん、ダメ!」

「ど……どうしてですか!?」


ソルベティはハルナを止める。


「先程から私たちも何度も手助けしようとしました。しかし、その度に、こちらを威嚇攻撃して手を出させないようにしてたのです」


そして、ルーシーは続けてハルナに伝える。


「コボルトは何かを伝えようとしていたのですが、フウカ様がいらっしゃらなかったため、言葉が通じませんでした。しかし、明らかに間に入ってくることを彼らは拒んでいます」


ハルナはその話を聞き、コボルトたちの戦いを振り向いて見守る。


「お前ら、いい加減にしろ!!」


隊長は、剣で素早く動いていたコボルトの防御の上から叩きつけた。


――ゴォ!


その大振りを狙って、長は隊長を炎の柱で包み込んだ。


「うわぁぁああぁ!!」


隊長は火が舞い上がる座標からずれて、炎から逃れた。


「あ!あれ……」


ハルナは気付く。


「そうなの……また、あの黒い炎が……」


ルーシーは残念そうに告げる。

隊長は、熱せられた鉄製の防具を脱ぎ捨てやけどを免れようとした。


『これで終わりだ……』


コボルトは隊長の背後に立ち、首に剣先を当てる。




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