6-158 見覚えのある者4
「ステイビル様……すぐにここよりお逃げくださいませ!」
「メイヤ。すまないが、それはできない」
「ど、どうしてでございますか!?この村の規模からすれば、王国の兵の数に比べれば些細な……」
「人間よ、我らはその兵を一度追い返したのですよ?」
メイヤがどうしてエレーナのいうことを聞いてくれないのかという思いから、元王子のステイビルにさえ大きな声で反論をしてしまった。
それを聞いたことに対する答えは、ステイビル本人の口からではなく新たにこの部屋に入ってきたエルフの女性から聞かされた。
「あ、あなたは……」
メイヤは、生まれて初めて見るエルフの姿に目を奪われる。
その雰囲気は森の管理者と噂される程の上品な気品を纏い、容姿も人間とは違う美しさも兼ね備えていた。
「私はこのグラキース山を拠点にしているエルフの長、ナルメルと申します。我々は、ステイビル様と共にあの国王と戦うことを誓っています。我々だけではなく、この山に住まうドワーフの方々も一緒にです」
メイヤはこの場所に来るまでに、様々なことを想像していた。
メイヤの聡明な頭脳は、度々エレーナやフリーマス家を守るために役立っていた。
この場所に到着するまでの日々、どうすればこの状況を変えることができるかあらゆる可能性を考慮し考えてきたつもりだった。
人間よりも能力の高い亜人たちと手を組んでいることは、メイヤの中にはなかった。
だが、それでも王国の兵士の圧倒的な数によって、この村が侵略されてしまうことの確率の方がいまだ高いと判断した。
「あんた……メイヤだっけ?」
「あ、はい……そうですが」
次にメイヤは人間の女性に声を掛けられ、そちらの方へ向いた。
名前を呼ばれたことに返事を返して、向こうからの出方を待っていたがなかなか言葉が返ってこない。
周りの者が何かを言ってくれるのではという期待もあったが、それも杞憂に終わった。
名前を呼ばれて返事をしたことに対し、それ以上の進展がないことに不満が募り、それが最高点に達したためサヤの失礼な態度に対して注意をしようとしたところ……
「アンタさぁ……本当にエレーナって人が、伝言を頼んだだけだと思ってるの?」
「え?」
「アンタ自分の考えには自信があるみたいだけどさ……」
「サヤ様……」
ステイビルはサヤの言葉を静かに遮り、サヤもその気遣いを汲みとり、それ以上のことは話さなかった。
メイヤは、そのやり取りが気になって
掛けられた毛布を剥ぎ取り、ベットの縁に脚を下ろしてステイビルの方へ身体を向けた。
そしてスカートを両手で握りしめ、自分に襲い掛かる不安をステイビルにぶつけた。
「ステイビル様!一体……何かあるのですか?エレーナ様は……エレーナ様は……!?」
メイヤの力強い瞳で見つめられたステイビルは”ふぅ”と息を吐き、自分が考えていたメイヤが送られてきた状況の推察を話して聞かせた。
「これは、私の……」
ステイビルは少しだけサヤに目線を送り、再びメイヤの元へ戻した。
「これは私の考えだが、エレーナはメイヤを”逃がすため”にここへ寄こしたのだと思う」




