6-153 剣と盾8
ここまでの状況を整理したうえで、ハルナたちは元の家屋の中に戻っていく。
剣と盾の存在……それに加えて”大いなる存在”という今までに聞いたこともない存在。
その存在が、この世界や自分たちの生活にどのようにかかわっているのか。
それは果たしてこの世界の生きるものたちにとって”味方”なのか、それとも脅威となる”敵”か。
ハルナとサヤ以外のそれぞれが、元いた席に座っていくと、その前にハーブティーのような薄い緑の甘い香りのするお茶がエルフの給仕たちによって並べられていく。
それを口にすると、甘い香りとは異なり少し酸味の聞いた飲み物で、ステイビルの気持ちは次第に落ち着きを取り戻していくのを感じる。
反対に言えば、それほど気持ちが高ぶり緊張していたのだろうと振り返る。
これはエルフの自慢の一品で、滅多に出回ることのない茶葉だと後で聞いた。
よほど衝撃的なことが立て続けに起こり、この場に戻ってきた時もステイビルは気付いていなかったが、周りの者から言わせれば相当”酷い”顔をしていたようだった。
それもそのはず、この村にいる者は亜人を含めて驚きの連続だった。
ここには伝説上の神々が集結し、いまもなおその存在をこの地に残っている。それも、二人の人間の女性を中心として……
給仕をしていたエルフやドワーフたちは初めはただ、自分たちの長から命令されたことにより、その指示に従っていた。
だが、今となっては自ら”このお方のお世話をしたい”という気持ちが生まれてきていた。
特にいつもツンケンとしているサヤが時たまかけてくれる”お礼のひとこと”が給仕たちにとってはご褒美だという。
そのことからか、ハルナよりもサヤの方がその気難しさと優しさのギャップからも亜人たちには人気があった。
ステイビルにも、その亜人たちの気持ちがよくわかる。ほんのわずかだが、ステイビルもサヤに対して不思議と興味が湧き心が惹かれていた。
短い間だが、人を引き付ける魅力が充分サヤにはあると感じた。
ステイビルは再度気持ちの落ち着く香りの立つお茶を口に含み、それらと自分の思考を味わうように目を閉じる。
そして、瞼の裏に浮かぶのはサヤのことだった……
「ステイビル様……」
「え?あ!?あぁ……どうした?」
ステイビルは給仕のエルフから声を掛けれられ、驚きを抑え隠しながら返事をした。
「え!?……とですね。ステイビル様が長い間目を閉じておられておりましたので、眠ってしまわれたのではないかと。ですので、もしお休みになられるのでありました、寝室のご用意ができておりますのでそちらにご案内しようかと……」
その言葉を聞き、ステイビルは驚いた。
(そんなに……目を閉じていたのか?)
「あぁ……大丈……いや、そうだな。少し休憩させてもらおう。休んでいる時に何か起きたのならすぐに起こしてくれ」
「かしこまりました……では、こちらへ」
そう言って給仕の背中を追いかけて、ステイビルは安らぐ香りがする枯草が置かれた寝室へと案内されていった。




