6-121 大いなる存在
「アタシはね、この世界は元いた世界とは別の世界じゃないかって思ってるんだ」
「そ……それって……」
「そうだよ。別な世界線に飛ばされたんじゃないかってこと」
ハルナはサヤが何を考えていたのかわからずに言葉を口にしたが、勘違いしてくれたのか怒られることなくその答えを聞くことができた。
「じゃあ、元いた世界は……また他に……別にあって帰れるってこと!?」
「まだ推測の域を超えないけど……そうなんじゃないかって思ってる」
サヤは、ハルナが嬉しそうに話す表情をみてホッとした。
まだ確証を得られていないため、ぬか喜びさせてしまう可能性があることはハルナに言っておいた。
ハルナもそれは了承していたが、サヤは詐欺に騙されるような独特の期待感だけしか見えていないように思えた。
「にしても、ラファエルが守ってた”大いなる存在”っていうヤツに聞いてみないと話は進まなそうだね」
「そう……ね。でもその人ってどんな人なんだろう?もしかして、私たちと”同じ世界”から来た人かも……そういう可能性も」
「うーん……もしかしたら。ある……のかもねぇ」
結局、本当の盾の存在を見付けなければ、その先にたどり着くことができないと二人の間で認識した。
そこから数日が経過し、セイラム家の者たちがエルフたちの保護によって無事にこの村の中にたどり着いた。
ルーシーは自分の両親の無事な姿を見て、救出作戦の指揮をしてくれたナルメルに感謝の言葉を告げる。
そして、遅れて入ってきたエルフが告げるには、ルーシーの家族を救出した後、その家には王国の警備兵たちが集まり住宅の中に無断で侵入していたと、ナルメルに命令をその後の状況を監視していたエルフが告げる。
そこは、ナルメルが心配していたことが当たってしまったようだ。
一足先に、セイラム家の身柄を抑えられた兵の隊長は、悔しそうに何度も壁に拳を打ち付けていたという。
同じタイミングで、ブロードがやってきた。
ステイビルに合うと同時に、ブロードは額を頭に擦り付けて自分の人を見る目の無さを詫びた。
だが、実際にはそうではない。
ここまで自分店を大きくしてきたのは、人を見る目が肥えているからこそであるとステイビルは告げた。
それ以上に”ソイ”という人物が、巧妙でできる者だったのだということも付け加えた。
ブロードはそのステイビルの気遣いに感謝をし、改めて自分が掲げる主君への忠誠を誓った。
セイラム一家は、この村に住んでいた元住人から一件、居住地に住まわせてもらうことになった。
当然元住んでいた住人は、他の場所に移っていくことになる。
ステイビルはこの地でルーシーの父親に、”この地で人の役に立つように”と言われ、助けられた命と与えられた生活の場所に感謝をした。
ルーシーも初めて父親が、自分の身分よりも低いものに頭を下げる姿を目にして驚いた。
その姿を見て、ルーシーは本気で嫌っていたこの世界も良い方向へと変わり始めている気がした。




