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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第二章 【西の王国】

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2-58 コボルド討伐6



アーリスは、ハルナたちのことを見直していた。

西の王国にも精霊使いはいるが、こんなに連携のとれた部隊は見たことがない。

あと興味を引いたのは、ソルベティの戦い方だった。

不安定ではあったが、剣と精霊の合わせ技に何か自分の将来の理想像を見た気がした。

ルーシーたちは、捕まえたコボルトに審問を行っていた。


「……ダメですね。言葉が全く通じないです」


警備兵が、告げる。


「そうなのね、どうしましょうか?……エレーナさん、この氷はいつかは溶けるのですか?」

「そうね、水の成分を少し緩めれば溶かすことはできるわよ?どうする、溶けるようにします?」


ルーシーは、自分の投げかけに対してのエレーナの返答に首を横に振る。


「ここで放してしまうようなことをすると、またどこかで襲い掛かってくることになりかねないわ」

「では、始末しますか?」


もう一人の警備兵が告げる。


「そうすると、これからの対話の目を摘むことになりかねないし」


ルーシーたちは悩んでいた。

何を選んでも、この先の話を進めることが難しくなることを。


(討伐隊として、すべて倒してしまう方が楽なのかもしれない……)


そう思い始めるが、誰も口にできないでいた。


「あ、そうだ。フーちゃん、この魔物たちが何を言っているかわかる?」


ひょっこりと姿を現したフウカに、全員の視線が集まる。


「……うーん、なんて言っているか聞き取りにくいなぁ」


フウカの目の前では、相変わらず束縛された身体を自由にしようとキーキー叫びながら、その身体をゆすっている。

その様子をみたフウカが、ゆっくりと息を吸い込む。


「もう!!アンタたち、うるさぁーーーーいっっっ!!!」


フウカは、コボルトたちに向かって叫んだ。


「――!!!!」


すると、その一声でコボルトたちは静かになる。

ルーシーやクリエたちは信じられないといった表情で、ハルナを見つめる。


「フーちゃんは、相手に少し知能があれば会話ができるみたいなんです……」

「そ……そんな……ことが……」


ルーシーは驚きながらも、いま目の前で見てしまったことは、否定できずに動揺する。

そのことを知っているエレーナとアルベルトは、平然と様子を見守る。


「……さすが、ハルナさんですね!やっぱり、何か違うと思ってたんです!」


クリエは、今の状況が飲み込めたようで、フウカとハルナを尊敬のまなざしで見つめている。


「話が通じることが分かった。どうすれば、こちらの言葉を伝えることが出来ますか?フウカ様に通訳してもらう形にしますか?」


カルディも状況を把握し、話を前に進めていく。


「フーちゃん、前みたいにみんなに聞こえるようにしてあげられる?」

「うん、いいよ!」


確認のため、ハルナはコボルトに話しかける。


「……あのぉ。聞こえます?」


その声にコボルトは、一瞬ビクッと身体をこわばらせた。


『オ、オマエタチハナニモノダ……』


応答した一匹のコボルトが告げる。

知能はあるが、低い場合はその言葉が聞き辛くなるのは、ギガスベアの時と同じだった。


「話はできるようね……あなた達が人間を襲う理由はなに?」


ルーシーが、会話できそうなコボルトに問う。


「人間ハ ワレワレヲ 殺ス。 ダカラ ワレワレモ 戦ウ、 ソレダケダ。」

「それは、こちらも同じこと。あなた達が人間を襲うから……」

『チガウ! ワレワレノ縄張リニ オマエタチガ 勝手ニ入ッテキタ! ソシテ オ前タチハ ワレワレノ仲間ヲ 奪ッテイッタ!』

『ソウダ! オ前タチガ ワレワレノ ナカマヲ 奪ッテイッタ!』

『ダカラ 憎イ! オ前タチガ 憎イ!』


コボルトたちは、次々にハルナたちに向かって恨みの言葉を吐いていく。


「――黙れ!」


そう叫んだのはソルベティだった。

その力強い声により、コボルトたちは再び沈黙する。


「私の父は、お前たちに殺された。だが、お前たちを恨んだりはしていなかった」


ソルベティはルーシーの背後から、コボルトたちの前に出る。

コボルトたちは、下からソルベティの姿を見上げる。


「この世では、争いが常に起きている。それは、我ら人間の同士でも同じことだ。強いものが弱きもの蹂躙することは、仕方がないことなのだ。弱ければ鍛えて力をつけて立ち向かうしかない……」


ソルベティは、地面に片膝を付いて目線を低くする。


「だが、もし話し合いが通じるならばそうしたいと考えている。……話し合える余地はあるのか?」

『ソレハ ソチラノ 勝手ナ考エ方デハナイノカ……ニンゲンヨ』


一匹のコボルトが、ソルベティの言葉に対して返した。


『ダガ 話シアッテモ ニンゲンガ 裏切ルトイウコトモアル。 全テノ人間ガ 約束ヲ守ッテクレルノカ?』

「それは、王国から全ての者に通達しそのように働きかけよう」


警備兵が応える。


『フン…… ドコマデ 信ジラレルカ ワカランガナ』

「今、西の王国では、この森を焼き払う計画が出ています。私はそれを防ぎたいのです!話し合いに応じてはもらえませんか!?」


アーリスが、必死な顔つきでコボルトの一匹に訴えかける。

本来なら、こんなことをする人間はいない。

大勢の人間は、弱い魔物は”排除”して自分たちの都合の良いように事を進めることを考えるからだ。

まさにいま、西の王国が行おうとしていることはそういう行いだった。


『ニンゲンメ……ドコマデモ 勝手ナコトヲ!』

「お願いです。それを阻止するためにも、ぜひあなたたちの長と話し合いをさせていただけませんか?」


クリエが、必死になって説得する。

コボルトがしばらくの間、目を閉じて考え事をしている。


『デハ……マズ コノ縛ッテイルモノヲ 外シテモラオウカ』


コボルトたちの武器は全て、解除させている。

その上、逃げようとしても先ほどのように、精霊の力でその道は塞ぐことが可能であろう。

そう判断した、エレーナは警備兵の顔を一度見て外すことを確認する。


――シュッ


蒸発するような音を立てて、コボルトたちを拘束していた氷が元素に戻っていく。




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