表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第二章 【西の王国】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

88/1278

2-57 コボルド討伐5



――グギャアアアア!


左から放たれた礫の逆の方向から、二匹のコボルトが草むらの影から飛び出してきた。

一匹は斧と盾を持ち、もう一匹は槍を構えて襲撃してきた。


「ハッ!」


後方を守っていたアルベルトが、ソルベティを狙う槍先の軌道を剣で弾いた。

警備兵がソルベティを助けるべく、コボルトに剣を振り下ろす。

しかし、コボルトはバックステップで剣の軌道から離れた。

ルーシーがもう一匹に向かって、火の玉を飛ばす。

コボルトは腕に付けた盾で、火の玉を防ぐ。

ソルベティは坂の上の高低差を利用し、コボルトの盾に向かって飛び蹴りを見舞った。

吹き飛ばされたコボルトは、丁度草むらの影から弓の弦を引くコボルトに命中し攻撃を免れた。


――ガサッ


一番最初の礫が飛んできた場所から、コボルトが茂みの中から立ち上がりスリングショットを引いて構えている。

狙いはルーシーに定められていた。

エレーナはコボルトの間に厚い水の壁を作った。

急に目の前の視界を遮られたコボルトは、驚いてスリングショットの引いた礫を放ってしまった。


バン!!


至近距離からの砲弾により、礫は水の壁を通過してしまった。

が、その勢いは水を通過したことで削がれており、ルーシーに届くことはなかった。

ホッとしたエレーナは気を取り直し、再び近いコボルトに向き直し溶けない氷の輪で足を縛った。

コボルトはバランスが保てなくなり、前のめりに倒れた。

じたばたするも、その氷を外すことは出来なかった。

その様子を見た他の三匹のコボルトは、危険を感じその場から逃げ出してしまった。


「……ふぅ、これで一安心かしらね?」


エレーナは額を腕でぬぐいながら、つぶやいた。

そして、第一部隊のメンバーは拘束したコボルトの元に集まる。


「何か聞き出せるといいんだが……」


警備兵が膝を付き、コボルトの様子を眺める。


「おい。お前たちの長はどこにいる?」


警備兵は、まだ何とか逃げ出そうともがいているコボルトに話しかけた。


『キー!キー!!』


こちらから話しかけた内容には応えず、ずっと同じ音の高さと強さで繰り返して叫んでいる。


「……話は、通じなさそうね」


ルーシーは、残念そうにつぶやく。


「おーい、大丈夫か!?戦闘のような音がしたが、何かあったのか?」


下からの第二部隊が、異変を感じて急いでやってきた。


「あー、大丈夫だ!コボルトも一匹捕まえた!」

「ふぅふぅ……エレーナ!大丈夫?」


ハルナも急ぎ足で来たため、息が切れていた。


「大丈夫、大丈夫。問題なしよ!」


そういって、ハルナの傍に駆け寄ろうとしたその時……


「――え!?」


ソフィーネが腰に付けていた短剣を一つ抜いて、エレーナめがけて投げた。

その動作の速さに、エレーナも誰も対応できなかった。

エレーナの視界が、急にスローモーションになる。

怖がることを感じる間もなく、ナイフはエレーナに近寄る。

そして、ナイフはエレーナの耳元をかすめて通り過ぎた。


『ギャァーーーーー!』


エレーナの背後にいたコボルトの胸元にナイフが突き刺さる。

それを合図に、四方向からコボルトの群れがハルナ達を襲ってくる。


「えい!!」


突然、四方を石の壁がハルナたちのいる場所を囲んだ。

その向こうからは、突然獲物と遮られたコボルトたちが壁に向かってハンマーや斧などの武器で叩きつける音が鳴り響く。


「こ……これが、鉄壁の美少女……」

「エレーナ様?”美少女”ではなく、”少女”です。少女というお年でもないんですけどね?」


カルディが、エレーナの言葉をふざけながら修正した。


「もう、カルディさんったら!その呼ばれ方、好きじゃないんですから!?」

「クリエさん、すごい!!一瞬にして、こんな壁を造れるなんて!」


ハルナは興奮して、クリエの手を掴みながら褒めたたえた。


「では、そろそろ反撃と参りましょうか?……準備はいいですか?」


アルベルトが、タイミングよく告げる。


「それでは、壁を消しますね。注意してくださいね!」


そういうとクリエは、アルベルトの合図で壁を消した。

ずっと壁に向かって抵抗していたコボルトたちは、その叩きつける対象がなくなり攻撃は空を切り、コボルトはバランスを崩した。

まずアルベルトは、目の前にいたコボルトが持っていた斧の持ち手を剣で切り落とす。

そのまま、剣の柄で腹部を殴打しコボルトの意識を奪う。

最初の作戦通り、攻撃するよりも対話を目的とした行動をとった。

相手はお構いなしに攻撃をしてくるが、こちらの技量を見せつけることと、ダメージの高い攻撃方法を奪えば話し合いに応じる可能性に賭けた。


戦闘は時間が経過し、中心にハルナがいてその周りを囲むようにコボルトが襲っている形になる。

これは、もし囲まれてしまった場合にはこの陣形で対応するように決めていた。

こちらから囲ってしまうと、相手に恐怖感を与えてしまい、対話に応じてもらえない可能性がある。

囲ませることにより、優位であると思いこませて、コボルトたちの戦闘力を奪っていくことにした。

相手は不利になると逃げだそうとするため、精霊使いの力で束縛するか逃げられない状況を作るようにしていく。

その作戦は、思い通りに進んでいく。

ハルナ達を囲んでいた十六匹のコボルトの近距離および中距離の戦闘能力はほぼ削がれた。

そうすると逃げ出そうとするコボルトも出てき始めた。

そこでルーシーやクリエはコボルトの退路をふさぎ、エレーナが束縛していくという役割でことが進んで行く。

こうして、一回目の戦闘は討伐隊の勝利となった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ