6-96 手品
「――あ!」
扉の向こうの景色が、つい先ほど見たソレとは異なっていることにハルナは思わず声を出してしまった。
「……よし、成功。いくよ?」
「ちょ……ちょっと待って!?」
ハルナの言葉も聞かずに、サヤは無警戒に部屋の中へと進んで行く。
仕方なく、ハルナとフランムもその後ろを付いて部屋に入っていった。
「ねぇ、サヤちゃん!」
「なによ?……何なの!?」
イラつきながらもサヤは、ハルナの問いかけに応えた。
「さっきのあれ……なに?手品か何かだったの?」
「手品……だって?あんた面白こと思いつくねぇ、手品って言葉なんか久々に聞いたわ」
手品とは種と仕掛けがあり、その仕掛けを使って本来ありえないものをありえたかのように見せるということ。
今までに来たことのない部屋に、そんな仕掛けがあるとサヤは知るはずもない。
だが、明らかに二度目の扉を開けた時には中の状況は別な空間に繋がっていた。
その考えにたどり着いたハルナは、ある能力を思い出す。
「あ!もしかしてこれも……サヤちゃんが創った空間なの?でも……っ!?」
自分の考えを続けようとするハルナを、サヤは急に後ろに振り向いてその言葉を止めた。
「よくその考えに到達したね、アンタもちゃんと考えることができるんだね……でもね、少し答えは違ったんだよね、これは元からあった空間だよ」
「元からあったの……ですか!?」
その事実に驚いたのは、ハルナでもなくフランムだった。
「え?……あぁそうだよ。アンタの驚くことも判るよ」
ハルナは、フランムが何に驚いているのかがわからなかった。
だが、サヤがそのことに気付いたようだったので、そのまま黙って状況を見守ることに決めた。
「”なんで元からあったのか”って言うことが気になってるんだろ?……あんたはさ」
「……その通りです。サヤ様」
答えを聞いてもピンとこないハルナは、この場に置いていかれないように”当然”のような顔つきを作り、二人のやり取りの続きを待った。
「ってことは、この能力を持つ者がモイスとアタシの他にいるってことだよ……ハルナ」
「え?……そ、そうよね?そういうことよね!!……あ」
「ったくなによ、知らなかったことを誤魔化してんじゃ……ないって……アンタどこ行くの!?」
ハルナはサヤの身体を避けて、さらに奥へと進んでいく。
ハルナが目にしたものは、一度見たことのあるも代物だった。
「あった……”盾”」
「え?……あ、ホントだ!!」
ハルナとサヤは、暗闇の中で壁と思われるものに掛けられている一枚の盾を見付けた。
その様相はハルナが知っているその姿よりも、古びており長年倉庫の中に仕舞われていたような感じだった。
「これが……サヤ様たちがお探し物の物なのですか?」
「そうなの、もしかしたら”この世界”にもあるんじゃないかって……」
ハルナは、その言葉と同時に盾に手を触れようとしたその時――
「それに触るでない……小汚い虫どもめが」
その声に振り向くと、そこにいたのは少し雰囲気の変わったキャスメルがいた。




