6-82 ルーシー・セイラム3
ルーシーの言葉の色に、変化が起きる。
それは、自分の契約精霊から伝わる驚愕の感情が伝わってきているためだった。
今までどんな危険な状態でも、フランムが落ち着いて冷静に対応してきた。
だからこそルーシーも、様々な場面において的確に対処することができた。
そうすることによって、現在の王となったキャスメルから信頼を得られることができ、自分自身も人生の最高目標である王宮精霊使い……しかもそれを取りまとめる長の地位まで上り詰めた。
いまのフランムとの繋がれた元素のつながりからは、怯えと恐怖の感情しか伝わってこない。
フランムと契約してから自分たちの努力により、自分の契約精霊がごくわずかな確率で起こる奇跡……”人型”まで進化することもできた。
それ程目の前にした”人間のように見える”者は、巨大な力を持っているのだとルーシーは判断した。
だが、今はその感情は脇にやり、この状況をどうすればいいかを考えなければならないと頭を働かせる。
まずは、この者たちに対しどういう態度で接するべきか。
威圧的な態度をとってしまえば、相手に不快感を与えてしまい攻撃される恐れも。
反対に従順する態度をとれば、これから先もずっとその”上下関係”が続いてしまうことになる可能性も高い。
(くそっ!?この者たちの正体さえわかれ……いや、この王国に来なければこのようなことには!!)
ルーシーはこの状況を歯がゆく感じるも、ここに来る前にアリルビートにでも一言告げておくべきだったと後悔の念がルーシーの頭の中で入交る。
「あ……あのぉ……大丈夫ですか?どこかお身体の具合が……」
その声でルーシーの意識は、思考の渦から引きずり出された。
皮肉にも、実際に頭を悩ませている対象の者からの声によって。
しかし、その声掛けによってルーシーの気持ちは少し落ち着いた。
相手の声は、本当に自分の身を気にかけてくれているのだった。
そこで自分の眉間に、震えるほどの力が入っているほどに気付く。
こんな苦悶の表情をしていれば、心ある者ならその身の心配をするのはごく普通の判断なのだろう。
ルーシーは用意していた炎の矢を収めて、もう一度目の前の者たちに声を掛けようとした。
「あなたは……一体……」
一番気になることを聞こうとしたルーシーの心臓は、口から飛び出しそうなほど強く拍動している。
自分の問い掛けによって、その先の運命が決められることと、フランムからの緊張感が伝わってくるためだった。
しかし、このままでは何も変わらず状況は進んでいかない。
ルーシーは自分のことを見るハルナの目を見て、これからどちらの態度で進めていくかを決めた。
「……あなたは一体何者なのですか?……我々の味方?それとも敵?」
「え、いや!?わ、私たちは別にそこまで怪しい……」
何とか弁解をし、ルーシーの警戒を解こうとするハルナ。
その行動を制し、サヤが代わりにルーシーから投げかけられた質問に答えた。
「フン、それが決まるのはあんたたちの態度次第……と言いたいところだけどね。でも悪いけどさ、今回のアタシたちはあんたの”敵”だよ」




