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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第二章 【西の王国】

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2-54 コボルド討伐2



警備隊は簡易テントを張って、手際よく拠点を造っていく。

アルベルト、アリルビートとシュクルスの男たちも協力し、素早くテントを組み立ていった。

すぐに必要になる火と水を精霊使いたちが用意する。

オリーブとクリエは、土の力で即席のテーブルを用意した。

今回ハルナは、ただその様子を見ているだけだった。

下手に素人が手を出すと、危険でかえって邪魔になる。

暇を持て余していたハルナはその間、山の入り口に向かった。

入り口付近に何か看板が立っている。

だが、ハルナはこの世界の文字がまだ直ぐには読めなかった。


「……こ……こか……ら……」


とその時、上方から何か硬いものが激しくぶつかる音が聞こえる。


「な、何!?」


ハルナは、身構える。

フウカも姿を見せて、ハルナの後ろで構える。


――ガン!ギン!


音が徐々に大きく聞こえる。

何度か衝突音が聞こえた後に、駆ける音が交互にする。

どうやら、何かから逃げているようにも聞こえる。

そして、その音の正体は突然に姿を現した。

山道特有のジグザグな道の曲がり角からではなく、ショートカットで降りてきた。

その姿は途中で引っ掛けた草や蔦などが纏わり付いており、装備の間には枝などで引っ掛けたのか線状の傷がいくつも付いている。


「――キシャー!!」


遅れて数体のコボルトがその人物を追いかけて、姿を見せる。

どうやらその人物を襲っている。

前の二匹が鎌とボロボロになったショートソードで、襲いかかる。

その人物は、手にしたミドルソードでその攻撃を薙ぎ払う。

下まで降りてきた疲れが出てきたのか、足がもつれて体勢を崩した。

その様子を見ていた奥のコボルトが、手にしたスリングで人物の頭を狙って最大限に引き絞っていた。


「危ない!!」


ハルナが風を起こすと同時に、その石は放たれた。

だが、人物とコボルトの間に起こした上向きの風の壁によって、石は弾き飛ばされる。


「ふぅ……間に合っ……!?」


次の瞬間、横の茂みからコボルトが斧をもってハルナに向かって襲い掛かる。


――ドン!!


フウカはハルナの背中から、重い空気の塊を打ちコボルトを弾き飛ばす。

しかしさらに、二匹のコボルトがターゲットをハルナに変えて襲い掛かる。

ハルナの目の前に向かってきたその時。

黒いメイド服が飛び蹴りで、二匹を別々に蹴り飛ばした。


「油断してはいけませんよ、ハルナ様」

「ソフィーネさん!!」


コボルトは、弾き飛ばされはしたが命に別状はなかった。

蹴り飛ばされた勢いで、脳震盪を起こしたようにフラフラとした足取りではあったが、コボルトは茂みの中に逃げていった。


「有難うございます、助かりました……」

「少し姿が見えなくなったので、お探しに来たのですが……これはどういう状況でしょうか?」


ソフィーネは、辺りを見回した。

逃げてきた人物は、助かったと思い地面に伏せて気を失っていた。

その様子を見たソフィーネは、ここにいてはコボルトがまた来る可能性もあるためこの場を離れることを提案した。


「とにかく、ひとまず皆さんのところへ戻りましょう。その方はわたくしが連れてまいります。そこで今の状況を皆さんにご説明していただけますか?」


ハルナは承諾し、地面に付けていた腰をゆっくりと上げてお尻に付いた砂を払う。

そして、人を肩に担いだ状態のソフィーネの後を追っていく。






「ど……どうしたの!?」


エレーナは様子の違うハルナを見て、思わず叫んだ。


「えへへへ、ちょっとね!」


軽く流すハルナを見て、エレーナは呆れる。


「とにかく、その人をこちらへ」


その様子を見ていたアルベルトが、負傷者が横になれるテントへ案内する。

よく見ると、その人物は女性だった。

一人で行動していたようで、よくあのルートを通ってきたのだと感心する。

言い方を変えれば、”無謀”とも呼べる行為だ。

だが今は、こうして生きていることが何よりだった。

異変に気付いて、ドイルがやってきた。


「な、何事です? どうされましたか!?」


ドイルは何も気にすることなくテントの入り口のカーテンを無造作に開いて入ってくる。


「――ゴフゥッ!」


ドイルはソフィーネの手加減のないバックキックを喰らい、テントの外に弾き飛ばされた。

ソフィーネは連れてきた人物の装備を外すと、薄着の下に女性特有のふくらみを胸部に確認した。

その途中でドイルは入室してきたため、ソフィーネは意識のない人物の尊厳を守るためにドイルを外に送り出した。


「な!何をするんですか!?」


ドイルは揺れた意識が正常に戻るが、足元はおぼついていない。

しかし、鍛えられた肉体がドイルの意識をかろうじて繋ぎ止めていた。


「あら、ごめんなさいね。身体が勝手に動いてしまったのね」


悪びれた様子もなくソフィーネはドイルに詫びた。

それ以上にソフィーネの意識は、体力が衰えているこの女性に向かっていた。


「……おや?この者の装備の印は。これは、西の王国のものですね」


ドイルは、ソフィーネに告げた。

この者はどうやら西の王国から、このディヴァイド山脈を越えてきたようだ。

最終的には一人であの山脈を下ってきており、その実力はある程度のものだと推測できる。

詳細は、この女性の意識が戻ってから聞くことになった。

これにより、討伐の入山も遅れた。

それが良かったことか悪かったことか分からないが、これがハルナ達のこの先に変化が生じることになった。




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