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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第六章 【二つの世界】

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6-46 合図







グラキース山の入り口から少し離れた森の中、エルフの魔法により造られた茂みの中にステイビルたちはいた。






「いよいよですな……ステイビル様」



「うまくいくだろうか……ドイル隊長」





町に鳴り響く鐘の音によって、緊張という名の重苦しい空気によって支配される。






「心配されることはございません……ですが、万が一のためエルフたちも協力していただけると約束してくれたではありませんか」



「そうだな……」






そう言いつつステイビルは、ここまで付き添ってくれた二人の女性がエルフとドワーフの長老たちと会話をする姿を遠くから見つめている。

彼女たちとの出会いがなければ、この命は何も変えることができずに無駄に終わらせていた可能性が高く……いや、きっと無駄に散らせていたことになっていた。

それはドワーフに捕らえられていた時に、自分へ向けられた感情は自分だけの命ではドワーフたちの怒りを鎮める代償にもならないと感じた。

その状態から、ステイビルの希望に沿うように交渉してくれたのがあの二人だった。






(そうだな……まずは、何としてもこの作戦は……成功させなければ……でなければ、その先はない)



「ではわたくしは、そろそろ本部にもどります……ステイビル様、必ず成功しますよ」



「あぁ、ドイル隊長の作戦だ。必ず成功するだろう」



「いいえ、私は案を出しただけで……この作成のおおよそはあの方たちのお力によるものです……では、わたくしはこれで」





ステイビルの手助けをしてくれるドイルという隊長と会ったのはほぼ一週間前。

ハルナが隊長に名前を聞いたところ、その者はドイルと告げた。

しかし、ハルナが知るドイルとは外見が全く異なっており、”この世界”では同じ人物の生き方が違うだけでなく、そういうこともあるのだとハルナは理解する。


その後、ドワーフの町にてドイルも交え、数回の打ち合わせが行われ、いよいよ作戦を実行に移す時がやってきた……



この日の午前は、ドイルの部隊が警備の番だった。

王国の警備兵は、この町に五つの部隊が常駐している。

夜勤明けの隊を除き、常に三つの部隊はいかなる時でも戦闘が起きた際には、すぐに参戦できるように後方で待機している。


グラキース山への入り口付近、土の精霊使いが並べた岩の壁が並ぶ。

その横には見張り台があり、危険を知らせる鐘がついている。

その壁の外に、二人の警備兵が長い盾と槍を立てて構えたまま山に続く道の先を警戒する。

二人はかすかに顔を動かして視線を交わすと、その一人が立てた槍を二度程左右に回転させた。

すると回された矛先が、太陽の光によってキラキラと反射する。




――ヒュッ!……トス



山の木々の間から一本の矢が放たれ、放物線を描き警備兵に危険のない手前の地面に突き刺さった。


これが作戦開始の合図だった。


二人は再び顔を合わせ、今度はお互いで頷き合った。

一人が見張り台の上にいる警備兵に合図を送ると、手にした木槌で決められたリズムで鐘を打ち付ける。




”カンカンカーン!カンカンカーン!カンカンカーン!”



三回のうち最後の一つを長く、しかも間髪入れずに連続で叩き続けるその合図は”敵襲”を意味していた。




「始まったか!」





ステイビルは、少し離れた場所から聞こえる鐘の音を耳にして、身体を椅子から起こした。









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