6-40 招待
「ステイビル様……どうぞ、こちらへ」
「……?う、うむ。わかった」
ステイビルは戸惑いながらも、開けられた鉄格子の扉をくぐり外へ身を出した。
戸惑う理由は、自分への扱いの変化だった。
ハルナたちがこの場所から離れ、おおよそ一時間程度の時間が経っていた。
その間にこの牢獄の警備のドワーフが後退していたが、それだけが理由ではないだろうとステイビルは考える。
決して鉄格子の内側にいても酷い扱いを受けていたかと言えばそうでもないが、それよりも態度も言葉も丁寧な扱いであることにステイビルは疑問を抱いた。
「では、参りましょう。足元をお気を付けください……」
ステイビルは、背丈の低い男のドワーフの後をついて歩いていく。
ドワーフの腰に下げられたランタンの明かりがステイビルの足元を照らす。
ステイビルはハルナたちと同じく高い崖まで昇り、立派な建物の中に導かれた。
失敗に終わったが、旅の途中でドワーフと会談を持ち掛けた時は町の外で話し合いを進めていたため、この中に入るのは初めてのことだった。
ステイビルは、小さいが一つの部屋に入るように指示された。
そして、そこに付いているシャワー室で身を清めるように言われそれに従った。
身支度が整ったころ、――ドワーフのものではあるが――清潔な服に袖を通し着替え終わると、給仕のドワーフがステイビルを呼びに来た。
ステイビルは短めな衣装を必死に伸ばして、腹部を隠しながら給仕の後をついていった。
大きな両開きの扉を前にすると、左右に立つ他の給仕が客人の姿を確認して開いていく。
――ギィィィ
「……こ、これは!?」
「よぉ!」
驚くステイビルを見て、その中から気軽に声をかける者がいる。サヤは片手を挙げて、ステイビルに自分たちの元へ来るように合図をする。
それと同時に、ここまで案内をしてくれていた給仕がステイビルに声をかけて席まで案内をした。
目の前を見ると、ドワーフの三姉妹と会談であったエルフのナルメルやその付き添いの者もいる。
それよりも、目の前に並んだ食事の皿の数々は、まるで宴のような料理ばかりが並んでいた。
驚くステイビルに対して、イナが声をかける。
「せっかく用意した料理が覚めてしまいます、もったいないので口にしませんか?……詳しいことは後にして」
その言葉に納得したステイビルは自身の欲を抑え込み、今の立場とイナのいった勿体ないという言葉に同意し、まずは食事に手を付けることにした。
これほど豪華な食事を口にしても然程驚かないサヤとハルナを横目にしながら、ステイビルは少しずつ料理を口に運んでいった。
ある程度の時間が経過しそれぞれの食欲も満たされたころ、ステイビルは隣に座っているハルナに声をかけた。
「そろそろ、何があったのか教えていただけませんか?」
その声に周りの音が一斉に止まり、ハルナの答えを静かに待つ。
そしてハルナは、これまでの状況を簡単に説明した。
「……というわけで、グラキース山をドワーフさんとエルフさんたちに渡してあげるように協力するために手を結んではどうかと」




