6-32 解決の糸口
しばらくすると、デイムは再び鉄格子の向こうに現れた。
デイムの後ろには、ハルナの見覚えのある三姉妹のドワーフの姿があった。
「立て!……長老がお前たちに話しがあるという。失礼のないようにしろ……さ、どうぞ」
その声に従い、ハルナたちは冷たい石でできた椅子から立ち上がり、鉄格子越しに三人のドワーフの前に立つ。
「ステイビル……よく、この場所に来ることができましたね。自分の立場がよく分かっていらっしゃらないのかしら?」
ステイビルの姿を見付け、そう告げたのはドワーフの三姉妹のうちのニナだった。
ニナのその次に言葉の後を引き継いだのは、森の中で遭遇したイナだった。
「ですが、逃げもせずにこの場所に来たことは褒めてあげましょう……話し合いがしたいとのことでしたが、私たちを騙したあなたと何を話すのですか?」
「……私はあの時のことを一時も忘れたことはない。あなた方にしてしまったことの行為を……そのことについて話したくてここに来たのです」
「さ……サナさん!?」
ハルナは、今まで見たことのない冷たい目を向けるサナの名を呼んだ。
「?……あなたはなぜ……私のことを!?」
「サナ!……この者たちに不用意に話してはいけません!!我々の名など、この男が知っています。ただ、それを伝えているだけでしょう」
「そ、そうですね……。ではステイビル、アナタにお聞きします。あなたがここへ来た目的は?」
「ここへ来たのは……あの時、我々が犯した罪を償いうため、この命を差し出すつもりだった」
「”だった”?それはどういうことでしょうか?……まさか、この場に来て自信の命が惜しくなったのかしら?それとも、死んでしまうのが怖くなったの?」
「いや、この命など惜しくはない。だが、あの時の責任は全て私にある……今は一国民となった私の命が断たれることによって、すべてが解決するのならば喜んで差し出すことをしただろう」
イナたちは、その言葉の意味が分かっていた。
きっとステイビルが自害したとしても、あの時自らの命を救ってくれたジュンテイが生き返ることはない。
仮に人間たちを全滅させたとしても、同じことになる。
それは人間の恨みを買い、更なる争いに発展することも十分に考えられる。
いまはエルフと共闘しているが、そのことをよく思わない者も多い。
勿論ドワーフ側だけでなく、エルフ側としてもそういう気持ちを持つ者が少なくないと聞いていた。
だが……何かの決着をつけなければ、自分たちの親代わりの存在だったジュンテイを殺された恨みを晴らすことはできないとも感じていた。
「ぐ……ならば、アナタはどのようにしてこの状況を収束させるというのですか?」
イナは個人の感情を抑え、長老の役割としてステイビルに問い質した。
他の二人も同じ気持ちだったのだろう、その言葉の後ステイビルの返答を睨むようにして待った。
「私は……もう一度、全ての問題を解決するために……話し合いを行いたいと……思っている」




