6-23 襲撃
「何!?いったい何が起きてるの!?」
ハルナは、物騒な音が聞こえた場所まで駆けていこうとする。
だが、その行動を首の後ろのフードを引っ張られて止められた。
「――ちょっと待ちなって!!」
「ぐえっ!?……ちょっと、サヤちゃん何すんのよ!!」
「またアンタは、そうやって突っ走る!!状況を確認するのが先だろ!?」
「でも、ステイビルさんとソイさんが危険な目に!?」
「だからこそ、落ち着かなきゃいけないんだよ!!……アンタの知ってるステイビルって、盗賊に襲われたくらいでやられるようなヤツだったのか!?」
「いや……そんなことない……でも!今はまだ病み上がりで、身体も本調子じゃないから……でも、そんな状態でも弱くは……ないかな?」
サヤは今まで掴んでいたフードを離し、自由になったハルナは引っ張られて乱れた衣服をきれいに整えた。
「やっと落ち着いてきたようだね……ほんと面倒くさいね。で、もしステイビルが負けるような奴だとしたら、そいつらは間違いなく”プロ”の集団だよ。だからこそ、迂闊に駆けつけても意味がないっていってんの!?」
ハルナはサヤの意見に納得をし、とりあえず尊敬するのは後にした。
「へー……それで、これからどうすればいいの!?」
「そうだね……とにかく隠れて様子を見よう、もちろん気付かれない様にね。いざとなったら、アタシの力で隠れるからそこからさ。もしそれがバレたとなれば、相手も相当な力の持ち主だよ……それで相手の力を測定したら、手を出すか見守るか決める。その役目はアンタだよ……それは判るよね?」
「う……うん。ごめん、なんで?」
ハルナの答えにサヤは頭に血が上るが、今はそれどころではないと一つため息をついて感情を落ち着かせる。
「はぁ……あのね。アンタ精霊使いで、風の力があるだろ?他の三つは形に出るけど、風や空気なんかは”普通”のヤツには防ぎようがないんだよ、見えないんだから!」
「あ、そうか!!」
ハルナの緊張感のない返事が、さらにサヤの機嫌を悪化させた。
「……わかって……もらえたようで……嬉しいよ……さ、気を付けながら行こうか?」
そう告げるサヤの声は抑揚のない、一辺倒な低い音階の声だった。
――キン!ガン!
「くそ、こいつ強いぞ!気を付けろ!」
「おい、一人ずつじゃなく複数で同時に襲い掛かれ!!」
「「おう!!」」
「お前たちのような連携の取れていない攻撃が、いくら来ようが何の脅威にもならん」
「……病み上がりですが、だいじょうぶなので……ヒっ!?」
ステイビルは馬車との間にソイを隠し、応戦していた。
その横から、隙間のソイを狙って一本の矢が放たれる。
だが、ステイビルは何の問題もなく素早い反応で矢を切って落とした。
「ソイ、馬車の下に身を隠せるか?」
「はい!大丈夫です!」
そう言って、ソイは地面に伏せてそのまま馬車の下に身を隠した。
「さて、お前たちのボスは誰だ……こんなところで怪我をしたくもあるまい。今回は相手が悪かったと引き上げるんだ」
「へへへっ……そういうわけにはいかないんだな、”ステイビル様”よぉ!?」
この集団をまとめるボスと思われる男は、襲撃するターゲットがステイビルだと認識していた。




