6-10 別れ
「お前たち……ここで何をしている?」
「エ……エストリオ様」
オリーブの口から漏れた名を聞き、ハルナは思わずサヤとの約束を破って、振り返りそうになった。
ハルナの背後にいる人影は、エレーナの父親のエストリオと同じ名だったから。
「これは、ステイビル王子……いや、ステイビル様。お身体の調子が一段と悪いようですが……」
「……き……気にするな……エストリオ隊長。それよりも……こんな路地裏に……一体……何の用事だ?」
ステイビルの視線はハルナの背中側に向けられており、その表情はは弱々しくも相手の存在を意志が込められた視線で射抜いていた。
エストリオはその視線を受け止めているが、その後ろにいる数人はその視線に一瞬怖気付いてしまっていた。
「業務です。一つは人探しと、もう一つは通報がありましてね……オリーブよ」
エストリオに呼びかけられたオリーブは、返事もせずに厳しい視線で返す。
「お前は明日より、王宮にて警備兵の精霊使い部隊の一員として任命された。よかったな……お前の家族にも伝えたら、喜んでおられたぞ」
「家族……私は、あの家を出ました。ここまで育てていただいたことには感謝しております……ですが、もう私はあの家とは関係がございません」
「む?何か勘違いをしているな?……この決定は、貴族であるお前の父親の要望を聞いたものではない。王宮としての命令だ」
「王宮?……ならばこの命令は!?」
「そう、キャスメル王の命令によるものだ。これで理解したな?さぁ、私たちに付いてきてもらおう」
「イヤです!!私はいきません!!ご覧ください……ステイビル様はいま、このようなお身体です。置いていけるなど、できる筈がありません!!」
拒否をするオリーブの言葉に対し、エストリオは何かを言いかけたがステイビルが力を振り絞って言葉にしようとしているので止めた。
「……け。……行くのだ……オリーブ……おま……えは……」
「……え?」
オリーブは、かすかに聞こえたその言葉に耳を疑った。
言葉が耳から感情に届いたと同時に、オリーブの目からは涙が零れた。
「聞こえなかったか?……ならば……もう一度言う、お前の役目は終わりだ。これ以上私の邪魔をするな、行け……と言ったんだ」
「ステイビル……さ……」
オリーブの声は、信じられない気持ちと溢れる悲しみの感情で震えている。
そのタイミングで、エストリオは後ろの者たちに合図を出してオリーブを両側から囲んで逃げられないようにした。
「ステイビル様も悪い人ですね……”無理やり引き連れた”のに、用が済んだらあっちに行けという……」
エストリオの言葉に、ステイビルは何も返さない。
それが答えだと判断したエステリオは、部下の者にオリーブをステイビルから引き離すように命令した。
力なく引っ張られていくオリーブの視線は、ずっとステイビルのことを捉えていた。
だが、ステイビルは目をつぶったままその視線を合わせることはしなかった。
ハルナは、何とかしようと行動を起こそうとしたが、サヤに裾を握られ止められた。
そして、エストリオは次の要件を告げる。
「そしてある店から通報がありましてね……なんでも見たことのない者たちがおうきゅ関係者しか使えない”王宮金貨”を使って買い物をしていたのだと」
エストリオは、ハルナとサヤの姿を交互に見た。




