5-154 応戦
「あんたも少しは戦えるんでしょ?ヴェスティーユは任せたよ。アタシはオスロガルムをやるからね?」
『そろそろ、息が切れますぞ……ご注意ください!』
モイスがブレスを吐きながら、思念でそう伝えてくる。
サヤがモイスから奪った能力で作った、この空間だからこそできることだった。
「……さすが、トカゲ。この空間の使い方に慣れてるねぇ。そういう使い方もできるんだ……勉強になるよ」
『今はそのようなことを言っておる場合ではなかろう。くるぞ!!』
その言葉と同時に、白い息が瘴気の圧によって吹き飛ばされ、それと同時に創られていた氷の壁も破壊されその破片が反対にこちらに向かって襲い掛かる。
「はい、あたしに任せてー!」
気楽な声で飛び出したフウカが、氷の破片をハルナたちに被弾する前に元素へと還していった。
そんなフウカをハルナは褒めてあげたかったのだが、身近な二人をオスロガルムに捕られたサヤのことを考えると、フウカに悪いと思いながらもその気持ちをぐっとこらえた。
だが、その行為がサヤをさらにイラつかせた。
「ったく……変な気を遣わなくていいんだよ!!あんたはこんだけ経ってもその性格は変わってないのかい!!」
「ご……ごめんね?」
何がそこまでサヤをイラつかせてしまったのか、ハルナは判らなかったがとりあえず謝った。
またその行為がサヤをイラつかせてしまったのだった。
『……よし。準備は済んだのか?それではそろそろ決着を付けるとするか!』
それまで黙って様子を見守っていたオスロガルムだが、二人の時間に付き合うのも飽きたと派内を割り込んだ。
「ちょ……ちょっと待って!?」
「何なんだい……あんたは一体!」
「オスロガルム……あなたはヴァスヴァスティーユに乗り移ったみたいだけど、その姿のままで私たちを相手にするの?」
その問いかけに対し、答えたのはオスロガルムではなくサヤだった。
「そいつの身体はもう、あの爆発で消えてなくなったのさ。それくらいの威力だったのは、アンタも見てきてわかるだろ?元々そいつは、アタシの身体の一部を分けてあげてたんだ。だから、爆発の後の依り代として、アタシの瘴気に馴染んできたヴァスティーユが一番しっくり来たんだろ?ヴェスティーユは、ハルナのところのラファエルが一度壊したからね、だからヴェスティーユはそいつもそんなに操れないんだよ」
黙るオスロガルムによって、サヤの推測が正しいことを証明していた。
『クフフフ……だから、何だというのだ?どうしたというのだ?お前たちがここで消えることは、何一つ変わらないのだ!!!』
「お前たち……私も入ってるわけ……か。当たり前よね」
『ハルナ様、気を引き締めてください。そろそろ本気で始まりますぞ』
サヤは、自分が言おうとしていた内容をモイスが代わりに言ってくれたおかげで、言葉を発するための息が無駄に終わっていた。
「……そういうこと。いくわよ!!」
こうしてサヤとハルナとモイス、オスロガルムが乗り移ったヴァスティーユとヴェスティーユの戦いが始まった。




