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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第二章 【西の王国】

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2-43 パレードを終えて



「ハルナ様、今日はどちらにおでかけですか?」

「ハルナ様、食事の用意が出来てございますのでいつでもお申し付けください!」


お披露目パレードが終わってから、従者からハルナ達の待遇が少し変化が見られ始めていた。

どうやら、人気投票が火付け役となって施設内の貴族の間でもハルナ達を応援する流れが自然と生まれてきたようだ。

感覚的には、自分の好きなアイドルを応援している感じなのだろう。

ハルナの場合は、マーホンがファンクラブ会長を務めてくれているので、加熱し過ぎない程度の応援でハルナも安心して応援を受け入れている。


中庭では、アルベルトとソルベティの弟シュクルスが模擬戦を行っていた。

道具は全て木製で、ラウンドシールドとミドルソードを付けての模擬戦を行った。

何度も打ち込むシュクルスに、アルベルトは冷静に剣だけで弾いていく。

しかも、最小限の動きで切り込み角度に対しても最も効果的に弾いていく。

シュクルスは弾き返されるたびに、身体が流れそうになるのを必死に堪える。

でなければ、アルベルトから一撃を喰らうことがわかっていた。

だが、次第に身体が流れ始めるのがわかる。


(――マズい!?)


そう思った瞬間、シュクルスの身体に強い衝撃が走り身体は吹き飛ばされていた。

どうやら、盾で身体を突き飛ばされたようだった。


「……立てますか?」


アルベルトが、シュクルスに対して話しかけた。


「大丈夫です……何とか……立てます」


その隣で見ていた、ソルベティもアルベルトの強さは舌を巻くばかりだ。


「次は、私もお願いしてよろしいでしょうか?」


そういって、ソルベティはシュクルスの道具を受け取るが、ラウンドシールドは受け取らなかった。

いつも腰に下げている父の形見の剣より軽い木製の剣を数回振って、その感触を確かめる。

準備を終えたソルベティは、アルベルトと対峙する。


「ソルベティ・マイトレーヤ……お願いします!」


ソルベティは、両手で剣を持ち切りつける。

盾を意識すると、片手で剣を扱わなければいけなくなる。

そうすると、攻撃する力が入らなくなる。

非力な部分を、剣のスピードと精霊の力で補うようにしていた。

そのため、ソルベティの剣は切るのではなく刺す方に特化していった。

だが、アルベルトに通用するレベルではなかった。

精霊の力を混ぜればそれなりに勝負になったかもしれないが、今回はソルベティから剣の扱いについてお願いをしていた。

当初はメイヤに稽古をお願いしていたが、多忙であることと技術差があり過ぎるためメイヤが時々訓練しているアルベルトにお願いすることになった。


「……それでは、ここまでにしておきましょうか」

「は……はい、有難う……ございました」


息を切らしながら、ソルベティはアルベルトにお礼を言う。

その様子をずっと眺めていたルーシーは思い出す。

今回の王選での付き添いにぜひ連れて行ってほしいと懇願するソルベティの姿を。

今はフレイガル(火の町)を任されているセイラム家に仕えているが、元々は王国直下の警備兵だったソルベティの父親。

またいつか国王の下で父に代わり、お役に立ちたい。

その強い思いに惹かれて、今回ルーシーの推薦でソルベティとその弟を一緒に同行させた。

当然、フレイガルの中で反対の声も多かった。

旅の途中で、ルーシーや王子を守れなければセイラム家の大きな問題となる。

だが、これからの時代には新しい考えを持つ人材が必要だとルーシーは考えた。

とくにソルベティの”精霊使い兵士”という二つの役職を掛け合わせた部隊を作るという目標に、ルーシーは惹かれたのだった。

そこからソルベティは腕を磨き、様々な知識を身に着けた。

腰に下げた剣の重みを感じながら、努力し続けていた。



クリエは、パレードで着用したドレスを部屋に飾って眺めていた。

案外気に入ったらしい。

ハイレインは、寸法も低身長のクリエに合わせて直したため、そのままクリエにあげることにした。

なにより、それ以上にハイレインとしては良いものを見ることが出来た報酬のつもりだった。

クリエはその衣装を、とても気に入っていた。

一日一回は袖を通そうとしていたため、カルディはそれを止めた。

案外着用も面倒で、それを手伝わされるのは辛いものもあった。

カルディは、毎日着ると汚れてしまうのと破れてしまう可能性もあると説得をし、眺めるだけにやめてもらった。

カルディは、順位のことを気にしていないかクリエに聞いた。

すると本人は、まったく気にしていないとのことだったので、それ以上のフォローは不要と、いつも通りに接しようとした。

しかしクリエの顔を見ると、目は真っ赤になっていた。

その姿を見て、思わずカルディはクリエを抱きしめた。クリエは胸の中で、声を押し殺して泣いていた。

カルディはその間、ずっとクリエの頭を撫でる。

悔しくないはずがなかった。

これから競う四人の中で、一番下だったから。

今までの自分と向き合い、変えていくと誓って参加した王選。

弱かったクリエが、自分の意思で参加を決めた。

そこからカルディも、何とかクリエのためにアドバイスをしてきたのだが、他人の評価だけは自分で何とかするしかない。

最後まで良いところも見せることができず、クリエはただこの結果を受け入れるだけしかできなかった。


「お母様、見てくれた?私、二位だったのよ!」


人気投票の件では、あの虹は結構評判が良かったようだ。

あの日からずっと、エレーナはその喜びを噛みしめていた。


「それって、私が教えてあげたおかげじゃないの?……何にせよ、よかったわね。おめでとう、エレーナ!」


アーテリアもわざわざ喧嘩になるようなことは避け、ここは素直に自分の娘の結果を認めてあげることにしていた。

それでも、同じことを何度もずっと言われ続けるのは親であってもキツイものがあった。

そろそろ、次の話題でも起きないかと思っていたその時。


――コンコン


ノック音が鳴る。

オリーブがドアを開けると、そこには従者が立っていた。


「アーテリア様はこちらでよろしかったでしょうか?ハイレイン様より、お言づけをお預かりしております」


その声を聞き、アーテリアはドアまで顔を出した。


「アーテリア様ですね。王妃様とハイレイン様が明日、お城でのお食事を希望されておりますがご都合はいかがでしょうか?」


それは、前回王選参加者の同窓会の招待だった。




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