表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第五章 【魔神】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

686/1278

5-77 ニーナの決断






ヴァスティーユが差し出した石からか、突如この場にモイスが姿を現した。


モイスはゆっくりと目を開け、グレイネスの顔を見る。

目線を送られた王は動揺をすることもなく、ただその瞳を見つめ返している。

モイスは視線を外し、ハルナのことを視界に入れすぐに視線をそらした。


そして、身体ごとグレイネスの方へ向けて長い首を起こし、ハルナたちに告げた。





『……お前たち……あの剣をこの者に渡すのだ』



「モイス……様!!」



「本気ですか!?」






その言葉に反応したのは二人の王子だったが、その言葉にモイスが反応することはなかった。

王子の言葉を追うように、その父であるグレイネスがモイスに問いかける。





「長きにわたり我が国に力をお貸しいただいた水の大精霊……モイス様。我々はあなた様のお力や言葉でどれだけの恩恵を受けたのかわかりません。ですが、今までの中でこのような命令を受けたことがありません。何かあったのですか?その理由をお聞かせいただけませんか!?」





強いグレイネスからの言葉にも、モイスは動じることなくその表情に変化は見られない。

押さえきれない冷気を漏らしながら、モイスは再び口を開く。





『もう一度だけ言う……あの剣を……この者に渡すのだ……出なけれ』






何かを言おうとしたモイスは、言葉の途中でその姿を消した。

ヴァスティーユは掲げていた石を持つ手を下ろし、目の前にいる者たちに告げる。





「さぁ。それでどうするの?剣を渡して、人質を戻すか?それとも何も得るものがなく、力づくで奪われるだけか……どちらの結末をお望みかしら?」






その問いに誰も答えることができず、わずか二、三秒の沈黙が流れた。

そして、今までこの場にいなかった者の地下強い声が響き渡った。





「……キャスメル様。その剣、お渡しくださいませ」



「……ニーナ様!?」





経緯をしらないキャスメルは、この場にニーナがいたことに驚いたが、今の西の王国の状況を考えればここにいる理由はすぐに納得できた。




「ニーナ様!ここは危険です、お下がりください!」




この部屋の警備にあたる騎士が、ニーナの元に駆けつけてその身を庇った。

しかし、ニーナは手を挙げてその騎士を進行方向から横にずらした。

手は再び前に重ね合わせ、西の王家の気品を纏いながら歩み出てこの場に参加していく。




「お前は確か……西の王女……フェルノールと争っていた奴だな。ここにいるということは、西の王国が危険と判断し一人だけで逃げてこられたのですか?」





ヴァスティーユの言葉にニーナは何の反応も見せない、それが自分に対しての挑発だと判っていたから。

ここで心を乱してしまえば、相手の思い通りになってしまう。

そんなことになれば自分を逃がしてくれた兄、カステオの思いを裏切ってしまうことになる。


ニーナはお腹に力を込めて、さらに足を進めていった。





「それで再度あなたに申し上げます……剣を渡せば、本当にクリエ様をお返しいただけるのですね?」





ヴァスティーユは、先ほどの挑発した表情から真剣な表情に変わりニーナの言葉を受け止めた。

そして胸に片手を当てて、軽く腰を折って言葉を返す。




「おっしゃる通りです、王女様。……もとより、そのことは初めからこの交渉で申し上げていたことでございます。私が欲しいのはその剣だけ、クリエという人物はただの交渉材料としての価値しかございませんので」




その言葉を聞き、ニーナは西の国宝をもつシュクルスに向かい背中に下げてある西の王国の剣を手渡すように依頼した。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ