5-41 加護のちから
『……はい。私の加護もこれでいいわよ。……まだまだ大変だろうけど、がんばんなさい!』
「はっ!ありがとうございました。ガブリエル様」
『いいのいいの。あなたの祖先もみんなやれたんだから、あなたにもできるはずよ……もちろんハルナもエレーナもよ。それじゃあね!』
「――あ、ちょっとお待ちいただけませんでしょうか!」
ガブリエルの周囲の空気が何か別なものに包まれた掛けたその時、声をかけたのは、エレーナだった。
『ん?どうしたの?』
「ガブリエル様、これを……」
そういうとエレーナは母親から預かっていた指輪を外してガブリエルに差し出した。
『……?あぁ!いろいろあったから忘れてたわ!……ほら、貸してごらんなさい』
エレーナは、指輪をガブリエルが出してた掌の上に渡した。
『ん、いいわ。……こっちに来なさい』
ガブリエルは、エレーナの精霊のヴィーネを呼んだ。
その呼びかけに応じて、ヴィーネは姿を現す。
ガブリエルは手にした指輪とヴィーネを握りしめた。
「「――あぁっ!」」
指輪は大丈夫だと思うが、ヴィーネのことが心配になりハルナとエレーナは、思わず声をあげてしまった。
二人の心配をよそに、握りしめた両手の周りに水の元素が不規則な渦を巻きガブリエルの手に絡まる。
何周か回ったのちに、光が強くなりやがて収束する。
一つの手を開くと、光の球体の中からヴィーネが姿を現す。
ヴィーネはゆっくりと閉じていた目を開き、一度左右を見回して周囲を確かめた。
そして自分の身体を見て、無事なことを確認してエレーナのもとに飛んで帰ってきた。
そして、もう片方の手を開くと、そこには初めに渡した指輪がある。
ガブリエルはその指輪を差し出すと、エレーナは掌の上から受け取った。
それを着けるように促され、エレーナ掴んで手でそのまま指にはめる。
「……ぃっ!?」
付けた指に、焼けるような痛みが一瞬走った。
驚いたエレーナは、指輪をずらそうとしたが皮膚と一体化したため外すことができなかった。
「これって……まさか!?」
エレーナは既に指輪が外れないハルナのこと見つめ、ハルナもエレーナの顔を見つめ返した。
「おめでとう!エレーナ!!」
「ありがとう!ハルナ!あぁ、こんなに早くこの時が来るなんて……お母様に早くお伝えしたいわ!」
(ふ……ん、おめでとう……ねぇ)
ガブリエルは、誰にも聞こえないように頭の中で一言つぶやいた。
そして、エレーナはガブリエルの傍に近付いて、片膝を着いて頭を下げた。
「ガブリエル様、ありがとうございました!!これからも水の精霊使いとして頑張ってまいります!!」
『え?あぁ、がんばりなさい!……期待しているわよ?エレーナ……あんたもしっかりやりなさい』
大精霊が名前を呼んでくれたことに、エレーナは感激をして目に涙を浮かべている。
大きな存在に声をかけられたヴィーネも、エレーナの真似をして頭を下げている。
「それで、ガブリエル様。我々がいただいた加護にはどのようなお力があるのでしょうか?」
ステイビルはモイスの時に学習し、自分たちに授かった加護の内容を聞くことにしていた。
『そうね……今回授けた加護は精霊使いに対してのものなんだけど、精霊使いは扱える元素の量が増えているはずよ。そして、貴女の精霊……あの時から頑張ったのね、癒しの力が使えるわ。と言っても、そこのサナのような魔法ではないけどね。対象者一人の身体の水を操作して傷の治りと体力の回復が早くなるわ……ただし、その力の効力を発揮している間は他の力は使えないから注意してね』
だがそれだけでも、この度の中では優位になる力だとステイビルは判断した。
「……感謝いたします。ガブリエル様」
『それじゃ……また会いましょ』
そういうとガブリエルは光に包まれ、”やっと戻れるわ!!”という声が最後に聞こえてその姿を消した。
「さて、それでは我々も一旦町に戻るとしよう。でないと、そろそろこのガスが消えている異変に気付く者もいるだろう」
そういって、ステイビルたちは再びフレイガルの町を目指した。




