5-36 地上での変化
ステイビルは、片膝を地面に着き頭を下げた。
エレーナたちもステイビルに倣って、同様の姿勢をとる。
その時よりも少し前のこと……
調査に入っていった穴の中から、再びその姿を見せたブンデルとサナ。
そこには、少しだけ疲れたような表情を見せていた。
ステイビルたちは、その姿を見てホッと胸をなでおろす。
二人が穴の外に出てくる際には、皆で手を差し伸べてその身体を早く楽にさせようと手伝った。
本当は早く中の状況を確認したい気持ちがあったが、二人の苦労を考えると、自分の欲だけを先行させてしまうことは憚られた。
ステイビルたちは二人の回復を待ってからと、そのタイミングを伺っていた。
すると、ブンデルが今までとは違う状況に気付いたのか辺りを見回す行動をする。
そのタイミングを利用させてもらい、ステイビルは地上で待っていた時の話をする。
それは、ある時この場所に二つの大きな力が感じられた。
そのことを最初に気付いたのは、ハルナとエレーナの精霊たちだった。
その力が敵か味方か、どれだけの力を持つ者なのかまではわからなかったが、その力がこちらに向けられれば危険な状態に陥る程の力を持った存在だったという。
それらの力が、ブンデルたちの身に降りかかったのではないかという心配をしていた。
そこから二つの存在のうち、一つの存在が感じ取れない程小さくなったという。
さらに不思議なのは、それと同時に周囲のガスの濃度が下がっていったということだった。
再び大きな力が二つに戻り、大きな存在は安定していたという。
その間、この中の誰かが二人の様子を見に行こうとしたが、その存在がどのようなものか判らない状況では救出には行けないとステイビルが止めた。
その話を聞いたブンデルは、冷たいようだがその判断が正しい決断であることは判っており、その判断が問題ないことをまずステイビルに告げた。
その言葉を聞き、ステイビルも許されたことにより、口からは張り詰めていた気持ちが息となって漏れ出していた。
次にブンデルたちが、下で何があったのかを話す番となった。
そして、サナに変わってブンデルが横で見てきたことを全て話した。
当然、その話を聞いたステイビルたちの目は点になっていた。
信じられないわけではない……この旅で今までありえなかったことや伝説のような話が当然のように起こってい。
だが、偶然のような幸運……とは言い切れないが、最終的に良い結果になったことにステイビルたちは何とも言えない気持ちになっていた。
それも、更なる衝撃で打ち消されることになる。
『はい、お待たせ。あれ?……あなたたしか水の町で会ったわね?あのラファエルに呼ばれた時に』
「え?……ま、まさか」
ブンデルたちができてた穴から……いや、この空間に新しい存在が姿を見せた。
その存在は、誰よりも先にエレーナの姿を見て指をさした。
「あ、ハル姉ちゃん……この人だ!さっきの大きな存在」
フウカはハルナにそう教えてくれ、ハルナもこの存在がラファエルと同じ力を持った存在であることが分かった。
ステイビルたちは、慌てて片膝を着き頭を下げ姿勢を取る。
そしてエレーナは、この存在に対して思い当たる中で一番可能性の高い存在の名前を口にする。
「もしかして……ガブリエル様でしょうか?」
『そう。そのとおりよ!私が水の大精霊!!』
ステイビルも、このことは想定外だった。
ここにいるのは火の大竜神なのではと思っていたが、水の大精霊がいるとまでは考え付かなかった。
だが、ブンデルの話を聞けばここにいることに、ちゃんとした理由があることは理解できる。
そして、ここにはいない火の竜の凶暴さが襲ってこないかという問題も新たに生まれてきた。
「それで、その火の大竜神様は……いまどちらに?」
ハルナも同じことを思ってたのか、ステイビルが聞きたかったことを口にしてくれた。
それにこたえてくれたのは、サナだった。
「あ、はい。こちらに」
そして、サナの頭の上に小さな赤いトカゲが姿を見せた。




