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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第五章 【魔神】

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5-28 ムシケラ








「……エルライツ」



ブンデルは魔法を唱え、サナが持つ杖の先に光を宿す。



明りが灯り、穴の壁が見えるようになった。

ドワーフのサナが言うには、これは何者かの手によって作られた穴ではなく、自然の力によってできたものだという。






穴の大きさは、身体の大きいアルベルトやステイビルも入ることができるが、ほぼ横になりながらの状態でないと進めない。

人が気軽に入れるような場所ではないが、サナであれば普通に、ブンデルであればやや前かがみの状態で進んでいけるような穴の大きさだった。

しかし、この中を探索するということは、トラブルが生じた際に戦うことも逃げ出すことも難しいため危険であるという意見が出た。

ここまで来ることができたことも、今まで誰も成し遂げられなかった大きな成果ではある。

しかし、次にここに来るときも無事に来ることができるかもわからない。


幸いにして、この穴からはガスは出てきていない。

これもこの世界のことを知る、幸運にも授かった一つのチャンスである。

それにこのまま帰還するにしても、ハルナの疲労が大きいため少しは休まなければならない。

その時間くらいは、何かを調べることができないか?


そんな意見が出た時に、サナがその役を買って出てくれた。

エレーナは何度も大丈夫かとサナに聞くが、本人も無理はしないし大丈夫だと言ってくれた。

暗闇に対しては、松明を用意していたので、それに火を点すことにした。

空気があり、ガスがないと判断してのことだった。

しかし、途中でガスが噴き出すことがあった場合はとハルナが口にするとそれ以上の案は出なかった。

そこで、ブンデルがサナについていくと申し出てくれた。

サナが一人で心配ではあるし、一人より二人の方が安心だといった。

さらに、ブンデルには明かりの魔法を所有している。

魔法の明かりであれば、ガスに引火する危険性はない。




ステイビルは、腕を組んでしばし考え込んだ。

そして目を開き、二人に中の様子を探ってもらえるようにお願いをする。

二人は、それを快く受けてくれた。





二人は奥へと進み、もう外の音も聞こえなくなった。

明かりはあるものの、こんなにも狭い空間で一人で進んでいったことを考えるとブンデルの心拍数は急激に上がる。


(そんなことをサナ一人にはさせられない……)


そんなきもちから、ブンデルは一緒に行くことを申し出た。

当然他の者はそれをわかっていたが、申し出てくれただけでもありがたいため、そのことをどうこう言うことはなかった。





「案外苦しくないな……」


「はい、空気は問題なく流れてきているようですね」



二人はさらにそこから先に進んでいく、進むたびに下に降りていっていた。

ブンデルの中腰の姿勢が辛くなり、様子見の捜索にしては進みすぎたためそろそろ戻ろうかと考え始めていたころ。



「……ん?」


「どうしました?」



「ちょっとサナ、あれ見て……」


ブンデルは、その先を指さした。

サナは杖の先を前に付き出し、ブンデルが示したその先を確認しようとする。


そこには、空間が広がっているように見えた。

サナは穴の出口から顔を出し、その空間の中を見渡す。


いくつか同じような穴があるが、また別な場所につながっているのかとサナは考えた。



「よ……っと」



サナは、ちょっとした段差をおりその広場の中に降り立つ。

後ろから続くブンデルは、屈んでいた腰を伸ばして握った拳で数回自分の腰を叩いた。

サナは杖を掲げ、その広さを確認する。

その中はざっと、今泊っているフレイガルの寝室と同じくらいで、広さにしてダブルベット一つ分の大きさだった。

高さは、ステイビルたちも立ったままでもいられる高さだろう。

だが、ここにあのメンバー全員が入ることは難しいことは測らなくても見ただけで分かる。



サナとブンデルは、この空間の中を調べてみるが、同じような穴が数個開いている他は特に変わったところもない。

他の穴の続きも興味があるが、外で待っているハルナたちに心配されるためこれ以上は時間をかけることはできなかった。



「特に何も……ないよな」


「えぇ、変わったものは何も」



二人で確認をし、一応この状況を記憶に焼き付ける。

ブンデルはまたあの不自由な体勢を


「ねぇサナ、そろそろ戻ろうか」


「は……」




ブンデルの言葉に対し、承諾する返事を返そうとしたサナの言葉は止められてしまう。

姿を見せず、頭の中に響き渡るその声に。




『ムシケラめが……こんなところに何をしに来た』









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