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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第五章 【魔神】

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5-24 ハルナの提案









「え!?うそ……ま、さか……それ、ハルナの妄想じゃないの?」



「いや、そうとも言い切れないな……」



「私としては、そのハルナ様の考えに同意しております」



「ルールとは人間……いや、知性のある生き物が秩序を守るために勝手に決めたものだからな」


「ブンデルさん、そんな言い方良くないですよ?……あの、でも、私もハルナさんの意見に賛成です」



「ちょっと、みんな正気なの!?王子に法律を破らせるなんて!?」







ハルナの発言から議論が交わされ、エレーナ以外の者からは賛成の声が聞こえた。

エレーナ自身も賛成の方が強いが、今までの思考の方法から反対意見を立てて議論するというスタイルを用いているためだった。

それをわかっているため、他の者たちもエレーナを責めることなく黙って反対意見を聞いていた。





ステイビルたちは、いろいろな良くはない思いを胸に抱きながら宿泊施設に戻ってきた。

しかし、その不安を解消する案は誰も持っていなかった。



今日の夕飯は、昨日の食堂の反省から部屋の中で頂くことにした。

施設の方には手間が増えて申し訳ないと思ったが、ゆっくりと食事をしたいということも理解してもらえた。


ソフィーネとソルベティ、ハルナとエレーナとサナも協力して食堂からワゴンとトレイを借りて食事と飲み物を運ぶ。

そして、昨日とは違いゆったりとした雰囲気の中、送られる視線の緊張の中では味わうことができなかったこの施設の料理長の腕前を楽しむことができた。



皆の空腹が満たされ一息ついた頃、食事に集中するため意図的に忘れさせていた問題が、全員の頭の中にゆっくりと浮かび上がってくる。


それを先送りにするかのように、一同は無言で空になった食器をワゴンの上に載せていく。

ステイビルさえものその行為を手伝っていたのは、じっとしていれば他の者よりも早く思考の沼の中に足を踏み入れなければならなくなるためだった。



そして、とうとうテーブルの上には皿がなくなり、話し合いのための飲み物が各自の前に置かれるだけとなった。




「はぁ……」




グラスに注がれていたワインを喉の奥に流し込みその反動の息なのか、ただのため息なのかわからない息をエレーナは吐いた。


その音が引き金となり、またいまから解決策の見えない問題に立ち向かわなければならないという重い空気が部屋の中に漂った。




「あの……」



重い空気の中、ハルナの声が窓を開けた時の風のように通り抜ける。

その一言で、ステイビルたちの視線がハルナに集まってくる。


慣れているはずの、それぞれの視線がまとわりつくような重みがあり、ハルナはそれから先の言葉を忘れてしまった。





「なに?ハルナ……何かいいアイデアでもあるの?」





そんな言葉でも、ハルナにとっては次の話を切り出すきっかけとなる助け舟となった。

そのタイミングをもらって、ハルナは頭の中で考えていたことを口にする。





「あの……思ったんですけど、無許可でもその場所に行ってみませんか?」





その発言に対して、何も答えは返ってこない。

だが、呆れている様子でものなさそうに思えたため、ハルナはその結論に至った理由を話す。



ハルナはある思いから、警備兵に質問をしていた。

一つ目は、”キャスメルがこの町に立ち寄っていたか”ということ。

これに関しては、警備兵は無言を貫き言葉を返すことはなかった。

二つ目は、我々の邪魔をするつもりがあるかという質問だった。

これについては”ない”と即答していた。


この二つの質問からハルナが導き出した仮説は、”王選の行為を止める気はない”ということだった。



そのことに対して、エレーナの頭の上に”???”が浮かんでいたのが見えたので、あくまで仮説という前提のもとに話を続けた。



一つ目の質問からは、王選に関する情報は、相手の王子のメンバーに伝えることはできないというルールに基づいているものだと判断した。

王選が始まったあの日から、王都でもキャスメルとステイビルのメンバーが合うことを避けるために、昨日まで一緒に過ごしていた施設の中の通路に見たことのない壁ができるほど徹底されていたことを思い出した。


警備兵は王国関係者であり、町人と違いお互いの情報を渡すことはできない。

この警備兵もその上での行動だったのだろうとハルナは判断した。

次の質問に関しては、ソイランドのような誰かの悪意の上での行動ではないかということ。

それに対する返答は、嘘偽りのない答えだったとハルナは声から感じとった。


だから、あの立ち入りの許可が下りないということは入れさせないためではなくて、手を下さないという理由だったのではないかとハルナは思い付いた。





「……みんな正気なの!?王子に法律を破らせるなんて!?」



「いや、それは本当に法律なのか?ただのルールなのかもしれないぞ?……ソルベティ、黙って入った場合どういう罰を受けることがあるのだ?」



「わかりません……今までに許可なく入ろうとして成功した者はいません。ほとんどの場合は、その前で止められているので」





その理由も”ルールを守らない者を叱る”のではなく、その者たちの命を守るためというのが大きな理由だった。





「その辺り……直接聞きに行ってみるか」




希望が生まれたステイビルたちには、先ほどまでの重い空気はどこかに消えていた。










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