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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第五章 【魔神】

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5-20 落ち着かない食事







「ハルナさん!エレーナ様!フレイガルへようこそ!!」



「「ソ――ソルベティさん!!」」




ハルナはソルベティと手を取り合い、その再会を喜ぶ。



王選が始まってから、ソルベティとは会う機会がなかった。

フレイガルの代表はルーシーだったため、ソルベティはフレイガルに戻って町のために働いていた。




「お二人もお元気そうで!」



「ソルベティ、あなたも元気そうでよかったわ!」


ソルベティの言葉に、エレーナが嬉しそうに返した。



「ついこの前のことなのに、随分と遠くのように思えますね」



「……そうですか?私の中では、ついこの前のままなんですよ?それだけお二人が、濃密な時間を過ごされたということなのでしょうね」



騒いだ声が聞こえて、両隣の部屋からハルナたちの元へ集まってきた。



「ステイビル王子……ご無沙汰しております。王子もお変わり……いえ、お元気そうで何よりです」



ソルベティはステイビルの姿を見て、片膝を床につけて再開の礼をする。

挨拶の言葉を途中で変えたのは、変わりなくでは何も成長が見られないと判断し、今の状態を見て問題なさそうなことを口にした。




「いい、頭を上げてくれ……ソルベティ。よく来てくれた、変わりはないか?」



「はい、ありがとうございます。王子」



ソルベティは、今まで見たことのないエルフとドワーフがいることに気付いた。

簡単に挨拶を交わし、お互いの自己紹介を終えた。


二人に協力を得ることになったいきさつを知り、王選の旅の過酷さと重要さを感じた。


そして頭の中には、自分の代わりに王選に同行している愚弟のことを思い浮かべる。

西の王国の時からは成長していることは、騎士団の見習いとしての位を受けたことでうかがえる。


つい最近までは、女性であるソルベティよりも剣の技術は低い弟だった。

最初は父親の後を追って剣の道に進もうとしたが、女性にはその道が用意されていないことを知ったときはショックを受けた。

実際にそこらの警備兵志願の者よりも、ソルベティの方が実力は上だった。

そこから道を変え、精霊使いという目標に向かっていくことになったが、運よく精霊と契約まで取り付けることができたのは幸運だった。


いまでも職業で剣を扱う者たちと技術では劣っていないが、性別の差で越えられない壁はあった。

筋量が多い相手では、単純に剣のやり取りでは負けてしまう。


だが、ソルベティには新しい力がある。

火の力と剣技を合わせることで、騎士団の下位の者には負けない実力があった。

その腕を見込まれ、ソルベティはいまフレイガルでも新しい仕事を与えられていた。






「ソルベティさん、今夜一緒に食事でも……どうですか?ステイビルさん」





ハルナの言葉に、ソルベティは遠慮する仕草を見せるがけっしてそれは本気ではない。

皆の視線が集まったステイビルは、問題ないと告げ今夜の夕食にソルベティも参加することが決まった。

ステイビル自身も、この町の情報をソルベティから聞きたいという思いがあった。



この施設には、食堂も設置されていた。

宿泊できる人数は三、四十名のため、食堂もそこまでは大きくはない。


ステイビルたちは、食堂のテーブルをつなぎ合わせ全員が一緒に食事ができるようにした。

勿論、施設側にも許可をもらっての上だった。


食堂とはいえ、やや上級なものたちが利用する施設のため、大衆食堂とは違った雰囲気を作り出している。

テーブルを合わせることで、その雰囲気を壊す可能性もあったが、王子の申し出に断われるはずがない。




静かな音楽が流れ始め、食事がテーブルに運ばれてくる。

それと同時に、ハルナたちしかいなかった食堂に人が集まり始める。


目立たない様にと食堂の端の位置でテーブルを確保していたが、食堂内での違う配置に自然と視線が集まってくる。


遠くでこちらをチラチラと見ながら、音楽の邪魔をしない様に小声で話しているのが聞こえる。

そして、ある高齢の者がとうとうステイビルの姿を見つけた。


そこから、ステイビルの席の前に行列ができる。

この場に居る王子に対し、挨拶をしなければという行列だった。


時間にして、おおよそ四十分。

挨拶だけでは終わらず、少しずつ話を積み重なっていった結果、こんなにも時間が経過してしまった。

お腹を空かせたエレーナも、これには文句を言うこともできない。

ようやく行列が終わりを迎え、ステイビルたちも落ち着いて食事ができる環境になる。

が、既に最初に出てきたスープは冷めており、発泡性の果実酒も炭酸が抜けてぬるくなっている。

途中、ウェイターが代わりの物を持ってきましょうかと提案してくれたが、結局挨拶が終わるまでは同じことになると断っていた。



食事が始まっても、周囲からチラチラと視線が送られてくる。

と同時に、聞き耳を立てている感覚が気になって本当に話したいことが話せず、美味しい料理の味も半減してしまっている。


結局その日は途中で食事を中断し、マーホンが卸している軽食ができる酒場に移動することにした。








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