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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第五章 【魔神】

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5-15 キャスメルの憂鬱5







キャスメルたちは、ポッドの家を後にする。


色々と重い空気の中で会食は終わりを向えたが、最後にはエルフとドワーフの代表の者も、キャスメルに協力を惜しまないと約束してくれた。




良い返事が聞けて喜ぶべきところだが、集まった部屋の中の空気は再び重苦しいものがあった。





そのきっかけを作ったのはルーシーだった。

終った話ではあるが、ルーシーにはどうしても見逃せないところがあった。


それは、チュリ―の言葉の後のキャスメルの態度だった。

言葉にはしていなかったが、あれは完全にキャスメル以外の者が悪いという考えから生じていたキャスメルの態度であるのではないかとルーシーは問い詰めた。


キャスメルより年齢が上なのは、今回のメンバーの中ではルーシーとアリルビートの二人だった。


地位は勿論キャスメルがこの国では、一番高い位置にいる。

だが、ルーシーの真面目な性格から、キャスメルの態度が許せなかったのだ。



あの態度は、今後に影響するものだとルーシーはキャスメルに告げた。

その勢いと刺さるような言葉に中に込めた感情は、本来であれば王子に対して持ち掛けていいようなものではないと、アリルビートはルーシーをなだめる。

アリルビートもルーシーをなだめるのではなく、叱ったうえで王子の味方をしなければならない。



……はずだった。



それができないのは、アリルビートもルーシーと同じ気持ちだったからだろう。



アリルビートはルーシーとの付き合いは長く、この王選の話がなければ二人は今頃一緒に暮らし始めている予定だった。

おとなしそうに見えて気の強いルーシーは、基本的には言うべきことはどんな形でも口してしまう性格なのは知っている。

だが、こんなにまで感情を隠すこともなく、時間を置かずに口にしたということは相当思うところがあったのだとアリルビートは判断をしていた。


そして、その行動を責められるはずはなかった。

この場にいるキャスメル以外の者が、ルーシーと同じ思いをあの時抱いていたと感じたのは間違いではなかった。



あの時、キャスメルはここまで同行してきた者たちを、蔑んでいた目をしていた。

それはきっと、ステイビル王子の同行者と比べているのだとわかった。


この場所に来る間、決して楽なものではなかった。

ステイビルたちほど何かの結果を残せたほどではないが、困っている人を助けたり人を害する魔物たちをこの世から滅してきた。


各個人は王選に選ばれるだけあって、それぞれの力を持っている。

だが、場面によっては、それぞれの力を組み合わせて行動しなければならないこともあった。

集団での行動に慣れていないクリエとシュクルスには、そういう時にはキャスメルの安全を確保に徹してもらい、攻撃には付き合いの長いルーシーとアリルビートが担当をしてきた。


二人はそれに対して、不満を持ったり差別だというつもりは全くない。

自らの力が王国への恩返しとなるべく、キャスメルへ忠誠をささげた。

ソイランドでは、クリエの父から”国のためになるような人物にしてほしい”と頼まれた。


全ては国のために……キャスメルのために、その信念をもってこの旅を続けてきた。

あの時のキャスメルの表情は、それを全て無にしてしまった。




ここで再び、下を向いたまま黙っているキャスメルに対して、クリエが助け舟を出す。



「王子……わたし……いえ、我々は……キャスメル様……」



口を開いたまま、次の言葉をクリエは出せない。

そんなクリエを、キャスメルは少し顔を上げ表情を見る。

目は悲しみで赤く染まり、その先の言葉を言ってしまってもよいか迷った表情をしている。

キャスメルもその言葉の先を聞くのは怖く、できれば聞きたくはなかった。

だが、このままではこのメンバーの絆は――すでにヒビ割れているが――崩れてしまうと思った。


キャスメルは、クリエに対しその先の言葉を促した。

クリエはその言葉を聞き、何度もその先を伝えようと息を吸っては声にならない空気が漏れてを繰り返している。

キャスメルはもう一度、クリエにその先の言葉を続けてほしいとお願いをした。



その言葉に対して、クリエは息を一度だけ飲み込んで決心を固めた。



「王子……我々は、王子のことを信用してもよろしいのでしょうか?」















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