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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第四章  【ソイランド】

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4-138 情緒








ステイビルは、サヤの言葉に耳を疑った。

モイスがやれてしまったことと、その力を奪われてしまったことにについて。

絶対的な強さを信じてきた大龍神の一柱であるモイスが、まだ見ることはできないが目の前の存在によって危害を加えられたという事実。


確かにグラキース山で、このような不思議な空間で過ごしたこともあった。

モイスがレッサーデーモンをハルナと討伐した際も、その姿を消していたのはこの力を使ったためだろう。


しかし、この力を相手も使えるようになったとすると厄介なことになりかねないとステイビルは口には出さずにいた。




「まぁ、驚いたでしょうね……今までは、自分たちしか使えなったのに相手にその能力が奪われてしまったら」




サヤの顔は見えないが、満面の笑みを浮かべてステイビルのことを見ているのだろう。

感情は読まれなくなったとはいえ、ステイビルはなるべくこの不安を表に出してしまわないように努力を続けた。





「でもね、あたしもまだこの力の全てを使えるわけじゃないからね。いろいろできるみたいだけど、それはこれから徐々に使いこなしてみせるわ……それであんたにお願いがあるんだけど」




ステイビルは思い出した。

この空間に入ってから、最初のころにサヤは頼みたいことがあると言っていたことを。





「それは一体……どのようなお話でしょうか?」



「あー、うん。大したことじゃないんだけど……ハルナをあたしに渡してくれない?」




ステイビルは、その聞いた要望をすぐにそのことを拒否しようとしたがぐっと堪える。

渡すということは、この場所から返してくれる意思があるかもしれないということ。

それに、その目的なども聞いておきたい。


だが、答え方によって機嫌を損ねてしまってはこの場所から逃げ出す機会さえも逃がしてしまうことになりかねない。

ステイビルは相手の要望と自分の身を守るためにも最善の手を導き出そうとしていた。

しかもサヤに不信感を抱かれないように、素早く決断をしなければならない。



「……ハルナをですか?ですが、あの者は私に協力をしてくれてはいますが、実際には我が国の国民ではありませんし私が命令を出せるよう人物では――」



その言葉を聞き、サヤは大きな笑い声をあげる。



「何言ってんのさ……あたしはにハルナと伊達に長く付き合ってきたわけじゃないんだよ……だからさぁ、なんとなくわかっちゃうんだよね……あんたハルナのことが”好き”なんだろ?」




「――ぐっ!?」



ステイビルは自分の心を覗かれたと勘違いし、心臓の鼓動が一つ大きくはねた。

だが、実際には周囲の者たちには既知の事実であり、いまさら驚くことの程でもないと周りにいたら思われていただろう。


サヤは。自分の言ったことが図星である様子を見せるステイビルの反応に満足する。

こんな内容の会話も久しくしたことがなかったため、さらにサヤの機嫌はさらに良い方向へ向かっていった。



「クッくく……どうやら図星のようね。あたしの人を見る目もまだまだいけるじゃないの」



機嫌よく語るサヤをみて、ステイビルは今が好機と判断し交渉を持ち掛けてみることにした。



「サヤ殿……先ほどの件ですが、一度持ち帰って相談させて……」



「……あぁっん!?なんだって!?」



サヤは先ほどと違う声で、ステイビルの言葉を聞き返す。

その声を聴いてステイビルは、選択を誤ったと後悔する。



(先を急ぎすぎてしまったか……!?)




「なんか勘違いしているようだけど、あんたには交渉できる権利はないの!あたしの言うことに黙って従うしかないんだ!それを偉そうに……あたしに駆け引きを持ち掛けるってさぁ……あんた死にたいの!?」



ステイビルは感じない心臓の鼓動が早くなる。

サヤが自分に近付いてくる気配を感じ、何か次の一手を打たなければと考えるが、待ってくれという陳腐なセリフしか浮かんでこない。


(――嘘でもハルナを渡すといった方がいいのか?)



だが、モイスを瀕死にしたサヤの力では、ハルナの身が危険にさらされることになることは目に見えている。



(いっそ、ここで命を終わらせるのも仕方ない……か)



ステイビルは意識の中に、ハルナのことを思い浮かべ覚悟を決めた。



その時――


ステイビルの感覚に、視覚が戻り目に入る光が眩しく思えた。










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