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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第四章  【ソイランド】

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4-133 謝罪





「いってらしゃいませ!」



「お気をつけて、ステイビル様」



「それでは、少しの間よろしく頼む」




ステイビルは馬車に乗り込む姿を、パイン、メイと横にいるクリアに見送られていた。

そして、外からやさしくその扉は閉じられ鍵か掛けられる。




「それでは、よろしいですか?」



「あぁ、よろしく頼む」



その言葉にうなずいたクリミオと一緒にいた男の一人が、手綱から馬に前に進むように合図を送る。

いつもの衝撃を感じ、二頭の馬はゆっくりと後ろの重みのある馬車を引いて歩きだした。


ステイビルが乗る馬車の前にもう一台の馬車が先行する。

三台のうち先頭に乗っているのは、クリミオとシーモ、グラムと若干名の警備兵たち。

真ん中にはステイビルと、ハルナとエレーナ、ソフィーネとアルベルト。

最後にはメイヤと、メリル、サナとブンデルが乗っていた。




向かう先は、ガラヌコアの途中にある施設とガラヌコアの町の探索。

それと逃げたダークエルフの追跡を目的とした。




途中の施設はその中にいた者たちはベルラドを始めとして、既にソイランドの方へ移送している。

今回は長所を採った検証の最終的な確認のため、馬車の先頭に乗っているメンバーに行ってもらうことにした。



残りの王選メンバーでガラヌコアに入り、周囲を探索しダークエルフたちの痕跡を探すという作戦だった。

前回ハルナの往路は夜の闇の中と緊張で、復路は疲れ切って熟睡していたため途中の景色はまるで見覚えがなかった。

エレーナはハルナにあれこれと聞いてくるが、その返答は”さぁ”か”うーんちょっと”としか答えることができない自分が恥ずかしくなった。



そんなハルナに助け舟を出したのは、ソフィーネではなくステイビルだった。

ステイビルが、無茶な作戦を立ててしまったことに対してハルナたちに対して頭を下げてお詫びをする。

誰よりも一番に、アルベルトが真っ先にステイビルに対して顔を上げてもらうようにお願いをする。

アルベルトの後をハルナとエレーナが続き、ステイビルに頭を上げてもらうようにお願いをして、ようやくステイビルは頭を上げた。

アルベルトはそんな気持ちにさせたエレーナに対し、反省するように告げる。

エレーナはなぜステイビルが詫びることになるのか、なぜ自分がアルベルトから怒られなければならないのか、どこにそんな要因があったのか。

様々な疑問が頭の中で解消されないまま、エレーナはステイビルに自分が悪かったと告げる。

だが、そのエレーナのお詫びもステイビルの真意には届かなかった。


そこで、ハルナはエレーナを助けるつもりと、ステイビルが何か勝手に思っていることがあるのではないかと気付き、ステイビルに自分の考えを伝えた。




「あの、ステイビル王子は悪くないと思います。前もおっしゃっていましたが、あの作戦は誰もが危ない状況になる可能性があったんですし、それを渡しもエレーナもブンデルさんとサナさんも納得して向かって行ったんですから……」



そのハルナの言葉に、ステイビルは首を横に振った。



「違う……いや、違わなくはないが……」



そうしてステイビルは目を閉じ、何度か深呼吸を繰り返して目を開き、前屈みの姿勢で膝の上で手を組んでハルナの姿を見つめる。



「ハルナの報告を聞いて、私は恐ろしくなったのだ。自分のために付いてきてくれている者たちに危険な目にあわせてしまったことを……」




ステイビルはこの件が終わってからずっと悔やんでいたことを告げる。

町を救うためとはいえ、ハルナたちに無理なことをさせてしまったことを。

そこに自分が傍にて、助けることができなかったことを。


キャスメルは、この問題に対して手を出さずにこの町を通り過ぎていった。

ましてや、メリルが監禁されている状況も見過ごしていた。

初めはそんな者に国を守る資格などない……そう思っていた。


だが、キャスメルの考えが正しいのではないかと気付いたのは、ハルナの身がが危険にさらされていたと報告を受けた時だた。

自分についてきてくれる者の安全が第一に考えるべきだったと……ステイビルはその思いに至らなかった自分を強く攻めていたことを口にした。




「王子……大丈夫です。こうして無事にいますし、ソフィーネさんやメイヤさんも無事……だったのかな?ですが、何よりメリルさんも助けることができましたし、ソイランドの町も変わり始めていますよ。これもステイビル王子のおかげです」



ハルナの言葉に、エレーナもうんうんと頷いて見せる。

その言葉が聞けてうれしかったのか、ステイビルの目は真っ赤に染まっていた。

だが、涙は必死にこらえている。


ステイビルはきっと、馬車の中でなくエレーナたちがいなければハルナを抱きしめているだろうとエレーナは頭の中で想像する。



そして、ステイビルその言葉に対して、”ありがとう、ハルナ”と一言だけ口にした。










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