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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第四章  【ソイランド】

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4-132 ベルとメイ






その日からメイは、また一人に戻る。

孤独には慣れていた……はずだった。


あのルクーとの心が温かい日々を過ごした今では、胸に開いた穴に吹く風は冷たすぎた。


生活は町から支給されたもので、苦労なくこれからも暮らしていける。

だが、一人ではない時間が楽しすぎたため、これからどうやって生きていくべきか、はたまたルクーの後を追うべきか……メイは何日もかけて生と死の尾根を渡り歩いた。



そんな中、メイはまたルクーに救われた。

襲撃を受けた訓練から戻ってきたら、メイに教えるつもりだったソイランドの歴史の資料を見つけた。


それをきっかけにし、メイはあることを思い付く。

ルクーはどのように生きてきて、どんな最後を迎えたのか……を。

その物語の結末は、決していいものではないことは承知している。

しかし、メイが知らないルクーのことを知ることが、ルクーが自分に分け与えてくれたものに対する恩返しであると判断した。

その日から、メイはルクーの生きた証を探し始めた。

現場にいた者、食事に連れて行ってくれた馴染みの店の従業員、共に訓練をしたことのある者など。

ルクーと関係する者、自分の知らないルクーの話を拾い集めて回った。

そうしてメイはパインにたどり着き、今こうして自分の家のような温もりに再び包まれることができた。




メイはパインの性格も知っている。

最近ようやく会うことができたが、パインに連れてこられた時にはグラムはいなかった。

パインのまっすぐすぎる性格は、時によくグラムを悩ませていたとパイン本人から聞かされていた。

曲がったことが嫌いな性格で、べラルドに従っていた時には身体を壊してしまうほどに悩んでいた。


苦しんでいるパインの姿を、メイはいつも傍で見ていた。

そんな時、自分には何の手助けもできなかったことに、力不足を感じていた。

だからこそ、メイは勉強をつづけた。

愛する人から教えてもらった知識、その与えられた知識を使って今の大切な人を守るために。





パインはそのことを知っていてくれた……それに自分を必要としてくれているとも言ってくれている。

これ以上の喜びはない、これ以上望んではいけない……はず。

しかし自分の主は、自分の思っていることを知りたいという。


ここは、今までに指示されたことのない主の要望に応えるべく、メイは様々な感情が入り混じる心境の中、自分の思いを初めて口にする。





「パイン様……私がこの子を……この子の面倒を見させては……いただけないで……しょうか」




その言葉にパインは、満足げに頷いて見せた。

パインはステイビルの顔をみて、それに気付いたステイビルも一度だけ頷いた。



「えぇ……いいわ。ただし、条件があるわよ」



「条件……ですか?」



「そう、それはね……」



そう告げると、パインはステイビルと話し合っていた内容の一つを伝える。

それは、廃墟の中にいた者たちのその身の振り分け方だった。


あの中には、捨てられた者、自ら逃げ込んだ者、罪を犯して隠れた者、町の中での生活を放棄した者……そこには様々な理由がある。


まずは、クリアや親のいない幼い子たちを救出することにした。

そこで、教育と仕事を与え、この先まっとうに生きていけるようにしていくことが目的だった。

廃墟の中の話では、クリミオたちがそうであったように、生きる術として犯罪の方法を教えているという。

その教育を正しいものを教えることによって、犯罪を起こそうとするものが減っていくという考えだった。


これをソイランドと国の支援によって行っていき、その中から優秀な人材がいれば町や国のために役立ててもらうという考えもあった。


しかし、それにも問題はある――人手と資金が足りていない。



現在は、その二つの問題をどのように解決していくべきかというところでその話は止まっていた。


そこに今まで静かに話を聞いていたクリミオが声を挟んだ。





「それについては、俺たち……いや、私たちも手伝わせてほしい!」



「クリミオ……あなた」




クリミオたちは幼いころ、ベルに助けられた。

そのベルが姿を消し、その行方を追い続けた。

それは、生きる目標であったベルを助けたいという願いをかなえるために。

いま、こうして……名前がメイに代わってしまったが、探し求めていた人物がここにいる。

その人が困っていれば、助けるのは当たり前だとクリミオたちはパインに一緒に手助けをさせてほしいと申し出た。




「わかりました……お手伝いをお願いしてもいいかしら?」




パインの言葉に、クリミオは”もちろん”と一言だけ返した。








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