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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第四章  【ソイランド】

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4-128 クリミオの困惑







「……さま!ハルナさまー!!」



クリミオの後ろから少年の声でハルナの名を呼ぶ、

その横から小さな人影が飛び出し、ハルナの姿を見つけて一直線に駆けてくる。





「あ、ハルナー!」




そのままハルナの座っている膝にぶつかり、身体を預けるようにハルナの脚に倒れ込んだ。




「わ!クリア!?ば……バカ!!ちゃんとハルナ”様”って呼べって教えただろう!?」



「いいんですよ、チェイルさん。……ね、クリアちゃん?元気にしてた?」





そういいながら、自分の太ももに顔を埋めるクリアの後ろ頭を上から下に向かって数回撫でる。

そして顔を埋めたまま頷くクリアの感触が、ハルナの脚から伝わってきた。




「あの……その……もう、人のモノとったりしてないわよね?」




ハルナの言葉にクリアは顔を急いで上げ、その質問に答えた。





「うん!もう誰のものも取ってないよ!わ……私、いい子になったよ!!ほ、ほんとだよ!?」





少しうるんだ目で、クリアはハルナのことを見上げる。

あの時、ソフィーネに捕まって怒られてからクリアはソフィーネのことが怖かった。


ハルナは、こんな幼い子が盗みを働いていることに心を痛めて、ソイランドでのことが一段落したらクリアを廃墟の外に連れ出したいと考えクリアとも約束をしていた、その代わり二度と人のモノを盗ったりしないという約束を。

そんなクリアの怯えた顔にハルナは優しさを含んだ笑顔で返し、気持ちを落ち着かせるために再びクリアの頭を撫でてあげた。




「そっか……そういえば、二人のことお願いしてたんだっけね」





エレーナは、ハルナが先程までとは違う表情に変わったことを感じた。

ハルナたちが町の中を見回ると同時に、クリミオたちには廃墟の中に異変が起きていないか見回ってもらっていた。

ハルナはそこに、気になっていたクリアとチェイルの二人の保護もお願いをしていた。





「それで、あの中の様子は……どうでした?」



「はい。特に変わった様子はございませんでした。何人か見かけなくなったという話も聞いていますが、何せああいう場所ですので、他人との関係は稀薄で……誰がいなくなったかまでは判らないのです」





エレーナの問いかけにクリミオは返答した内容は、考えられた範囲ではあった。

闇の組織の者が廃墟の中に隠れており、ハルナたちが行動した町の外の異変に気付き何らかの騒ぎが起きるのではないかと心配していた。

別な一方で、立場が危うくなってこの町から逃げ出すのではないかという考えもあった。


居なくなった者たちがどのような者たちだったのかは今となっては判らないが、この状況に乗じて攻めてこないことは幸運だったとエレーナは判断した。




「それじゃあ、一度パイン様のところへ戻りましょうか?」




ソフィーネの提案にハルナとエレーナは同意する。




「クリミオさんたちは、これからどうするんですか?」



「いや、特に何も決まってはいませんが……」



「なら、一緒に行きませんか?ステイビル王子とも一度お会いしていた方がいいと思うんで……」



「えぇ!?いいんで……いや、よろしいのですか!?」





ハルナが言い終わるよりも先に、クリミオは驚きの声を上げる。


クリミオからすれば、王子には願っても会うことなどできない遠い存在。

それを目の前の精霊使いは、友人に紹介するかのように面会を提案してくる。

流石のクリミオも、お願いしたいところではあるが本当に会っていいのかという不安に襲われる。

様々な危険な場面を切り抜けてきたはずだが、今までこんなにも惑わされることはなかった。

あの廃墟の中で生きる術を身につけさせられた苦労に比べれば、大抵のことは乗り越えることができる。


それを超えるような選択を迫ってくるハルナに対し、クリミオは尊敬と警戒の感情が入り混じってまともに判断することができなかった。

少し落ち着くとクリミオはハルナの周りの人物の表情を読み取り、この場面をどう切り抜けるべきかの判断材料にすることを思い付いた。

だが、それは何の参考にもならなかった。


エレーナ、ソフィーネ、アルベルト、メリルの顔を見ても、それが何でもないような顔でクリミオの返答を待っていた。




「わ……わかりました。ご、ご一緒させて、いただきます!」



「はい、それじゃ行きましょう!」




ハルナは椅子から立ち上がり、クリアが伸ばした手を握り歩き始めた。











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