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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第四章  【ソイランド】

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4-95 砂漠の施設9








「すみません、姉さん……」



シーモは力の抜けたロイを横に寝かせながら、ソフィーネに詫びる。



この世界で武力や知力がないものは、そのすべてを奪われてしまう。

シーモは、その力と運を持ち合わせていなかった。

本当なら、ロイよりも先に自分の方がこの世からいなくなっているはずだといつもシーモは思っていた。

……だがいま、そのシーモの長年の予測は外れてしまった。





ソフィーネはその言葉に対しては何も言わなかった。

代わりに、その言葉に応えたのがハルナだった。



「ロイ……さんでしたか?お仲間……仲が良かったのですか?」




シーモはロイに対して簡単に祈りを捧げ、凝固した血の付いた手で片膝を支えにしてゆっくりと立ち上がる。




「えぇ……こいつとは小さい頃からずっと一緒で、よくつるんでいました。二人だったから、あんな辛い生活も生き延びることができたんです。それに……こんな俺の面倒も見てくれて……俺たちは本当の兄弟の……ように……」





シーモの言葉は、哀しみに震え最後まで言葉を繋ぐことができなかった。





「いい方……だったんでしょうね」





ハルナは静かに亡くなったシーモの友人のことを称えた。

その言葉にシーモは再び声を殺して、家族だったロイのことを思い出し涙を流す。





「粉のこと……教えてくれたのが、こいつなんです」



「あなたも粉を使っていたのですか?」



「いえ、そうじゃないんです。粉の”造り方”を教えてくれたんです」



「えぇ!?あれは、あなたが作ってたんですか!!」






シーモは教えてくれるきっかけになったことを話し始めた。



あの集団の中では、ある年齢になるとそれぞれが仕事をして稼がなければ生きていけない。

シーモは何のとりえもない男だったが、ロイは違った。

頭の回転や与えられた知識の吸収の速さ、それに手先が器用だった。



そのため一部の者にしか引き継がれない”粉”の製造に役目を回されることになった。

一部の限られたものだけに伝わるのは、その製法が広まりすぎないためだった。

それにより流通量をコントロールすると同時に、選ばれた者しか製造できないという自分たちが生き残るための策でもあった。


だからこそ、その方法を狙っているものは多かったという……それは同じ集団の内外かかわらずに。



だが、シーモはその中に選ばれることはなかった。

今まで一緒に乗り越えてきた二人は、ここで初めて引き裂かれることになりかけた。

その原因は、個人の持つ能力の差という理由で。



シーモは自分の能力の低さを呪った。

いつまでもロイと一緒に生きていくと誓ったはずが、他人の評価によって誓いを破ることになるなど思ってもみなかった。

そんなシーモを助けてくれたのは、またしてもロイだった。


ロイはシーモと一緒じゃなければ、製造部門にはいかないと言ってくれた。

初めはロイの意見は却下されたが、組織としてロイの重要性は無視できなかった。

その結果、最終的にロイの意見が通ることになった。

条件としては、ロイがシーモの面倒を見て一年である程度の製造工程をこなせるようにすることだった。


ロイは知っていた。

シーモも自分が思うほど、能力が劣っているわけではないことを。

性格の問題で、困難から逃げ出してしまう癖があるだけだった。


シーモはロイと一緒に仕事ができることを喜び、死に物狂いで知識と技術を習得していった。

その努力が実ったのか、半年もたたないうちにシーモよりも前にいた者たちより仕事をこなせるようになっていた。


そして、そのことをよく思わない者たちもいた……

シーモとロイは、組織の中で何度も嫌がらせを受けてきた。

だが、それすらも二人で乗り切り、いまは製造の主任の役目も負っている。



その役職についた時から製造の拠点をこの地に移すようになり、敵としていた警備兵と組むことになった。

そして、警備兵側も粉の製造法をロイたちに要求し出した。


この施設に製造拠点を移す際に、製造方法は秘密にするという約束は交わしている。

始めは抵抗していたが、今では強引にその方法を盗もうとする動きも見せていた。





「それじゃあ、先ほどロイさんが言っていた”裏切り”ってそれを狙ってる人……ですか?」



「多分、そうだと思います。だから、俺は真っ先に逃げたんですよ。あいつにも逃げるように言ったんです……だけどあいつは……自分は残ると」




――!!



次の瞬間、ソフィーネはシーモの腕を引き自分の後ろに身を移した。


シーモがいた場所には、ナイフが二本刺さっていた。







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