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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第四章  【ソイランド】

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4-87 砂漠の施設1







「あそこに……メリルさんが閉じ込められているんですか?」


ハルナの言葉にメイヤが頷いてみせる。


それぞれの顔には布が巻かれており、目と鼻の付け根辺りしか出ていない。

そのため相手の表情を読み取ることは、ほぼ不可能となっている。

今はまだ言葉で感情を読み取れるが、これから先は相手を警戒し言葉はなるべく使用しないよう注意をされた。

メイヤとソフィーネはハンドサインによってある程度の意思の疎通が可能となるが、それを知らないハルナはソフィーネの指示に従うようにと言われていた。



メイヤが前回メリルと接触した際と状況は変化している、メイヤが施設へ接近を決断した際に出ていった馬車が再び停車していた。

エレーナとアルベルトが訪れた指令本部か、この施設のどちらかにべラルドがいると睨んだステイビルは、二人の精霊使いを分けてそれぞれの襲撃地点に戦力を振り分けた。

結果として、ハルナたちに”大物”が回ってきた。



緊張しているハルナの気配を感じ、ソフィーネがそっとハルナの背中に手を当てた。



「大丈夫です、私たちがいますから……ハルナさんは作戦通り、大勢の人数が出てきた場合に精霊のお力で数を減らしていただければ」



そう言って、ソフィーネはハルナに水の入った袋を手渡し一口だけ水を流し込むように言う。

ハルナはその指示に従って、一口だけ水を口に含んで乾いた喉を濡らした。



「それでは、よろしいですか?」




その言葉にハルナは頷いて見せる。

急に耳の中に心臓の鼓動が鳴り響き、その音が風の音をかき消す。

メイヤが、振り向き後ろの二人についてくるように合図を出す。

ハルナは腰をかがめた状態で、足元を砂に取られないように気を付けながら二人の背中を追って歩いていく。


目的の場所まではおおよそ三百メートル、普通に歩いて進むだけならわずか数分で到着するような距離。

その間、何も身を隠す物がない状態で、相手に見つからなないように近付いて行く行為は、それだけでハルナの精神を大きく削り取ってく。



目標物が大きくなって、ハルナにも建物の規模や窓の位置が視認できるようになっていた。

幸いにして、ここまで見張りが周囲に出ていることもなく、今まで使っていた無駄な気を返して欲しいとハルナは思った。


だが、その考えも一瞬にして奪われてしまった。

前を歩くメイヤが、”伏せろ”サインを送ってきた。

遠くにいた時よりも近付いているため、相手にも見つかりやすい距離となっている。

伏せたところで、どこまでその身を隠せるか分からないが、ハルナは少し前に位置するソフィーネを真似して同じように身を伏せた。

メイヤが風上の方へ小さな丸い包みを、地面に対し水平に投げる。

自分たちの位置より離れていく包みと、建物の扉が開き一匹の犬と警備する男のシルエットが視界に入ってきた。



――ポッ



遠くからメイヤが投げた包みが地面に落ちた音が微かに聞こえたような気がした。

そこから砂と何かの粉が夜の風に吹かれて舞い上がり、ハルナたちに向かって砂塵のブラインドが出来上がる。

その影に隠れて、ハルナたちの姿は発見されることはなかった。


仕掛けた砂塵が抜ける頃、警備する者もハルナが存在する地面から外れた場所に移動していく。

引き連れていた犬も、まだ鼻が機能していないようだった。



メイヤは、出てきた男が建物の裏の方へ回ったことを確認し再び身を起こした。

それ以上の危険が迫っていないことを確認し、メイヤの合図に従いハルナたちは再び建物に向かって歩き始めた。



それ以降は特にトラブルも起きず、ハルナはついに目標物の建物まで到着した。

ここまで来るともう、ハルナたちの身を隠せるところは何もない。

もしもいま何かが起きてしまった場合には、すぐに戦闘が開始されてしまうことになるだろう。

そう思うと、ハルナの身体は一度だけブルっと震えた。

その思いを感じたフウカは、ハルナの前に出てきて優しく頭をなでてくれた。

お喋りなフウカが声を出さずに、行動だけで示してくれたことにハルナは嬉しくなった。

移動中の馬車で、緊急時以外は声を出さない様に約束をしてくれた。

フウカも、初めて出会った頃よりも随分と成長を感じられる。ハルナは自分と契約をしてくれた精霊がフウカであったことを改めて感謝した。





――ドン!!





大きな音が鳴り響き、それと共に空気と建物が振動した。









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