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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第四章  【ソイランド】

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4-85 指令本部での攻防14








「……クリミオよ。お前たち、俺に力を貸してはくれないか?」




「……はぁっ?あ、あんた……はな、何を言って……」




グラムは、動揺するクリミオの顔を見つめる。

真剣な話であることに気付いたクリミオは、それより先の言葉は止めた。

そのまま、この状況とグラムの言葉の”意味”を理解しようとした。



クリミオは感じ取る……グラムはべラルドとは違うということを。


べラルドも大胆な決断を下すこともある。

しかしそれは、自分の”欲”がかなり優先された決断が多かった。

クリミオはその決断に不安を感じることが多く、いままで何もなかったのは運が良かったという分析だった。


べラルドに対し、誰も文句を言える者がいないということが一番の要因だった。

その裏でべラルドに対して積もる不安が積み重なっていることが多いのは、クリミオも含めた他の部下や住民も同じように感じていただろう。

それでも行動に起こせなかったのは、べラルドの圧力が強いと感じていたからだった。


しかしいま、グラムのこの言葉はべラルドの発する言葉とは違い、全てに意思が通った力が込められた言葉だった。

クリミオの中ではそれだけでも信用に値するが、相手に協力だけしてその見返りを貰えなかったということは、若い頃に一度経験をした。

それ以降は、協力する際には同じ価値の交換条件を提示した。

今回もグラムに……クリミオの勘だが、この町をべラルドから取り返すために貸す力と同じ価値を提示しなければならない。

今まではその条件を付きつけると、協力の破棄だけでなくこちらに対して攻撃を仕掛けてくる者もいた。

そういうやつらは、大抵自分たちを利用するだけしか考えていないものたちばかりだった。

べラルドは力で押さえつけることもせず、副司令官の地位まで与えてくれた、それはクリミオたちにそれだけの価値を見出してくれていた証になる。


反対に過剰な見返りを提示しては、契約としての機会を失ってしまうことになりかねない。

その交渉相手が無理難題を吹っ掛けてきたときや、初めから交渉する気がない場合には初めから無茶を言っても良かった。

だが、それを相手が飲んだ場合のことも考え、そのことを伝えなければならない。


交渉はこちらと相手のメリットとデメリットのバランスも考慮しつつ、最適な対価をそのチャンスを逃さない時間で提示する必要がある。

勿論、一度持ち帰って時間をかけてその案を考えても良かった。しかし、それはチャンスを逃すことになることもあった。

それに”この程度の”ことを即決できない交渉相手という烙印が押され、交渉の立場が悪くなったことも何度かあった。

いまその交渉をこの場所で可能にするのは、クリミオだけだった。

クリミオの背中に、周りにいる男たちの視線が突き刺さる。





「……わかった」



クリミオはまず、その交渉に”乗る気がある”ことを提示する。

まだ、頭の中で交渉の材料はまとまっていなかったが、いくつかアイデアは浮かんでいる。


幸いにして、グラムはその言葉に何も言ってこない。

クリミオは、グラムにまだまとまっていないことは悟られてしまっているだろうと考えた。

だが、グラムはそれに対して自分に優位になるように攻めてこない。これはクリミオに対して悪い印象を与えたくないという考えがあるのだろう。

その思いを利用させてもらうことにする。普通ならそろそろ条件を提示しなければならない時間だが。クリミオの中ではその時間はとうに過ぎている。

だが、立場的にこちらが優位であると考慮しその時間を含めて使用し考えを纏めあげた。



「では、こちらから提示する条件は二つあります」



当然だと、グラムは頷いてみせる。




「……まずは我々の身の安全を約束してください。当然、今までのこともこれからのことも含めて」



エレーナが何かを言いかけたが、アルベルトがそれを制しクリミオの言葉の続きを待つ。




「次に、ベルの捜索の許可と力を貸してほしい。それは、警備兵とこの町を治める大臣の両者からだ。俺たちの力を貸すということは、俺たちはベラルドを裏切ることになるんだろ?警備兵としては協力したことになるが、大臣に関しては俺たちは何のつながりを持っていない。この一件が終わったらすぐに別の件で捕まってしまうなんてことはゴメンだ。……だからこそここでその両者からの協力と身の安全を約束して欲しい」



「もし、この一件が終わればそうなるように”努力”はしよう。だが、この騒動が終わった後にこの町がどのような体制になるのかもわからん……お前たちを助けるよう努力はするが、私の力でどこまでできるかは……」






「ふーん……その件、私たちがステイビル王子に頼んであげてもいいわ」



エレーナが二人の間に割って入った。








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