表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第四章  【ソイランド】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

503/1278

4-49 真夜中の面会







「初めまして……コージー・ロースト殿。こんな夜分遅くに申し訳ない」



「誰……だ?」



コージーは、自分の名前を呼んだ若い男の声に目を細めてその姿を確認する。

この顔の形や声……比較的記憶に新しい場所に思い当たるものがある。




「ま……まさか、あなたは……ステイビル様!?」



「改めて夜分の訪問、申し訳なく思う……だが、少し事情があってな」




ステイビルは後ろを振り向き、複数のシルエットに目を配りコージーに状況を理解してもらおうとした。

コージーもそのステイビルの視線の後を追い、夜と建物の間で作られた闇の中に人影を数え、王選に付き添っている人数よりも多い数の人影がステイビルの後ろに並んでいるのが見えた。


自分の持つ情報と推測との類似点が多いため、安心をして話を先に進めることにした。





「いえ、何をおっしゃいますか!?……こんなところで申し訳ございません、ここは私の作業場でして……ビトー、応接室にお通ししておきなさい。準備が終わったら私もすぐに向かう」



コージーは、腰に下げていた数枚の板を、ビトーに手渡した。

ビトーはそれを両手で受け取ると、懐の中に大切に仕舞った。



「了解しました、コージー様……それでは、ステイビル王子。こちらへ」




ビトーはステイビルたちの背後に向かい、いま来た道を戻っていく。

月の明かりか建物の中に向かうせいか、向かう方向が違うだけで先ほどよりも見通しが効かない暗闇の中を進んで行く。


先程は横切った倉庫の壁の途中、ランタンの明かりの中に照らされた小さなドアの前で立ち止まる。



ビトーは懐からコージーから預かった三枚の板を取り出し、扉の左右の壁と扉の取っ手の上にある場所にその板を垂直に差し込んでいく。


ハルナはそのカギに、懐かしさを覚える。

小さい頃連れて行ってもらった銭湯の鍵がこのタイプの鍵で、いわゆる”松竹錠”と言われる仕組みのものだった。

松竹錠よりは複雑な構造をしており、板も壁の中に入れ込むことによって不正に解錠させないような仕組みをとっていた。



――カチャ……ギィ




鍵は開かれ、倉庫の入り口の鉄の扉が開かれる。



中へ入るとそこは、倉庫らしく規則正しい法則に従って商品が並んでいた。

日用品や食料品の他、旅に必要な防具や武器なども壁に掛けられていたり棚に並べられていた。


ビトーは、ハルナたちが倉庫の中に見とれていることを気遣いながらゆっくりと歩を進めていく。

その後ろからは、”はぁ……”や”凄い……”といったため息にも似た声が聞こえてきていた。


ビトーは壁の突き当りにあるガラス張りの部屋の扉を開け、ステイビルたちをその中へ案内する。


倉庫の上には窓が並び、日中ならそこから光が入り込みこの部屋も明るく照らしてくれるのだが、夜中ではやはり明かりを点けなければ何も見えない。

ビトーはランタンの炎をろうそくに移し、壁に掛けてあるオイルランプに一つ一つ火を移していった。


部屋のランプを全て点灯させると、部屋は見渡せるくらい明るくなった。



「では、椅子にお掛けになってお待ちください」


それぞれが、あらかじめテーブルに用意されている椅子に座っていく。

クリアは既に睡眠が我慢できずに、ハルナの胸の中にうずくまるように抱えられて眠っていた。



それとほぼ同時にまたあの鉄の扉が開くのが見え、コージーが整理されている棚の間を通り抜けてこちらに向かってくる。

その姿は先ほどとは異なり、目上の者と会うための最上級の服装で現れた。



「……ステイビル王子。遅くなりまして申し訳ございません」




「いや……事情があったにせよ、こちらこそこんな遅くの訪問、申し訳なかった……それにしても、ここはすごいですね」



「王子にお褒めいただけるとは光栄です……この地域の特性でしょうか、実物での取引が重要になってきておりまして、こうして数量をそろえておかなければならないのです。それに……」



「……それに?」



「……それに。これだけの物量をそろえると、見栄えも随分と良いでしょう?交渉相手には、これくらいの量があるとこちらを安心していただける説得する材料にもなるのですよ」



「なるほど……それでこの造り……か」




ステイビルはこの会議室のような応接室の壁が透けて見える壁にしているのだと理解し、コージーもその考えで間違いないことを笑顔で答えた。




「今回、お急ぎのご様子……一体何があったのですか?」



「そうだ……この手紙、これはコージー殿が書いたもので間違いないか?」



ステイビルはコージーに、開封済みの手紙をテーブルの向かいに座るコージーに差し出した。

コージーは差し出された、手紙を受け取り蝋封の紋章を確認する。

それはまさしく、ロースト家のものであると判断した。



「そうです……無事にグラムの手に渡り、それどころか王子にまで来ていただけることになるとは思いませんでした」




「コージー・ロースト殿、教えてもらえますか?今この町で何が起きているのか……を」




「もちろんですとも……ステイビル王子」



そう返事をして、コージーはこの町の現状を語り始めた。











評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ