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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第四章  【ソイランド】

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4-48 不信者




目の前の警備兵は、この町にいた他の者と装備が違っている。

道具も独自の物を使用し、胸に付いているマークも王国のものではなく独自の模様が描かれている。




ステイビルはそんなことを頭に思い浮かべていると、目の前のリーダー的存在の男が自分の記憶の中の何かを必死に引き出そうとしていた。






「ステイビル……ステイビル……ステイビル……エンテリア・ブランビート!?ま、まさか……王子!?なぜ、こんなところに」






リーダーの男が目の前の男を”王子”と認識すると、その周囲からもざわめく声が聞こえ始めた。

だが、向けられた槍などの矛先は降ろされていない。

それはリーダーがまだ、”下げて良い”と命令していないためだった。


それに思考のどこかで、”王子の名を語る偽物”ではないかという疑念が消えていないこともあった。

目の前の物が命乞いのために、要人の名を語ることはよくあることだ。

その言葉を迂闊に信じれば、自分自身や仲間の命が危険な目に合うことは過去の経験から学んでいる。

その人物が仮に本物であったとしても、自分たちが警備している範囲で怪しい行動を取ること自体が問題なのだ。




(いつものように少しけしかければ、そんな相手はすぐにボロを出す……)




今できる最善の駆け引きを、リーダーの男は王子の名を語る男に吹っ掛けてみた。





「……ふん、王子の名を語るとはな。今までで初めてだよ……だが、お前は知っているか?王子たちは今王選の旅をされている。王子が……こんな町に来るはずなどない!」





その言葉に、ステイビルは感心する。

相手の言葉を鵜呑みにせず、疑い自分の確証が得られるまでは気を抜かない。


僅かながらに違うようだが、この者が国の警備兵だとすればこの町にも”まとも”な考えを持つ兵もいることに安心した。




「……そうだ。我々はいま、王選の最中にある。それに、この町・・・・も王国の主要都市のひとつとして、旅の途中でも立ち寄るというのは……ごく当たり前のことだと思うが?」





ステイビルは威嚇することもなく、優しさと相手の仕事に対する姿勢に敬意をもって語り掛けるように言葉を投げかける。




「……それに、この前キャスメルたちもこの町に寄っていると聞いたが?その時にここには来なかったのか?」




リーダーの男は、相手が自分が知っている情報を持ち出してきたことに驚き判断に困っていた。

ただ、この目の前の人物を王子だと確定する判断材料が何もなかった。

この場所と仲間を守ることが仕事であるが、今までにない状況になっていま自分に足りないものがわかった気がした。




「”ビトー”……もういいだろ?このお方は、”ステイビル王子”……本当のな」



「――ぐ、グラム隊長!!」



「よせ、もう私は隊長ではない……王子申し訳ありません、こいつが犯した失礼につきましては私が責任を……」



「いい、グラム。誰も悪くはない……この場所を守ろうとする”仕事”を行っていただけなのだからな……なぁ、ビトー?」






そう声を掛けられたビトーというリーダーは、その場に片膝を付き敬意を表す姿勢で頭を下げた。

その動作を見て今まで槍を構えていた者たちも槍を自分の横に置き、膝を付いて同じ姿勢を取った。

この姿勢は今まで見たことがない姿勢だったが、自らのリーダーが行う行動に従うことが最善と判断したのだった。




「それで改めてお願いをしたい……ロースト家の方と面会したいのだが、取り次いでもらえるか?……ビトーよ」



「はっ!ご案内いたします!」





ビトーは手にした槍を近くにいた部下に手渡し、ランタンをもう一つ手にする。

そのランタンはグラムに手渡され、列の途中も明かりが照らされるようにした。


ステイビルたちはビトーの後ろについて行き、倉庫の壁に沿って歩いて行く。


店と倉庫の間に小さな小屋のような建物が見えた。

ステイビルは、自分たちは一度警備兵の詰め所に行くのだと思っていた。

だが、ビトーはその場に立ち止まり自分の主人の名を呼んだ。




「……コージー様!コージー様!」





深い夜の静けさの中、それに似合わない大きな声量で主の名を呼ぶ。

ビトーは姿勢を正し、主が姿を見せるのを待つ。

その勢いに感化され、ハルナも背筋を伸ばしてその時を待った。




――カチャ



扉の向こうで鍵が外される音が聞こえた。


呼び出してから、案外早く応じてくれたのは小屋が狭いためかまだまだ起きて何か仕事をしていたのだろうとステイビルは推測する。






「……どうした、ビトー。何事ですか?」




警戒心もなくすんなりとドアを開けたのは、実は呼び出す声の高さと回数で緊急時や危険な事態かなど何種類か決めていると後で聞いた話だった。



「コージー様、お仕事中申し訳ありません。コージー様に面会したいと……」




「面会?……こんな時間に?」



そういうと、コージーはランタンに照らされた明かりで見える人影の数を数えた。

だが、ビトーがここまで通してきたということは、本当に重要な出来事だと判断した。

思い当たることはあったが、想像している人数よりも人影が多く小さな子供の姿もある。




「初めまして……コージー・ロースト殿。夜分遅くに申し訳ない」



少し上からの挨拶をしてきた者を目を細めて、コージーはその者の姿を確認した。










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