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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第四章  【ソイランド】

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4-42 僅かな違い






その時グラムは見ていた、魔物が”なぜか”ユウタだけを外して攻撃していることを。

当時に起きた襲撃時に感じた気になる点をいくつかユウタに確認していった。


だが、全ての質問に対してユウタの言葉は――”何も知らない”だけだった。


本当に知らないのかどうかは、グラムにはすぐに分かった。

この手のごまかしには、独特の言葉の色がある。

その色は何らかの事情により、ユウタが何かを隠していることがあるということが伺えた。





グラムはこの場所に入ってくるときに、厨房のような場所だけはきちんと整理されているのが見えた。



(自分の仕事に関わる場所を大切にするものが、悪いことを進んで行うことは考えられない……)



この建物に入った時から、グラムはユウタのことを信頼していた。

それに、ブロードだけでなく今ここにいるチェイルにも調理を教えているようにも見える。


そんなユウタが本当に悪いことを考えているとは、多くの者から信頼され人材を育ててきたグラムの目には見えなかった。



どのような質問に対してもまともに返ってこないユウタにグラムは、最後に一つだけ嘘をつかずに答えて欲しいとお願いした。


その気迫に押され、ユウタは正しく答えることを約束する。

その言葉で今までの嘘がバレてしまったと思わなかったのは、ユウタは自分の暢気な性格に救われていた。



出された貴重な飲み物を口に含み、時間を空けてグラムはユウタに最後の質問する。



「あの魔物は、町の警備兵の誰かからの差し金だったのか――」と。



その問いに関して、ユウタは安心して否定をすることができた。




その答えを聞いて安心したグラムは、ユウタに力を貸して欲しいと伝えるが、ユウタはそれを断った。

グラムはユウタが魔物と関係性を持っている可能性が高いと考え、町を救うためには魔物の力も借りることも考えていた……この身を魔物に売り渡したとしても。







「……そして私は、グラムさんに協力を申し出ました。私も……この町を変えていきたいと思っていたんです」



そういうと、チェイルは横を向いてハルナに抱かれた落ち着いたクリアの寝顔を見つめる。



「ふむ……そういうことか。で、いまグラム殿はどちらに?お……お一人だけなのか?」




ステイビルからの質問にチェイルは視線を前に戻し、ステイビルの質問に応じた。




「はい……グラムさんはいま、お一人でいらっしゃいます。ですが、すぐにご案内することは難しいです。最近、変な奴らが増えてきてグラムさんを狙っているのです」





「狙われている?……グラム殿が?……いったい誰に?」




ステイビルは、矢継ぎ早に質問を重ねていく。

その怒涛のような質問に、チェイルは戸惑いの表情で声の出ない口だけが動いている。



「……ステイビルさん」



ハルナは腕の中のクリエを起こさないような優しく語り掛ける声に、ステイビルは正気を取り戻す。



「す……スマン。申し訳なかった、チェイル」



「い、いえ。大丈夫です……」



「……それで、変な奴というのは?」



「はい……いまグラムさんが身を隠しているところに、今までこの周辺では見たことのない人物の姿を見るようになってます」



「だが、それは何というか……その”新しい”住人なのではないのか?」






ここには様々な人が、様々な事情でこの場所に流れ込んでくる。

ここから出ていくも、入ってくるのも自由な場所だ。

弱肉強食の世界ではあるが無駄な争い事はしないし、基本的にはお互いの縄張りを荒らしたりしないという暗黙のルールがある。


チェイルが言うにはそこの場所は、誰も入ってこれないようにグラムが怪しまれない程度な間隔で既に住人を配置していた。

だが最近、いつも似たような人物がその周囲を何かを探るように、徘徊しているのを見かけているらしい。





「うむ……それだけか?何か他に気付いたことはないのか?」




ステイビルの中では、もう一つ何か決定的な証拠が欲しい……そう感じていた





「……あります。その人物の格好が、ここの住人とは明らかに違うのです」



(何かこの場所に住まう者たちが身に付けている印でもあるか?)





ステイビルは、自分たちの変装もそれによって見破られていた可能性があることを反省した。




「違う……明らかに?」





ステイビルはその答えを恐る恐る問いかけた。





「それは……”服装”と”臭い”です」





ステイビルは、チェイルの話に納得した。

自分たちも薄汚れたローブを纏って身を隠しているが、いくらその中が汚れていると言っても、この住人たち程汚れているわけではない。

臭いに関しても、エレーナが水の精霊使いのため飲食用も含め、気にすることなく身を清潔に保つために水が使える。

ここの住人……この町の住人は通年を通し、水が不足している。

町の中で暮らす人々は体臭を消す香などをよく使っているが、この廃墟の住人にはそんな高価なものは手に入らない。

よって、ここの住人には独特の体臭を放つ者が多い。


チェイルはその者には、それらを感じないとステイビルに伝えた。




「なるほどな……チェイル。すごいぞ」



チェイルは、褒められて驚いた。

これだけ凄い人たちと旅をしているリーダー的存在に褒められたことは、光栄なことではないかとチェイルは感じた。



「よし、まずはグラム殿にどうすれば安全に会えるか……そこからだな」




ステイビルの言葉に、ハルナたちは頷いた。









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