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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第四章  【ソイランド】

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4-40 カバンと命






「わ、私の…私の大切なお金を盗られたから……!!!」





クリアはハルナに聞かれた質問に対し叫ぶように答えると、両手で顔を覆い大声で泣き始めた。

決してこれはこの場を逃れるための偽る演技ではなく、少女のある記憶の中から湧き出た悲しみだということは、事情を知らないハルナたちにも感じ取れた。




泣き叫ぶクレアをハルナは、優しく両手で胸の中で抱きしめた。

クリアはその行為に抵抗することなく、包まれた安心感に先ほどまでの自分の愚かな行為を詫び泣き続けた。



ハルナは、クリアを抱きかかえ背中を優しく心地良い一定のリズムで叩く。

感情は次第に落ち着き、クリアはハルナの胸の中で泣き疲れて眠った。



ハルナたちは、チェイルとクリアを連れてユウタのいた建物に戻ることにした。

ステイビルはソフィーネに、チェイルを見つけたため、もう一組を探してくるように命じた。


まだ、クリアはハルナに抱かれて眠っている。

そこで ハルナはクリアのことについて尋ねた。











クリアがこの地域に来たのは、一年程前……警備兵の足元で泣いているところを保護したという。

落ち着いた頃にどうしたのかと尋ねると、先ほどと同じように「お金を盗られた」と繰り返していた。




クリアは母親が見知らぬこの地域の入り口で”すぐ戻ってくるからここで待っているように”と言われたという。

その際に、肩から掛けた小さなカバンにお金の入った袋も持っているようにも言われていた。



だが、いつまで経っても母親は戻ってこない。

日が暮れ、夜になっても母親はクリアの元に帰ってこなかった。

泣きながら母親を呼び、見知らぬ町の中を小さな足で歩き回る。

寒くなり、喉が渇いてもクリアは自分の母親を探し続けた。



そこで、ある女がクリアに話しかけてきた。

”どうしてこんな時間に一人でいるのか――”と。



クリアは事情を説明し、母親を一緒に探して欲しいと女性に頼んだ。

その女性は、承諾しクリアの手を繋いで自分の住む家に着いてくるように誘われた。

困っていたクリアは、何も疑うことなくその女性の後を付いて行く。

乾いた喉に水と、干からびたパンを分けてくれた女性に安心したクリアは、女性に言われるままに従った。




『今日はもう遅いから、もう寝なさい。明日いっしょに母親を探しましょう』




クリアはその言葉に従って、用意してくれた敷物の上で眠った。



朝、目覚めると身体に掛けていたカバンが無くなっていることに気付く。

昨夜泊めてくれた女性も姿を消していたので、クリアは建物の外に出て協力者の女性を探しに行く。


探していた女性はすぐに見つかった……無残に変り果てた姿をして。



着ていた服はつかみ合いの際に引き裂かれたのかボロボロになり、うつぶせに倒れた手にはクリアが掛けていた小さなバックの紐を握りしめている。

紐の先にあるバックは口が開き、全てのものを持ち去られた形跡がある。



現場検証をする警備兵は、足で女性の身体を表に返す。

その顔は殴打により顔が腫れあがり、その人相は元の顔を識別することが難しいくらいの状態だった。



クリエは初めて見る人の変わり果てた姿に、その場に座り込んで動けなかった。

次の瞬間に身体が自然に動き始める。



警備兵が、女性が掴んでいた手からカバンを奪った。

クリエは母親と繋がっている唯一の持ち物を返してもらおうと、警備兵の元に向かっていった。



ここでも自分の行動に対し、大人が壁となり立ちはだかる。





「か、返して!それは私の……」



「なんだお前は?ちょっと綺麗な服を着ているようだが……それをどこで盗んできた!?」






クリエは警備兵から、髪の毛を掴まれ引き上げられる。

今までにこんなことを誰かにされたことは一度もない……



痛みよりも、何よりもあのカバンを何とか手にしようと必死にもがく。

その動きによって頭皮から髪が抜ける嫌な音が耳に入ってくるが、あのカバンを取り返そうと必死に抵抗する。

その手が警備兵のヘルムの中に入り、目に痛みが走る。





「――コノぉっ!?」





警備兵はクリエを、掴んだ髪の毛だけで地面に投げつける。

打ち付けられたクリエは、子供らしからぬ声で痛みの声をあげる。

うつ伏せになったクリエを、警備兵は足で背中を踏みつけた。

足の裏に伝わる無駄な抵抗を感じ取りながら、ゆっくりと腰に下げた剣を引き抜く。





「警備兵に手を挙げた……覚悟は出来てるんだろうな!?」






そう言いつつ警備兵は剣を片手で振り上げる、周りの警備兵もその動作を誰も止めようとはしなかった。





「あばよ!!」




そう言いながら警備兵は剣を振り下ろそうとした時――





――ガン!!!!





被っていたヘルムに、横から強い衝撃が加わる。

その衝撃によって、目の前が一瞬白くなり男の意識は薄れる。


その隙を見計らい、チェイルは足元からクリアを助け出した。




「――ッ!追え、チェイルだ!!奴を逃がすな!!」





チェイルはクリアを抱えて走るが、クリアはまだカバンを取り戻そうとした。





「止めて!!あのカバン!!あのカバンを!!!」



「バカ!カバンより命の方が大事だろうが!!」




そういってチェイルは廃墟の中を、警備兵たちでは追いかけてくることのできないルートでその追跡を振りクリアを助け出した。










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