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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第四章  【ソイランド】

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4-37 嫉妬







「そこから、メリルとは直接会えず連絡がつかないのだ。精霊使いとなったことを知ったのは、王選が始まる一年程前だな。その時は既に水の精霊使いとなってソイランドに戻っていると聞いていたんだが」




「この町では……お会いできていないんですか?」





ハルナの問いかけに対し、ステイビルは少し寂しそうに頷いた。




ハルナはここで、元の世界に残してきた妹のことを思い出してしまった。

姉のことが大好きで、小さい頃はいつも慕ってくれて傍に寄って来てくれていた。

ハルナもそれが嫌じゃなく、好かれることが嬉しくて何をしていても構ってあげていた。



会ったことはないが、小さなステイビルとキャスメルが懐いてくることが話を聞く限りでは嬉しかったのだろう。

小学校のとき、一人っ子だった友達が遊びに来たときに妹が可愛くて持って帰りたいと本気で言っていたことを思い出す。


メリルという女性も、弟ができた感覚でステイビルたちと接していたのではないかとハルナは心の中で思った。







「あの食事の時には何も言ってなかったのですか?」



「あぁ、以前と違い余所余所しいというかまるで接待の様子ではあった……が、あの言葉が、あの時の中での一番の本音だと私は思っている」




そう発言したステイビルの目に、力が入りこれからの行動を決断したかのようだった。

今までの話を聞いてきたハルナたちも、同じ気持ちになっていた。





「……そうと決まれば、一刻も早く動きましょう!」





エレーナが意気込んで立ち上がるが、ステイビルがまたしてもエレーナを一旦落ち着かせた。





「ちょっと落ち着くんだエレン……気持ちはわかるが、事はそんなに簡単ではないんだ」



「そうよ、エレーナ。まだ誰がターゲットかも分からないし、どこまでがこの町で繋がっている人かもわからないんだから……迂闊に動くともみ消されたり、こちらが不利になるばかりで誰も助けられなくなるわ!」



「お……おぅ」





エレーナは驚いて、気の抜けた返事をする。

いつもぼーっとしてあまり考えていないようなハルナが、自分よりも冷静に今の状況を分析判断していることに驚きが隠せなかった。





(ちっ……)




この気持ちも以前のような精霊の気持ちから流れてきた憎しみの感情ではなく、まんまとこの場では一本取られたという軽い気持ちから出た感情だった。





「……エレーナ?」




「え?……あ!そ、そうね……まだことを起こすには、早いわね!?……わかってたわよ!……わ、私だって」





しょんぼりするエレーナを、アルベルトが後ろから優しく両肩に手を当てて一度座るように促した。




「……そうだ、ハルナの言う通りだ。まずは、この町の状況を整理していこう」





ステイビルが、現状を纏め次のような項目を並べた。




 一 ――この町に入ってきた時、チェイルは水を盗んで追いかけられていた

 二 ――チェイルとハルナの知り合いであるユウタはあの日以来、消息不明

 三 ――ステイビルに助けを求めてきたのはパイン・チェリー、このソイランドを治めている大臣

 四 ――パインには水の精霊と契約している一人娘のメリルがいるはずだが、現在は消息不明

 五 ――ブンデルとサナを襲った者達は、町の警備兵とも繋がりがある

 六 ――その者たちの拠点は町の外れ、ガラヌコアに行く途中にある

 七 ――闇のギルドにいた殺されたランジェがガラヌコアとメッセージを残していた






ステイビルは、ハルナには申し訳ないと断ったうえで”二”については今は後回しということになった。

この町の異常な状態を優先にした場合、ユウタは現時点では個人的な問題となるため優先度はそれよりも落ちる。


メリルやパインのことも気になるが、聞き取りを行ったとしても周囲には敵対勢力がいる可能性が高い。その場合にはパインが怪しまれ、最悪パインの身に危険が迫ることになる。

よって ”三、四、五”についても、現時点ではまだ直接的な動きは避けた方がよいという判断になった。

その決定にステイビルは若干悔しがったが、ハルナもユウタのことを我慢しているため自分だけの気持ちを優先することはできなかった……自分に付いてきてくれている者たちの安全も重要なのだ。




残されたものは、ガラヌコアとソイランドの現状の情報収集。

これらを、どのように行っていくかが話題になる。





「誰か……協力してくれる人がいればいいんだけど……」


「そんなこと、誰だってわかるわよ!その”誰か”を探すのが大変なんじゃないの」





エレーナが、ハルナの発言に対し嬉しそうに返す。

先ほど自分では思い付かなかったことをハルナが発言したことが少し悔しかったようで、このタイミングで反撃にもならない反撃を返した。



ハルナはそのエレーナの言葉に、何かがひらめいた。





「”探す”……といえば、チェイルさんはあの日以来会ってないんですよね?」





その問いに対し、ソフィーネが頷いて答える。


メイヤが尋問をして襲撃を受けた時、サナとソフィーネはメイヤの指示でどこかに隠れていた。

その隠れ場所は、廃墟を選びチェイルのことも気になり探していた。

だが、チェイルはユウタのいた場所には戻っておらず、見知らぬ町ではどこに行ったのか見当も付かなかった。





「チェイルさんは最初、水を盗んでいた……この町ではあれ以来、誰もそういうことをしていないわよ。だとしたら、チェイルさんは今の町に抵抗する気があるんじゃないかしら?」





食事は夕方になれば、廃棄物の回収する時間が認められている。

それ以外の時に、そういう行動を取っていたというのがハルナが気になる理由だった。





「……よし。まずはチェイルを探そう。そして、協力してもらえそうな人がいないか当たっていこう」





ステイビルの言葉に、一同が返事をする。

エレーナはまたハルナに、一歩前に出られた感じがした。










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