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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第四章  【ソイランド】

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4-35 不穏分子







「それでは、我々はこれで」


「……はい、有難うございました」





ハルナの言葉にもう一度こちらを見た警備兵は、再度一礼をし部隊の待つ人の塊の中に帰っていった。



ハルナの後ろでは、エレーナはサナとブンデルになだめられている。

しかし、エレーナが怒ることも当然だった。


実際に見ていたのはメイヤ一人、その間サナはメイヤに言われてソフィーネに守ってもらいながらこの場所から離れてもらっていた。

しかもメイヤも、ステイビルたちもこの町の人間ではないためそこまで深くとりもってくれなかった気がした。



最終的に警備兵がこの襲撃に対して下した結果は、”事件性はない――”だった。

それには、こちらが黙って人質を持ってきた罪を責めないための”痛み分け”の意味も含まれていたのかもしれない。

そこからも町を護るべき警備兵が、反対の者たちに手を貸しているような判断がエレーナには許せなかった。


ステイビルはエレーナの横に立ち、窓から警備兵たちが仕事の緊張感もなくニヤニヤしながら退却していく様子を静かに眺めている。

ハルナは、無表情だが感情が溢れそうなステイビルの傍に近寄り声を掛ける。





「ステイビルさん……」



「ん……あぁ、すまない。ちょっと考え事をしていたんだ」





ステイビルはハルナからの声に対し、明らかに何かを誤魔化していた。

だが、少しハルナはこの場の空気を見計らい次の話題を持ち出す。




「そういえば、メイヤさんはどうしてここに?」



「はい、それは……」




メイヤは、王国であったマーホンのこと……ラヴィーネで聞いたエストリオとアーテリアから聞いた話をステイビルたちに聞かせた。




「えぇ!……マーホンさんが!?」




その話を聞いて驚くハルナに対し、マーホンは無事であることを重ねて伝える。

心配で早くなったハルナの鼓動は、少しずつ収まりつつあった。




「……そのようなことで、ステイビル様たちに危険が迫っていると思い情報とお手伝いに参った次第です」




話を聞き終わったステイビルは、表情こそ変わらないが目の奥に複雑な感情が生じたことをハルナは見逃さなかった。

そのタイミングが最善と踏んだハルナは、ステイビルに気になっていた話を切り出す。





「ステイビルさん……今回の件、先ほどのパインさんという方と"内緒"で話をしていたことと何か関係があるのですか?」



「そうだな……バタバタとしていたため話すのが遅くなってしまったな」





そういうと、ステイビルは全員を自分の周りに集める。

初めにその場にいなかった、ブンデル、サナとメイヤにあの場所で何があったかを説明する。

過剰なほどの接待を受け、席は二組ずつ用意され、ステイビルはパインと席を共にしていた。


宴も終焉に差し掛かったとき、パインはある話をステイビルに対して告げていた。

それは、二人だけにしか聞こえない様にして行われた。




「その時の話としてパイン殿から聞いた言葉は……”助けて”だ」




「――え?」



「た、助けて……ですか?あの表情からは、そんな風に……」



「そんな風に見えなかったか?……だろうな、バレればパイン殿とその娘に危害が加わることになりそうだからな」



「ま……まさか!?」



疑うハルナとエレーナだが、ステイビルがそういう嘘や冗談をいう人物ではないことは知っている。

しかし、それでもあの雰囲気で助けを求めるとはハルナは頭の中で入り乱れる情報と情報の糸が感情の風によってかき乱された。




「でも……でもですよ?ステイビルさん、あの時”もし、断ったら”と聞いてましたよね?それって、普通、悪い頼み事を断る時に言うんじゃ……ないんですか?」





「そうだな……だが、もしもあのメイドの中にパインを”監視”している者がいたとしたら?」



「「……!」」



あの場所からは、ハルナたちにも会話の内容は聞こえなかった。

音楽の演奏もあり、壁に沿って立っていたメイドたちにはその内容は聞こえるものではなかった。


それでもステイビルは、パインの言葉を信じたのだろうか。

ステイビルの言葉は監視している者が、パインとの内緒話の内容を怪しまれない様にしたのだとハルナは理解した。

その思いに賛同するかのように、ソフィーネが言葉を繋げる。




「確かに……この町からしてみれば、我々が”不穏分子”なのでしょうからね」




メイヤがソフィーネの顔を見て、『あら、やるじゃないの』という顔で見る。

ソフィーネはその視線を感じていながらも、あえてメイヤのことを意識に上がらないように怒りと共に抑え込んだ。




「だとすれば……この町にも味方となる者もいる可能性もあるんでしょうか?」



「あぁ……そうだなアルベルト。しかし、何者かの力によって抑えられている可能性が高いため、その者たちを探し出したり協力を仰ぐのは”今の段階”では難しいだろうな」



「あの……もう一つお伺いしてもいいですか?」



「ん?どうしたハルナ?」



「あのパインさん、助けてっていうことですが”何を””何から”助けて欲しいんでしょうか?メイヤさんを襲った者たちですか?」



「……それなんだが、一つ気になっていることがある」



「……それは?」



「パイン殿には一人娘がいたはずなのだが、今までその姿を見ていないのだ」











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