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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第四章  【ソイランド】

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4-33 水の思惑







ステイビルは、エレーナとハルナとアルベルトとブンデルをを連れて火事の現場に向かっていく。


それ以外の人員は、この場所が狙われる可能性があることを考え、人質を守るためにこの場に残ってもらった。






「――行くぞ!」





その掛け声とともに、四人はステイビルの後を追いかけていく。

宿の裏に止めていた馬車に乗り込み、火の手があがる場所に向かってアルベルトは馬を走らせた。


その途中、目的地周辺から逃げてくる者たちや、役割として決められた消火員がその流れに逆らいバケツを両手にして向かっていく者たちの姿を見かけた。

ステイビルは、バケツを手にし向かっていく者たちの様子を見て不思議に思うが、今は一旦忘れることにした。


馬車を現場の近くで止め、アルベルトには馬車を守るためにここに残ってもらった。



ブンデルを先頭にして、ステイビルたちは拉致されていた建物に向かっていく。

その場所は、ステイビルたちが思ったように火災が起きている場所だった。





「……証拠を消しに来たのか?」



「それじゃ、マズいんじゃないんですか?私が火を消しましょうか!?」



「いや……待ってくれ、エレーナ!」






建物の近くに行こうとしたエレーナを、ステイビルは呼び止める。







「どうしたんですか?早くしないと、燃えて何も残らなくなってしまいますよ!?」



「証拠は……もう何も残ってないだろう。それより、エレーナの身に危険が迫る気がするんだ」



「え?それは……どういうことですか?」



「この町には、精霊使いが少ない。その理由はわからないが、町で制限をかけている可能性もある。特に水の精霊使いは、いないのではないかと思う」



「そういえば、水の精霊使いがいれば水不足の問題も解決するはず」



「そうだ。グラキース山の麓の村のようにな」



「この町の出身のカルディさんも水の精霊使いだったわよね?今はキャスメル王子と一緒にいるんでしょうけど」



「だから、いない訳ではないはずなのだ。そこで思い浮かぶのが、水の精霊使いの排除だ」



「あぁ……この枯れた土地の水の権利を抑えるためにですか?」





エレーナのたどり着いた答えにステイビルは頷き、エレーナも先程止められた理由を理解した。

水の精霊使いという事がバレてしまうと、排除される可能性が高くなると判断した。






「そうだ……今はその可能性が高いと考えている」



「ってことはエレーナが、水の精霊使いってバレたら……?」



「”排除”の方向で扱われるだろうな、たぶん」



「……ふん!悪いこと考えてるやつらになんか負けはしないわよ、私は!!!」





エレーナは目の前で握りこぶしを作って見せて、気合充分とステイビルにアピールする。

そして振り返り、火災の現場に向かって歩き出そうとするエレーナの肩を掴みステイビルが止める。





「待て!エレーナ!!早まるな、それにその火事はアイツらにとって、”我々を誘き出す”ための作戦という可能性が高い」



「私たちを……誘き出す?何のためにですか?」




ハルナの質問を聞いて、エレーナは掴まれた肩の抵抗を止めて話に耳を傾けるようになった。

ステイビルも、聞く体勢が整ったとエレーナの方から手を外した。




「我々を一刻も早く町から追い出したいんだろうな……」




何か怪しいことを行っている者が、このソイランドの町の中に潜伏している。

水の利権を守ることや人身売買、クラッシュアイスの流通など、ステイビルたちに見つかってはマズイものが多くある。

この町に長く滞在すればするほど、その活動も停滞し儲けが少なくなってしまう。






「……だから、水の精霊使いを見つけたら難癖付けて町の外に出そうとするだろうな」



「でも、それ……ステイビルさんの考え過ぎじゃないんですか?」



「そうか?……ハルナは、さっき馬車からこの町の火事を消そうとしている者を見たか?」



「はい、バケツに水を汲んで火事の現場に向かって走っていましたけど」



「それでは、急いでいてそのバケツから水をこぼしている者はいたか?」



「……?」






ハルナは、思い返すがバケツ一杯に水を汲んでいたものがいない気がした。





「まさか……消すつもりがなかったってことですか?」





そのことに気付いたエレーナが、ステイビルに確認をする。





「……そうだと思っている。普通、どの町でも発生した火災のために貯水桶は用意させている。水は火さえ消せればいいため、汚水や雨水など汚れた水で構わないからな。そこには十分な水が確保されているべきで、天候等により確保できない場合は王国に言えば水の精霊使いを派遣し安全な水を確保することもできるはずだ」





ステイビルは火の勢いが収まりつつある、火災の現場の方へ目線を送り更に自分の推測を告げる。





「この取り組みは、王国の法律で決まっているため罰則はひどくはないが準備ができていない町には何らかの罰が与えられる。貯水桶を見たが、この町の防火用の水は規定量が用意されていた。だが、その水をほんの僅かしか運ばなかった。走ってもバケツからこぼれることがない量を……だ」



「火を消す気が……ないってことですか?」



「そういうことだ……ん?もしかして!急いで宿に戻るぞ!!」








そう言ってステイビルは、ハルナたちを置いてアルベルトが待機している馬車に駆けていった。








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