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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第四章  【ソイランド】

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4-18 面会





ここは、ソイランドの南の端にある廃墟の地域。

町の中心部とは違い、無法地帯のような町の自治が及んでいないような場所だった。

最低限の店のようなものはあるが、どこからその品を調達してきたのか簡単に想像できるような品物しか並んでいない。

衛生状態も良くはなく、風に流されてくるその臭いは鼻孔を手や布で覆ってしまいたくなるような強烈なもので嗅覚を刺激する。



チェイルの指示に従い、ハルナたちは廃墟の直前で馬車を降りその辺りにあった汚い布を被りチェイルについて廃墟の中に入っていく。

馬車が襲われないようにと、ソフィーネとブンデルとサナが残った。



ハルナたちは廃墟の中を進んでいく。

ボロの布を被っていても、見知らぬ存在の匂いは違っている。

その違いを嗅ぎ分けた地面に座った小さな子供たちが、通っていくハルナたちの姿を目で追っていく。

物乞いのようにまとわりついてくるものかと思っていたが、そんな無駄な行動に体力は使わないといった感じで無気力な視線を送ってくる。


そんな視線が気になっていたが、事前にチェイルから”決して気にしてはいけない”と指示を受けていたため必死に目線を振り解いてチェイルの後を追っていく。




「ここです……」



見るからにボロボロの建物だが、かすかに食堂のような広いホールだったようなスペースがそこに見えた。

チャイルは、イスやテーブルや棚などが重なり合う中を身体を捩らせながまるでそこに道があるように奥へと進んでいく。

アルベルトがチェイルに続いて、ガラクタの中をトレースして進んで行く。

その後を、エレーナ、ステイビル、最後にハルナと進んで行った。


奥には二つの扉があり、一つは奥に見える厨房につながる扉とその右側に壁の向こうに続く扉がある。

チェイルは右側の扉を開けて入っていき、アルベルトはさらにその後ろに続いて行く。


ハルナはその扉を通り抜けようとした際に、反対側の扉の奥にみえる料理を出すカウンター越しに見える厨房を見た。

そこにはこの建物内に見られる煩雑な状態ではなく、汚れてはいるがある程度整頓された状態であるように見えた。


チェイルは扉の奥に見える階段を上り、その奥に縦に続く廊下の突き当りの扉の前でハルナ達のことを待っていた。




「……それでは、ここで待っててください」




チェイルは、合図もせずに扉を開けて中に入っていった。

その間、ハルナたちはただ黙ってチェイルの結果を待つ。

中の音は、町の外の音にかき消されて聞こえてはこなかった。




数分後、思ったよりも早く扉は開いた。

そして中からは、最初に入ったチェイルが出てくる。

失礼にならないのように中の様子は見ないようにしていたが、チェイルの後ろにはパーテーションのような布で遮られており奥の様子を見ることができないようになっていた。


そして、チェイルの言葉を待つ。





「お待たせしました……ハルナさんだけ、中にお入りください」



「ちょっと私たちも……!?」



”ハルナだけ”という言葉に反応したエレーナが、チェイルに反抗的な態度を示した。

だが、その肩をアルベルトが抑えてエレーナを落ち着かせた。



選ばれたハルナは一番後ろの位置から扉の前に向かって、狭い廊下に並ぶエレーナたちの間を抜けて一番前に姿を見せる。


条件を付けられた面会に対し、ステイビルが表情が強張っているハルナに声を掛けた。




「ハルナ……大丈夫か?」


「はい、大丈夫ですよ……きっと」




その言葉の裏に、モイスの存在を含んでいることを感じ取ったステイビルはハルナに気をつけるように言葉をかけた。

ステイビルの心配は、また別のところにあった。



いつか元いた世界の話をハルナに聞かせてもらった時、この世界に来るきっかけとなった一緒に仕事をしていた人物の話も聞かせてもらっていた。


その時に聞いた”ユウタ”という人物の話をするときのハルナは、とても楽しそうに話していたことをステイビルは思い出す。

フユミの時も楽しそうに話していたが、対象が男性だったためかステイビルはハルナがユウタという人物に対して特別な想いを抱いているのではないかと感じていた。


フユミもこの世界に来ていたため、ユウタも来ている可能性があることは推測していた。

ハルナのためには、同郷の仲間に合わせてあげたい気持ちもあった。

だが、ハルナがユウタという人物に”取られてしまうのでは?”という危機感もあった。


エレーナがふざけながら、冗談でハルナの”いい人”ではないかと聞いていたがハルナはその言葉を否定していた。

その言葉が本当かどうかを、確かめることができないまま今に至っている。

いまさら、あの時の言葉の真偽を確かめることなどできない。

ハルナは、自分の王選の旅を手助けしてくれている、ただの協力者としての精霊使いのうちの一人なのだ。




そんなステイビルの想いを余所に、ハルナは部屋に入る前に後ろを振り向き皆に笑顔を向けた。



……パタン



ハルナの姿はドアの向こうに消えていった。



チェイルは残されたステイビルたちを別の部屋に案内し、そこで待つように指示をした。











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