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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第四章  【ソイランド】

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4-10 変り果てた姿



「そのお姿は!?でもそのお声……まさか、モイス様!?」


ハルナの後ろから姿を見せた”喋る爬虫類”の正体を、アーテリアは一瞬にして当ててみせた。

エストリオは、あの日見た威厳のある姿とは異なる、今にも両手で掴めば潰してしまいそうな容姿に戸惑いを見せる。

確かにこの容姿であれば、もともとモイスという存在を知らないと、その森の中に住む爬虫類の一つとしてしか認識されないだろう。


(もしかして……これが本来のお姿……いや、そんなはずはない!)


エストリオは、自分の立てた仮説を即座に否定する。

あの日初めて姿を見た際に感じた、決して人が到達することができない圧倒的なエネルギーの塊。

その力を目の前の爬虫類からは感じることができない……が、人語を操る爬虫類などこの世にいるはずもない。

エストリオは、目の前の小さな生き物がモイスであると認識し始めた。


『そうだ……アーテリアもエストリオもあの時以来だな。二人とも年を取ったな……変わりはないか?』

「はい……それにしても、モイス様はずいぶんとお変わりになられたのですね」

「おい、アーテリア!モイス様に対して失礼じゃないか!?」


エストリオは先ほど自分がモイスの存在を疑っていたことを棚に上げ、アーテリアの発言を戒めた。

その反面、一瞬にしてモイスの存在を信じ、偉大なる大竜神に対して軽口を告げることができるのは、元精霊使いという実績があるからなのだろうかとエストリオは考察した。


『……よいよい。グレイネスたちからは王選の件で何度か連絡はあったが、お主たちはその手段がないからな……こうして会えてうれしく思うぞ』


そう言われたモイスも、それほど悪い印象は受けていないようだった。

エストリオは気を取り直して、初め浮かんだ疑問をモイスに投げかけた。


「し、しかし……なぜ、モイス様はこんなところへ?」

『おぉ!そうだ、そのことなのだ。今回の王選で今までに見なかった例外的な事象が起こってしまったのでな……』


モイスは再会を喜ぶ感情を抑え、ラヴィーネにきた本来の目的のために話の流れを戻した。

今回、ハルナにだけモイスからの加護の反応が見られなかったことをアーテリアたちに話して聞かせた。

その現象についての説明をグレイネスたちに証明することを第一の目的としハルナたちに同行したと伝えた。

さらに、この現象について何か思い当たることがないかをアーテリアに確認したくラヴィーネに足を延ばした。

それとは別に、ハルナたちは今までにないくらい闇の者たちと出会う確率が高いことから、ハルナたちに同行すれば自分を狙う相手にも遭遇できる可能性が高まることを説明した。


『お主たちにも話したが、ワシを付け回す者がまだあきらめていない様なのだよ……』

「闇の者……ですか?」


エストリオは、当時に聞いたモイスの話を思い出しながらその言葉を口にした。


『……それにな、ワシもいまの外の世界を見たくなったのだ』

「それで、この容姿……ですか?」

『そうだ、大きい姿だといろいろと目立ちすぎるのでな!』


モイスはケタケタと笑い、機嫌よくする。

アーテリアもエストリオも、モイスがこんなに楽しそうにしている姿は見たことがなかった。

エストリオの視線は、偉大なる大精霊を引っ張り出してきたハルナの顔に焦点を合わせる。

ハルナは一瞬目を合わせたが、見られている理由が分からずすぐに視線を外した。


「……それで、お母様。この件に関して何か思い当たることはないの?」

「私の知る限りでは、こんなこと……」


アーテリアは、言いかけた言葉が途中で詰まってしまった。


(カメリア……そういえば、精霊の指輪……いつからつけてたかしら?)

「……お母様?」


アーテリアはエレーナの声に思考の世界から現実に引き戻される。


「え?……あぁ、ごめんなさい……何か思い出せそうな気がしてたんだけど……でも、覚えていないってことは大したことじゃなかったのかもね」

「もし、何か思い出したことがあれば何でもいいので連絡してください。とにかく今はこの現象について情報を集めたいので……」


アーテリアは、ステイビルの言葉に頷いて何かあれば連絡すると約束した。


「それで、ステイビル王子たちはこれからどうするのだ?」


エストリオの問いかけに面子の顔を見た、ステイビルがこれからの行動について代表して応えた。


「そうですね……まずはソイランドに向かおうかと思っています」


王都を中心として、東西南北の方向に四つの各町は存在する。

東に火の町フレイガル、西に水の町モイスティア、北に土の町ソイランド、南に風の町ラヴィーネがある。

王都を中心に左右の町は、どちらも一日かければ移動できる距離にある。

王都を挟んで反対側に位置する町は、王都もしくは隣の町を経由するため二日はかかってしまう。

そのため、ラヴィーネから反対側にあるソイランドに向かうには、王都もモイスティアに向かうのもさほど変わりはない。


「なら一度モイスティアに立ち寄ってみない?スプレイズさんにもご報告しなくっちゃいけないでしょ?」


ここからモイスティアに向かうことが決まった。




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