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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第二章 【西の王国】

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2-12 告白



『さて……と。どこにいるのかな?』


ディグドは、エレーナの精神の中を進んでいく。

どこかで繋がっているはずの、エレーナの精霊を探していく。





「大丈夫?エレーナ」


ディグドが入っていった後の身体を心配するハルナ。


「うん……何ともない……かな?」

「とにかく、お前はただ待っていればいいさ」

「では、お言葉に甘えて……」


そういってエレーナはソファーに深く腰掛け、背もたれにゆったりと身体を預けた。



そこは宇宙のような世界だった。

上も下もなく、ただの空間といった感じだ。

重力があるから底があり、その上には天がある。

意識だけの世界では、上下左右関係なく存在している。

それが当たり前のため、疑問も浮かぶことはない。

ディグドは、エレーナの身体の中に流れている元素の流れを見つけた。


『この流れをたどっていけば……』


どこか嫌がっている感じもするが、ディグドは構わず進んでいく。

辿っていったその先に――


『お!いたいた!』


姿はないが、何とかディグドから隠れようとしている感じが伺えた。


『おーい……どうしたんだい?』


とある意識は逃げ出したが、ディグドはその意識に追いつく。


『と……やっと捕まえた!どうして君は逃げるんだい?』

『に……逃げてなんかいないよ!?君こそ、どうしてこんなところまで……何しに来たんだ!』


エレーナの精霊は、やや声を荒げて話す。

明らかに後ろめたいことがある時の反応を見せる。

こういった心理は、人間でも精霊でも関係はなかった。


『君が、エレーナと契約している精霊だね?』

『そうだよ……で、何の用なの?』

『ふーん……君に自我はあるんだね。まぁ、当然か。契約の意思は自分で決めるものだしね……ところで、君は誰を嫌っているんだい?エレーナ?それとも他の人?』

『……誰も嫌ってなんか……ないよ』

『だけど君からは、恨んだりねたんだりといった類の気を感じるんだ。自分で言うのもなんだけど、あながち間違ってはないと思うんだよね?』

『……』


エレーナの精霊は、黙ってしまった。


『まさか、”自分でも良く分からない”とか言い出すんじゃないだろうね?そんな理由は通用しないよ。僕も妖精になるまで、時間が短かった訳ではなかったからね。いろんなものを見てきたよ……だからわかるんだ。君が発している気が、どういった類のものであるかもね』

『うぐっ……!?』


誤魔化そうにも、言葉につまる。

しかし、自分と契約している精霊使いの中に勝手に入ってこれる実力を見ると、自分よりも力の上の精霊であることはわかっている。

エレーナの精霊は、逃げることもごまかすこともできないと判断し、問われた内容について渋々答えていく。



自分は決して、他の精霊たちよりも劣っているとは思わなかった。

むしろ、出来ること……考えること……その他についても、劣って……嫌、ある程度の精霊たちよりは上である自信があった。

なのに、最近出てきた身近の精霊使いの精霊のできることや、特殊性などを見ると自分のプライドが脆く崩れていく。

今まで自分を支えてきたものが、無くなってしまった。

しかもその精霊は、自分の契約者の親友でもある……


エレーナの精霊は黙ってしまった。

そこでディグドが提案する。


『僕が、君の考えを伝えてあげるよ。まずは、君が思っていることを素直に話してくれないかな?そこで何を話していくべきか一緒に考えようじゃないか』


エレーナの精霊は、少し疲れていた。

もう考えるのは嫌だ、いくら考えても自分のいい方向に向かっていかない。


(もう……楽になりたいな)


小さな声で、ディグドにそう告げた。


『では、次に今の君の気持ちを素直に聞かせてくれないかな?』



――自分に自信があった。

けれど、なかなかそれ誰にも認めてもらえなかった。

それなのに、自分より劣っている”ある”精霊が、他の仲間たちに人気があったこと。

他の子たちよりも先に、契約者を見つけて嬉しかったこと。

その契約者は自分を、とても大切にしてくれていたこと。


ある日、突然別の精霊使いが現れエレーナが戸惑っていたこと。

最初はその能力に嫉妬していたが、エレーナはそれを乗り越えて親友となっていたこと。

その親友の精霊は契約者と話が出来ており、それをうらやましく思っていたこと。

強い敵が現れたこと。

その敵に何もできず、エレーナを傷つけてしまったこと。

そして、うらやましく思っていた精霊がみんなを助けたこと。

自分が弱かったと気付かされたこと。

そして、エレーナとお話しができる様になりたいとガブリエルにお願いしたこと。


……ここまでディグドはただ、黙って話しを聞いていた。


『これで君の考えがわかった……この内容をみんなに伝えてもいいかな?』


精霊は頷く。


(ただ、ガブリエル様がなんらかの手助けをしている可能性があるな……)


『まずみんな知りたがっているのは、なぜ君の契約者のエレーナが痛みを生じているのかということと、その言動がおかしいのかという点だった。それは君からの負の感情がエレーナに伝わっていてその影響を受けていたようだね。そこは素直に謝っておいた方がいいよ、君たちの契約関係はこれからも続くんだ。そういうことを乗り越えてこそ、絆は強くなるんだからさ』


精霊は、その言葉に素直に従う。


『……よし。じゃあ、まず僕がみんなに説明するから。後で呼ぶことになると思うけど、その時はちゃんと姿をみせるんだよ……不安にならなくていいよ。うまく話しておくからさ!』


エレーナの精霊は、初めて自分以外の者に頼ることを覚えた。

今まで我慢してまで、苦しかったことが急に楽になる気がした。


『ようやく、君の気の流れが落ち着いたみたいだね。それじゃ、先に行って話してくるからね!』


そういって、ディグドはその場を離れた。






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