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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第三章  【王国史】

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3-256 東の王国60



「……その建国のアイデアは、お前たちがまだ小さい頃にクリスに対して聞かせてあげたものだ」


まだ二人が幼い頃、クリスとウェイラブが二人を抱えて寝かしつけている時のことだった。

ある日、クリスはウェイラブが描いている「この村の未来について話を聞きたい」と言った。

ウェイラブは、その当時頭の中にあった「建国」の青写真の話をクリスにした。

この話はスミカが村を出る前、ウェイラブの前で「各村の共同体」というものを口にした時から始まった。

そこから二人は時間を作り、構想を練って素案を創り上げていったのだった。


周囲の村と協力し、一つの大きな領土として国を創り上げていくという内容をクリスに語って聞かせた。

クリスはその話が気に入り、ウェイラブに大好きな物語をせがむように何度も建国の話をして欲しいと依頼した。

自分には才能はない、しかも身体が弱いためウェイラブには迷惑をかけてばかりだった。

それに二人は政略結婚で、ウェイラブは自分に対する愛情はないものだと思い込んでいた。

だが、一緒になって生活をしていくうちにウェイラブの優しさが随所に感じられ、それが居心地よくなってきていた。


カイロシュは、ずっと自分の家のために活用される道具のような存在として扱われていた。

それが今ようやく、ひとりの人間として扱われている。

刷り込まれていたせいかもしれないが、最愛の人から受ける優しさ……愛情がクリスの乾いた心の中を潤していった。


建国の話をしていた時、二人の子は眠っていたはずで大人の会話など理解できるはずもなかった。

何度かクリスに聞かせるうちに、二人の頭の中にその内容が残っていたのだろうとウェイラブは推測した。

二人が成長し、建国の話を持ってきたときには驚いた。

この話はスミカとクリスを除いて誰も知らないはずだった。


クリスには、カイロシュにこの話が流れていかないように口止めをしてもらっていた。

クリスも、カイロシュに対しては父親であるが良い印象はない。

この大切な案を――ウェイラブの夢をカイロシュに潰させたり利用されたりしてはいけないと、二人だけの秘密と約束してくれていた。


よって、二人がその話を提案してきた時は、「偶然にも同じ結果に辿り着いた」か、うっすらと二人の話を覚えていたかのどちらかだろうと推測した。

その二択であれば、後者の確率の方が高い。


それでもウェイラブは嬉しかった。自分の子供が建国の夢を引き継いでくれることを。

自分自身では、もうその夢に対して注ぐ力も気力も失いかけている。

手を付けたとしても、その途中で結果を見ることなく倒れてしまうことになるだろう。

自分の息子たちに託したとしても、同様の結果になることが目に見えていた。


命令されてやらされたことは、指揮する者がいなくなればその計画の詳細を知る者がいなくなるため、残された者たちではやり遂げることは難しいだろう。

それに……ウェイラブは疲れ果てていた。


(はやくスミカの元へ……)


その思いが、時間が経つにつれウェイラブの中で強くなっていく。

スミカと離れ、クリスを見送った。

幼い頃から憧れていた「家族」の温もり……そのウェイラブの願いをかなえてくれるのは、スミカしかいなかった。

だからこそ、二人が建国について動き出したいと提案してきた際、それを承認した。


――ある条件を付けて

「国となる村の中から、伴侶を連れてくること」


国を興したのち、一人ではなくスミカのようにともに国の運営を手伝ってくれる相手を見つけて欲しかったのだ。

二人のうちどちらかが王になり、もう一人がそれを支える。

それが、ウェイラブが二人が建国した際に思い描いていた体制だった。


「それにな、少しは期待していたのだ。ノービスとサレンの娘たちが来てくれることを……な」

「ウェイラブ……」


ノービスの知っているウェイラブとは異なり、穏やかな顔つきになっていた。

そのタイミングで、少し眠っていたマリアリスが目を覚ました。

ウェイラブはマリアリスを近くに呼び、かたくなに拒むマリアリスを強引に近くの椅子に座らせた。


「それで、私は決めていた。そういう約束をしていないにしても、二人が成し遂げようとする協力者が現れた時に”引退”することな」

「そ、村長!?」

「まだ早すぎます!?」


引退の言葉を聞き、エンテリアとブランビートはその決定に異議を唱えた。

だが、ウェイラブはその決定を変えることはなかった。


「あとはお前たちが、進めるのだ。これから興す国は、全てが新しいものだ。もう、古い考えの者は不要になる……そうだ、ノービス。お前もこの二人を手伝ってやってくれないか?遠くからでも構わない……頼む」


ウェイラブは両手を膝の上に置き、深々とノービスに頭を下げてお願いする。


「うーん……何かをしてやれるかもしれんが、私もそんなに詳しくない。国づくりには賛成したが、政のことなどは……」


肯定的な意見をノービスから聞き、ウェイラブは頭を上げた。


「それには心配には及ばぬよ、この二人はその辺り原案から自分たちの独自のものまで精査を重ねている。お前には、感じたことを意見してやって欲しい」


その言葉を受け、「出来る限りのことはしよう……」とその役を引き受けた。




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