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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第三章  【王国史】

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3-254 東の王国58



本人を前にして、カイロシュとの話合いを終えてから準備を含めて一年が経過した。

簡単な式が終わり、大竜神に対して婚姻の報告を終えた。

ここまでの間に、カイロシュが先導し婚姻の準備が進められていった。

村をあげて盛大に祝おうとしたが、ウェイラブはそれを止めた。

表向きの理由として、派閥の娘と一緒になることに面白く感じない者たちもいるため、波風を立てないようにする方がいいだろうとウェイラブは提案した。

最初は”私の力を見せつけて黙らせてやる!”と意気込んでいたが、最終的にカイロシュが望む方向に進んでいるのだからとなだめて納得させた。

本当の理由は、偽の婚姻関係に対して祝ってもらうのは心苦しいからであった。


ウェイラブとクリスは村長の屋敷の中で、二人の暮らしを始める。

カイロシュは祝いの品やその他の様々なものを屋敷の中に持ち込もうとしたが、ウェイラブはそれを丁寧に拒否をした。

メイドもカイロシュの家から送ろうとしたが、村長の家では機密事項を扱うこともあるため、現在のメイドだけで問題ないとその件も断った。

ただ、クリスの体調に関する薬草師や身体の世話をする数名は受け入れることにした。


いよいよ、クリスとの生活が始まる。

それと同時に新しい家族も増えた。

男の子が二名、まだ小さいが二人ともそっくりな顔の男の子が屋敷にやってきた。

虚弱なクリスでは、二人の子の世話はできず、メイドに任せることにした。

ウェイラブも自分自身が母親の世話になれなかったため、この子たちはせめて継母でも母親の愛情をと考えた。

しかし、クリスの体力からして双子の世話は難しいと判断し、メイドに任せることにしたのだった。

その二人の名は、”エンテリア”と”ブランビート”と名付けられ、すくすくと育っていくことになる。

二人には、クリスが本当の母親でないことも説明した。

驚きはしたが、身体の弱いクリスのことを気遣い大切にする良い子供に育っていった。


双子が十歳になる時、新しい家族が増えることになる。

クリスとウェイラブの間に、子供を授かり女の子が誕生した。

その子は、”レビュア”と名付けられた。

レビュアの誕生にカイロシュはあまり喜ぶことはしなかった、本当は男の子を望み次期村長としての地位を期待していた。

出産後の見舞いの言葉が、”次は男の子を頼む”だった。

しかし、それは叶うことはなかった。

クリスもまた産後の肥立ちが悪く、元々虚弱だったため病状がさらに悪化してしまった。

エンテリアもブランビートも、本当の母親のように接していたためその状態を悲しんだ。

二人は、自分の母親に対し労うこともしないカイロシュのことを嫌っていた。


そんな状況のため、レビュアの世話をするために新しいメイドがやってきた。

まだ十五の女性で、名前は”マリアリス”と言い、その容姿はスミカにそっくりであった。


(これが……あの時の子か)


初めてその姿を見たウェイラブは、動揺してしまった。

他の集落に預けられていたマリアリスは、自分で村のことを知りメイドという職業を選び働きに出たということだった。

メイドの見習い期間が終わり、レビュアの誕生のタイミングで屋敷の中で手伝いを任されることになった。


そして、ウェイラブとクリスの関係は終わりを迎える。

クリスの状態は回復することなく、当時考え得る最善の手を尽くしても回復することはなかった。

それをきっかけに、カイロシュも自分の息子たちの一部からの反乱に遭い、その命を奪われることになった。

この村では、反乱を起こした者はいかなる理由であれ厳重に処罰される。

これは先代を失った際に起こした揉め事からの教訓をもとに作られたルールだった。

首謀者は処刑され、その家族や手助けした者は村の外に追放となった。

これによってカイロシュの持つ力は、全てを失ってしまうことになる。


エンテリア、ブランビート、そしてまだ幼いレビュアも、母親という存在を失ってしまった。

自分の生い立ちと重ね合わせ、そのことを不憫に感じたマリアリスは、メイドという立場を超えて献身的に三人の世話をすることになった。

だが、マリアリスはここに来た目的も忘れてはいなかった。

一部のメイドから選ばれる”諜報員”の権利を得るため、その努力を欠かさなかった。

早朝から夜まで三人や屋敷の世話を行い、夜中や非番の時には諜報員の訓練の選抜に選ばれるために時間を惜しんで努力をする。

しかも、マリアリスは決して弱音を口にすることなく、体調不良もなくすべてをコントロールしていた。

そのことを知ったウェイラブは、村長の権限でマリアリスを助けようとしたがすぐにその気持ちを捨てた。

ここでその権利を自力で勝ち取らなければ、マリアリスに先はない。

それにマリアリスは、スミカの血が流れている子でもある。

必ずやその才能を自力で開花させるに違いないと、ウェイラブは確信していた。

そして、その目標は着実に現実へと進んで行った。


エンテリアやレビュアが一人で考え行動できる年齢になった時、マリアリスは諜報員として訓練を受けることになる。

屋敷から離れた洞窟の中に、その訓練場はあった。

そこには選ばれた数人のメイドがいたが、わずか数年でマリアリスはそのトップを任されるほどの実力を身に付けていた。

そして村長の近くに戻ってきた際には、スミカと同じ立場のメイドとしてその任に就く。




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