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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第三章  【王国史】

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3-239 東の王国43



二人は、立派な建物を見て驚く。

木で建てたもの以外にも、石のブロックを積み上げたものや、壁に土を塗って固めたものもある。

自分の村よりも発展している建築技術は、詳しくはない二人にも高度なものであると理解させられるものだった。

これらは、王国を意識して作られたものであると考えられる。

村長の家から伸びる大きな主道路は、石畳で綺麗に整えられ、その上を馬が荷台を引いてもガタガタと揺れることなく二人の前を通り過ぎていった。


「流石ね……」

「そうね、国を作ろうとしているだけのことはあるわね」


それも数年の間に行われていた訳ではなく、もっと前の時期からこの村の構想は作られていたのだろう。

エンテリアたちの考えも、二人の代で行おうとしたわけではないのだろうと推測する。

エイミとセイラは、更に歩みを進めていく。

村長の屋敷が村の中心にあるため、そこに通じる石畳の大通りを見失わなければ何とか戻ることができるだろうと考えていた。

それに、マリアリスに借りたこのリボンについた石を見せれば教えてくれるだろうという安心感から、二人は自分たちの好奇心に惹かれるがままに村の中を歩いて回った。

いつしか村長の屋敷は見えなくなり、何度も曲がり角を曲がったため大通りの方向さえも見失ってしまった。

そして太陽は真上に差し掛かり昼の時間を過ぎており、大量に食べた朝食も空腹へと変わっていた。


「あー、お腹空いてきた。そろそろ帰ろうか」

「そうね。ねぇ……村長の屋敷はどこだっけ?」


周りを見回すと、建物の裏の路地からはその存在は確認できない。

通って来た道を戻っても、曲がり角でどちらから来たのか判らないためそのまま進んで探すことにした。

しかし一向に二人が目指す目印になるような場所には出ていかなかった。

空腹は次第に増していき、身体から力と意識を二人から奪っていく。

脱力した状態とずっと肌に触れて鈍化した感覚でリボンが緩んでいることに気付かず、リボンが解けて袖から滑り落ちたことにエイミは気付かない。

後ろにいた男がそのリボンを手にして、付いている石に気付きエイミに声を掛けた。


「ちょっと……落としましたよ」

「え?……有難うございます」


その声に振り向くと、そこにはスキンヘッドで顎と鼻の髭が繋がっている男と数人の腰に剣を下げた男がいた。

その男たちは、明らかにこの村の者ではない雰囲気が漂っていた。


「な……なんですか?あなた達」


セイラもその雰囲気を感じ取っていたのか、目の前に現れた男たちに警戒した。

男たちもそのことに気付いたのか、イヤらしい笑いを浮かべながら話しかけて来た。


「あんたたち、この村の村長の関係者だろ?ちょっと俺たちに協力してくれないかな?」

「これはまぁ……お願いのようで命令みたいなもんだけどな。大人しくするなら、命まではとらねーからよ」


その男の手には短剣が握られており、剣の腹で反対の掌を何度か叩いて遊んでいた。

しかし、ある男は二人の女性に対して違和感を感じていた。

自分たちの姿を見ても、怖がることも驚くこともしていなかった。

そして何故だか、二人の女性は弱った様子は見せていた。


「あの……それ、返してもらっていいですか?」


エイミは必死にお腹に力を入れて声を出した。

少し声が震えていたが、相手はお腹が空いているためとは思っていないようだった。


「なんだ……声が震えてるじゃねーか……おい、てめぇ!さっさとこっちに来やがれ!!」


エイミたちが恐れていると勘違いしたスキンヘッドの男は、強気で押せば恐怖でゆうことを聞くだろうと判断して威圧の意味を込めて声を荒げた。


――エイミとセイラはこの者たちの対応を悩んだ

自分たちはこの村では”余所者”であり、大きな騒ぎを起こしてはいけない。

この者たちを傷つけてしまえば、建国に参加することも出来なくなる可能性も出てくる。

それに、二人の空腹はそろそろ限界に近付いてきている。

なんとか穏便に済ませようとしているが、相手はたちの悪い者たちで自分以外の決定は認めないといった者たちは力で判らせるしかないのだが……


「ねぇ、あなた達も嫌な思いしたくないでしょ?お互いのためにもお願いだから、そのリボンを返してくれませんか?」


今度はセイラがハッキリと、相手に判るように伝えた。

だが相手にとっては、それが気に食わなかった。

脅しているのに全く反応をみせず、人数も多い自分達より優位な立場に立っている態度。

さらに言えば、非力な女性が自分たちに交渉してきているのが、なんともしゃくに触る。


「……オレたちのこと、舐めてやがるな」


スキンヘッドの男は、隣の男に顎で指示を出す。


「おい、黙ってついてくればいいんだ――」


エイミの肩を掴みかけた手が、ふわっとした圧力に押されて持ち上がった。


「――何をした!?」


エイミの後ろから小さな人型の精霊が姿を見せ、男が手を掛けようとした肩に座った。


「どうしても返してくれないというなら、実力で返していただきます」


怒り気味の声でエイミは、男たちに掌を向けた。




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