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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第三章  【王国史】

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3-235 東の王国39



「それで……その条件って?」

「はい……建国の条件とは、”他の村から伴侶を連れてくる”という条件なのです」


エイミとセイラはその話を聞いて時が止まり、表情を変えずに頭の中で叫んでいた。


(伴侶……たしか、結婚相手の意味……よね)

(そんなこと……聞いてないんですけど!?)


時間にして僅か数秒の間、目の前の二人が何の反応も示さないことにブランビートの胸が締め付けられるように苦しくなる。


「どうだ……お前たちがやろうとしていることが夢物語だということが分かっただろう?そんな相手も連れてこれないようでは、建国など到底無理な話なのだ!」

「くっ……!?」


エンテリアから悔しそうな声が漏れる。

エイミも本当ならば、協力してあげたい。

ここに来る道中でエンテリアとブランビートが語った、理想の国の話はとても魅力的なものだった。

決して夢物語ではない、実現可能と感じたからこそエイミたちはここまで一緒に来たのだ。

だが、結婚となるとそれはまた話は別だ。

相手のことをよく知らない上に、お互いの気持ちの前に何かを達成するための材料として一緒になることなんてできるはずがないと思った。

しかし、そんなことを言っては理想を達成することはできない。


(何か……何かこの場を乗り切ることのできるいい案はないかしら……)


エイミは必死になって、今までに経験したことのない場面で、使ったことのない頭の領域をフル稼働させて最適解を導き出そうとする。

……そんなに都合よく、答えは出てこなかった。

エイミ自身も頭の回転が悪いわけではないが、今までは事前に経験したことや、そこから予測し準備していたため適宜素早い対応が可能となっていた。

今回は全く新しい問題で、いままで予想していなかった問題が起こっている。

わずか二十秒くらいの間誰一人声を発せず、この部屋に張り詰めた空気が流れていた。

その凍った時間を、砕いて変えてみせたのはセイラの声だった。


「――それは、お互いの気持ちは関係なくても問題ないですよね?村長」


セイラの言葉に、村長は一瞬目を見開く。

すぐに、元の冷静な表情に戻しセイラからの質問に対して返答をした。


「……あぁ、お互いの気持ちはこの際、考慮しなくてもいい。エンテリアかブランビートに付き添ってくれる者がいるのなら、それでこの条件は満たしたことにしてもいいとしようではないか……ただし!」


その言葉に対して、セイラが返そうとしたそのタイミングを潰すかのように村長は更に言葉をつづけた。


「……ただし、そんな意思で一緒になった二人が民からどのように思われるかは……賢くないものでも想像することは難しくないだろうよ」


それはお互いの気持ちがなく一緒になったのなら、その相手は地位のためだけに近寄ってきたのではないかと噂される可能性がある。

その噂の元はもしかしたら、身内からの可能性もあるだろう。


「確かにそう思われても仕方のないことかもしれませんね……ですが、民のためを思っての決断であると捉えられることもあるのではないですか?それは、結果や時間が判断してくれるものと思いますが」

「フンッ……村を管理している地位のある者が、そんな生易しい考えでは民が不幸になるのではないですかな?」


(確かにそうかもしれない……だけど)


セイラは、くじけそうになった心を何とか堪えている。


「……それは今すぐ決めなければならないのですか?お互いの気持ちを重視するならば、関係を構築する時間も必要だと思いますが?」


そう言葉を返したのはエイミだった。

セイラが必死になって状況を改善させようとしている姿を見て、エイミの思考の回転が一段上昇しこの場の流れを変える案を思い付いたのだった。


「ご存じの通り、我々はエンテリアさんとブランビートさんにお会いしたのはつい最近です。魔物を討伐することに協力もしましたが、お互いのことはそんなにわかっていません。もし建国しても、お互いの村が一緒になった場合でも同じなのではないですか?時間を掛けないと判らないものも多いはずです。それに……」

「……それに?」


村長は机の上に肘をつき手を組み、背もたれから身体を離し前傾姿勢となる。


「それに……私は例えお二人が他の村の女性と同様に一緒になったとしても、建国される国の中に参加させて頂きたいと考えています。ですが、私たちもその条件を今この場で聞いたばかりです。少々戸惑ってはいますが、可能性はあるものと考えています。ですから、まずは今後について話し合いたいと思いますので、お時間を頂けないでしょうか?」


エイミは力強い視線で、村長の顔を見つめる。


(憎いほど……そっくりなのだな)


村長は目をつぶって、これからのことを判断する。


「わかりました……エイミさんのその言葉も、充分に理解できる話だ。本来は我が息子たちから、そういうことを言わなければならなかったはずだが、あなた方に言わせてしまったことについてはお詫びしましょう。そして、数日この村に滞在されるとよいでしょう。必要なものはこちらで全てご用意いたします。ゆっくりと話し合いを行って頂きたい」


こうして、エイミとセイラはこの村に数日間滞在することが決まった。




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