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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第三章  【王国史】

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3-218 東の王国22



エンテリアとブランビートの装備は剣と腕に通した、首と顔が隠れる直径二十センチメートルほどのラウンドシールド。

エイミとセイラは、長い木の棒を持ち相手との距離を保つためといざとなった時に叩きつけるために二人に持ってもらった。

始めは不要だと言っていたが、付いてくるなら何かしらの自分の身を守れるものを持っていて欲しいと訴え、ようやく納得してもらったのだった。

頑なに”武器や防具は不要”と訴える二人に、ブランビートはこの二人には何らかの自身がその背景にあると踏んだ。


(道具を必要としないとは……この二人は体術の達人か?村長の娘ということだが、その線もあるな……一度終わったらお手合わせお願いしたいものだ)


一番後ろを歩くブランビートは、前を歩く細すぎず丁度生活に困らない程度の筋力を持っていそうな二人の背中を見ながらそんなことを頭に浮かべていた。


――ふわっ


軽く風がブランビートの前から流れてくる、そこには今まで経験したことのないほどの良い匂いが鼻と心を刺激する。

村長の息子であるため、元の村では親に言われてなのか寄ってくる女性が多かった。

しかし、今は”村のために自分の強さを追求すべき”と考えていた二人は、どの女性からの誘いにも心が揺らぐことはなかった。

その匂いは、二人の双子の女性から流れてきたことが目の前の長い髪がなびいていることから二人から発せられる良い香りであることがわかる。

今まで経験したことのない感情を、ブランビートは頭を振って振り払い目の前の危険にだけ集中するようにした。


一番先頭を歩くエンテリアが歩みを止めた、既にサミュの家の前に到着していた。

エンテリアは後ろを振り返り、すぐ後ろに付いてきているエイミに合図を送る。

送られた合図に対して、エイミは一度だけ頷いた。

エンテリアは、扉に手をかけゆっくりと扉を中の方へ押す。

村長の命令で鍵のかかっていない扉は、ギィーと音を立てながらゆっくりと開いて行く。

エンテリアは盾を構えて静かに家の中に入る。

残りの三人は、エンテリアの合図があるまで外で待機しつつ周囲の警戒を続ける。

家の中から腕だけを出し、中へ入ってくることの合図をする。

エイミは一つ唾を飲み込み、ゆっくりと足を進めた。

入り慣れたサミュの家だが、こんなに緊張感を持って入ることは今までになかった。


コッ……


踏み入れた足が木の床を鳴らした。


コッ……


もう一歩踏み入れる、その前に入ったエンテリアはエイミの気配を感じつつ、盾と抜いた剣を構えたまま周囲を警戒する。

何も起こる気配を感じないまま、エイミはエンテリアの傍までたどり着いた。

その距離は数秒もかからないはずだが、それ以上の時間を有した。

エイミが入ったことを確認し、セイラも家の中に入る。

その後を追って、ブランビートも一緒に二歩程度の間を開けて追い掛けてくる。

四人は、家の中の気配を探る。

玄関を開けてすぐには、リビングがあった。

部屋の真ん中には二人暮らしにしてはやや大きなテーブルと、サミュと母親の椅子が二つだけ置かれていた。

しかし、結局何も起こらないまま数分の時間が過ぎた。

二人は手にした剣は腰の鞘には納めず、手にしたまま別の部屋に向かっていった。

奥には二つのベッドが並んだ寝室、もう一つはドアのない部屋で台所があった。

台所には、勝手口がありそこにも鍵は掛かっていなかった。

エンテリアは手でそちらの方を指し、移動することを合図した。

外に出る扉に手をかけて、ゆっくりと開いた。

開けた途端に、生暖かい湿った風が入り込み玄関に向かって風が流れていく。


――バタン!


大きな音に、エイミとセイラの身体が飛び跳ねそうになる。

風は、逃げるときのために開けていた家の玄関の扉を押し閉めてしまった。

静かな誰もいない夜に、その音は村の中に響き渡った。

エンテリアとブランビートは、更に注意深く気配を探る。

いつまで経っても何も起こる気配が無いため、四人は再び行動を開始した。

家を出ると、そこには少し離れた場所に納屋が見える。

ブランビートは、エンテリアからの無言の合図に頷いて返答する。

四人は、今の距離を保ちつつ納屋に向かって歩いて行った。

エンテリアは、後ろの三人を納屋から少し離れた場所に待機させ、一人で近付いて行く。

見ると、納屋の入り口は引き戸になっている。

中の気配を探りながら、ゆっくりと引き戸に手を掛ける。


「……!?」


一瞬、獣の匂いがエンテリアの嗅覚を刺激する。

その瞬間、引き戸の直線上から飛んでその身を離した。


バン!!!!


引き戸の扉は本来横にスライドして開くはずだが、二つに割れた元は扉だった板が破裂したようにエンテリアがいた方向に吹き飛んだ。

ブランビートが、エイミとセイラの前に移動し兄弟の安否を心配しつつも、板を吹き飛ばした正体を探る。

その姿は普通の男性の姿をしており、さほど力があるような姿には見えなかった。

だが、扉を真っ二つに割り恐らく蹴り飛ばしたその力は、その姿を見た瞬間、肌が警告するように粟立った。


「お前ら……俺のエサをどこにやった!?」




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