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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第三章  【王国史】

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3-217 東の王国21



太陽は山脈の奥に沈み、辺りの様子は時々雲の切れ間から漏れる月の明かりだけが照らす。

村を風が通り抜け、木々を撫でて音を立てていく。

反対に、この時間帯ではいつも聞こえてくる個々の家の中の生活音すらも聞こえてはこない。

村民たちは昨日の村長からのお触れにより、村のはずれの広い場所にその身を隠していた。

少し村長に反抗的な感情を持つ者ですら、今回は言うことを聞いて回避していた。

それも、”もし何もなければ責任を取ってもらう”という約束にこぎつけていたからだった。

村長はそれでも、この村の人的被害がこれ以上増えなければどんなことをしてでも問題ないと考えていた。

”自分の地位など、村の命を救えるなら安いものだ”……と


「……お二方。これで村の人々の避難は終わりました」

「ありがとうございます、村長様」

「いえ……あとは、我々にお任せください」


ブランビートとエンテリアは、自分たちに変わって村の周囲を確認してくれたことに感謝の言葉を告げる。


「何をおっしゃいますか、私たちの……この村をどうかお救いください」


エンテリアは、頭を下げる村長の肩を引き起こす。


「こちこそ、この村を戦闘の場所にしてしまい申し訳なく思っています。この前の時点で何とか止めることができていたなら……」


その言葉に対し、更なる謝辞を伝えようとしたところ長くなりそうに感じた娘が、その言葉が発せられる前に制する。


「はいはい、お父様。そこまでにされては?そろそろ、お母様と一緒に避難されたほうが良いかと思いますけど?」

「あぁ、そうしよう……それで、本当にお前たちはいかないのか?」


村長は二人の娘を見て、最終確認を行う。


「えぇ、この場に残ってどんな奴か見届けるわ」

「心配しないで、無理は絶対にしないから!」


父親と母親は、心配そうな顔で二人の娘を見つめるが”あの”力が二人の手助けになることは間違いない。

最初は二人が残ることを反対していたエンテリアだったが、友達の件以上に残ることを懇願しているため、安全な場所にいることを約束し残ることを承諾した。

この兄弟から逃げ切った力の持ち主のため、相手も相当の実力者と判断した。

そのため、二人がいると危険が増す可能性があると考え二人だけで対応したいと思っていた。

だが、二人は妙な自信を持っている。

両親も、これから起こる危険に対し強く引き留めるわけでもなく、身の安全だけは最優先して欲しいとだけ言って承諾している。

もしかして、見掛けとは異なり相当の実力の持ち主とも考えた。

相当な実力者は、相手に悟られない様にそのことを隠す傾向もある。

とにかくエンテリアは、姉妹に自分たちの近くで、場合によっては援護するため逃げるように伝えた。

両親も無事に、村の外に避難した頃だろう。

村長の家の前に待機している四人は、ガラスのない両開きの扉が、静かに開いた。

それと同時に、家の中に籠っていた熱気が入り込んだ風によって入れ替わる。


「……静かだな」


ブランビートが窓の外を見て、今のところ状況に変化はないと判断する。

もう一度窓を閉め、四人はこれからのことを確認する。


「まずは、お二人の友人の家に向かいます。そこを調べる際に、私が先頭を行きますのでお二人は後ろに続いてください」


エンテリアが先に入りエイミたちを挟むようにブランビートが最後尾を受け持つ、後ろから襲われる可能性もあるための順番だった。

サミュの母親には、部屋に入っていくことの許可はとっている。

サミュがあのような状態であったため、サミュの家に潜んでいる可能性は十分にある。

しかし母親は、家の中ではサミュと自分以外の存在について感じたことはないという。


真夜中、二人が村の空き家や使われていない倉庫を見回っても変わった様子はなかった。

そうなれば、考えられることは”誰かの家の中に入り込んでいる”。

そこまでたどり着くことはできたが、実際に各家の中を調べることはできない。

だが都合よくその機会が訪れた、それもコンタクトを取った村民の長の近い人物が情報提供者であり助かった。

この家族は村長であり、他の村からの話を信じてくれている。

普通なら、侵略や他の不利益となる理由があることも考えることができるだろう。

結果的には、村長の娘の知人が追っている者の餌食となっている可能性が高いことで、エンテリアたちの言っていることが証明できたのだ。

その裏で、事前に防ぐことができなかったことについては胸が締め付けられる。


「……それでは、準備はいいですか?」


エンテリアは、村長の家のドアの前で後ろに並ぶ者たちに声を掛ける。

声を掛けられた者たちは、言葉で応えず一つだけ頷いて見せた。

ドアを開き、左右を確かめ音を立てずにゆっくりと外に出る。

しばらく周囲を確認し問題ないと判断すると、次のエイミに対して出てくるように合図した。

それに続き、セイラとブランビートも家を出る。

四人は周囲を確認し、サミュの家へと向かった。




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