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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第三章  【王国史】

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3-201 東の王国5



あの日から数日経過するが、心配していた二人の身体に異変は無い。

だが、この先も何も起きないという保証は全くない。

それでも、エイミとセイラはこの身体に慣れてきた様子で、すっかり精霊の存在も馴染んでいた。

あの力は、あの日以来使っていない。

精霊は時々人目に付かない場所で、姿を見せて未知との存在と交流を図っていた。

それは簡単なイエス・ノーのクローズドクエスチョンによる方法だった。

答えが正しい場合は縦方向に移動、そうでない場合は横方向に移動するという取り決めをしていた。

二人部屋の寝室には、植物の油を布に湿らせて灯した明かりが揺らいでいる。

エイミとセイラは顔を顔を見合わせるように、二つ並んだベットの縁に腰掛けていた。

二人の間にはフワフワと浮遊する白い粒が四つ浮かび、二人に呼ばれたことを喜んでいた。

そしてエイミとセイラは、その存在について再び確認すべく質問をしていく。

昨日まで確認したのは、この白い粒が”精霊”という存在であるかどうか。


その質問に対して、白い粒は困った様子を見せていた。

誰が名付けたか知らないが、当の本人たちは自分たちがどう呼ばれているかなど気にはしていない様子だった。

それもそのはず……

今自分たちが”人間”として種族名で広まっているのは、誰かがそう呼ぶことを決めたからだ。

自分たちのことをなんと呼ぶか決められていない者に対して、その返事は返答しづらい物であるとエイミとセイラは理解した。

それ以来、二人はこの存在を”精霊”と呼ぶことに決めた。

その決定に対し、精霊と名付けられた存在は喜びの行動を表していた。


「ねぇ、精霊さん。あなた達って他に仲間はいるの?」


この質問に対しては、縦方向の動きを見せた。


「私たちと同じように、他の人に付いた精霊さんがいるのかしら?」


エイミの言葉に対しては、何の反応も見せない。

恐らく、この質問には”判らない”という答えになるのだろう。

二人の知る範囲の中では、あの森のことを誰か知っているという話は聞いたことがない。

”いればこの現象のことを聞けたのに……”と、セイラは少しがっかりした。

そんなセイラを慰めるように、二つの精霊はクルクルとセイラの周りを心配そうに回っている。

エイミの精霊も、それにつられて一緒にセイラのことを慰めた。


次第に気にしていた、自分の身体への異変についての心配はほとんどしなくなった。

初めのうちは不安が過ぎて、食事も喉を通らない程だった。

そんな二人の姿を母親は心配し、汚れて帰ってきた姿を見て”襲われた”のではないかと心配した。

その話しを聞いた父親は、怒り狂い村の腕っぷしの強い者たちを集め、”犯人を探し出して目に物を見せてやる!”と意気込んでいた。

二人は何とか精霊のことを隠しながら、オオカミに襲われたことを話して説得しなだめることができた。

それがきっかけでもあり、精霊と話をすることを試みる案が浮かんだ。

その者たちが、自分たちにとって悪いものかそうでないかを判断するために思いついた策だった。

結果、可愛らしい存在ともいえる精霊たちと交流が始まり、今のように信頼できるようにもなったのだった。


二人はある日、もう一度あの場所に行ってみることを思いつく。

あの時何が起きていたのか、あの場所だけの起きる事象なのか、今でもあの現象は起きているのか。

それらの疑問を確かめるべく、二人はもう一度あの場所に行ってみることを決意したのだった。

丁度、ライナムのつぼみが無くなりかけている。

持ち帰った当初は、何の心配もすることなく父も母も喜んで口に放り込んでいた。

近頃では残量が少なくなってきたせいか、チビチビと食してこの至福の味を長持ちさせようとしているのだった。

その様子を見たエイミが、もう一度あの場所を見に行く理由として、ライナムのつぼみを探しに行くことを母親に伝えた。

あの日以降、遠出を絶対にさせない両親だったが、これに関しては”気を付けていくように!”と許可をしてくれた。

特にあの場所は他の人に特定されては、乱獲されてしまう可能性がある。

初めのころ、両親もその場所のことを必死に聞き出そうとしていた。

だが娘の、”誰かに知られたら、自分たちの分がなくなってしまうけどいいの!?”という娘たちの言葉から、その場所を二人が秘密にしていることも両親は承認していた。


「周囲に気を付けろよ」

「何かあったら、すぐに戻ってくるのよ?」

「はーい」

「わかりました、それでは行ってまいります!」


両親の言葉に、気軽に答えるエイミとセイラ。

二人は村の外まで出て、人目がないことを確認する。


「……もうそろそろいいんじゃない?」

「――出てきていいよ」


その掛け声に反応して、精霊たちは姿を見せる。

外の風に当たって嬉しいのか、二人の周りをクルクルと回っている。

二人と四つの精霊は楽しそうに、道を進んでいく。

エイミとセイラがいるため、独り言のように怪しまれることはないだろう。

誰もいない安心感で、二人は目的地の森を目指して歩いて行った。




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